オタクと非オタのピリピリ空間
イキマに連れられ、一行は小牧駅にたどり着いた。
しかし、その友人のシンガーソングライターは見当たらない。
「チェッ!でもアイツ遅刻魔だで仕方ないかな!!」
小牧市は、夜でも蒸し暑い。
そんな中で10人は待ち続けた。
「あぁ〜今日のアニメ予約し忘れちゃったよ〜〜!!」
「それな〜〜!」
「しょうがないで、見逃し配信でもあとで観やあ!!!」
こんな話をするのは、クラスのオタクトリオと呼ばれる、文津心愛と野口真紘と陶清香の3人だ。
彼らはクラス内でもいつもアニメについて語り合っており、休み時間になると3人の周りからアニソンが鳴り響く。
大半の同級生が無視しているが、たまに大ヒットアーティストの曲も流れることがあり、その時にはクラス内の何人かが斉唱する。
彼らの陰でその話をニヤニヤしながら聞いているのが、隠れオタクの西島大翔と高根瑠夏だ。
2人はクラスの級長・副級長であり、幼馴染でもある。
互いに同じ趣味を持っているが、表に出すことはない。
しかし、本質としてはオタクトリオに負けないほどのアニオタだ。
周りからは優等生だと思われているが、今回の試験週間中ずっとアニメを観ていたせいで赤点になってしまった。
「はい静まれそこらのザコども!!」
怒号をあげたのは、ヤンキーグループの紅一点、北里茶々だった。
チャチャは徹底的にオタク文化に否定的で、絵で描かれたもの全てが気に入らないようだ。
しかし、その途端に異変が起きた。
全員の視界が歪み始めたのだ。
「ん!?」
「なんだこれは!!」
徐々に、小牧駅が視界から消えていく。
ー助けてくれぇぇぇええ!!!
こうして、赤点組は全員行方不明になってしまった。
そして、翌日の新聞の一面を賑わせたのは言うまでもない。