チーム朱雀の朝焼け
ここから、ゲームが始まります。
次の日も、何もなかったかのように朝が来た。
入道雲が遠くに見える中、見知らぬ土地で目を覚ましたのは、トーガだった。
「ん・・・ここはどこだ?」
そして、無意識に横を向いた時に見えたのは、モモナの姿だった。
「モモナ!起きろ!!」
大声をかけて揺さぶると、やっと目を覚ましたが、キョロキョロと周りを見渡して
「どこ、ここ?」
と話しかけるのがやっとなほど呆然としていた。
そんな時、2人の持つスマホの着信音が鳴った。
画面を確認すると、そこには恐ろしい内容が書かれていた。
『☆赤点救済ゲームの案内☆
お前達はこの前の定期試験で赤点となった。
赤点になった生徒には通常、例外なく追試験が待っている。
しかし、お前達、4チームに分けられた10人には救済策を与える。
それが、赤点救済ゲームだ。』
「なんだこれは?」
「わからんね。あっトーガ、またメールが来たみたいよ。」
言われた通りに画面の上を見ると、2通目のメールが来ていた。
『☆赤点救済ゲームのルール☆
・これから4泊5日で愛知県小牧市へとJRの普通列車のみを使って帰ってこい。
小牧駅にはJRの路線がないため、実質的には名古屋駅が終点だ。
快速、新快速等の列車は、追加料金が掛からなければ利用可能。
ただし、九州出発組は特急列車、新幹線、高速バス、フェリーなどは一切利用不可能。
北海道出発組には函館から青森のフェリーに乗れるお助け券が給付されている。
私鉄線や第三セクター線、路線バスに乗る場合は全て自腹。
地下鉄名古屋駅から小牧駅の乗車料金はすでに給付済み。
・ネットや地図は使用禁止。
駅前の地図や路線図だけで判断すること。
地元の人に聞くことに制限はない。
また、メンバー同士や他チームとの連絡は可能である。
・お前達には1人あたり10万円が給付されている。
メンバーの1人が給付金を使い果たした場合、他のメンバーが援助することは可能だが、全員が給付金を使い果たした場合、そのチームは失格となる。
・もし旅の途中でインターネットを使った乗り継ぎ方法を検索、地図の購入、特急や新幹線への乗車などの違反行為が確認された場合、違反行為が行われた市町村に黒子鬼100体が放出され、違反者を捕獲しに向かう。
黒子鬼は違反者を追いかけるが、駅の改札内およびその市町村の外には出られない。
捕獲、あるいは失格となった者には、赤点教科数2倍の罰が待っている。』
「キツいな・・・」
「というより、ここはどこなの?」
「おい!あそこに人が歩いてるぞ!聞いてみよう!」
2人が広場を歩くお婆さんに話を聞くと、ここは鹿児島県の枕崎市だという。
九州出発かと落ち込む2人だが、始まってしまったものは仕方ない。
聞くと、近くに駅があるというではないか。
早速言われた通りに歩くと、日本最南端のこじんまりとしたターミナル駅、枕崎駅があった。
設置されている時刻表を見ると、あと1時間後に1本来た後は6時間来ないという。
そのため、先ほどのお婆さんから教えてもらったコンビニでパンを買ってから乗ることにした。
パンをしまおうとカバンを開くと、教科書が全て除かれており、代わりにトーガのカバンには赤いTシャツが、モモナのカバンには桃色のTシャツが入っていた。
それを見た途端、またメールが来た。
驚いた2人が見た3通目のメールにはこう書いてあった。
『枕崎に飛ばされたお前達を、ここからはチーム朱雀と呼称する。』