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プロローグ

新作投稿です。

本格的な投稿は『制限された世界で』が終わってからになります。

  西暦2020年、突如、日本は異世界に転移した。

 多くの日本人は異世界に転移したことは気がつかなかったが何かしらの異変が起きたことは理解した。在日米軍を含めた外国人が消えうせ、外国に居た日本人が日本に戻っていたからだ。

 政府は陸上自衛隊を中心に厳戒態勢を敷き、海上自衛隊と航空自衛隊に調査を命令。分かったことは、転移した先は南を除いて外海への出口が無い、コの字状に日本を覆う大陸の内だということだった。

 大陸で豊富な資源が見つかったことで資源問題解決の目処は立ったが、更なる問題が日本を襲った。

 1本線で繋がった山脈、それを越えたP-3Cが墜落したのだ。調査の結果、この山脈を超えると一部例外を除き、1945年以降の技術はほとんどが使えないことが判明した。

 山脈の内側は特殊な気流で入ってこないが、外側には特殊な粒子が存在していた。その粒子は電子機器の回路を破壊し、ジェットエンジンの燃焼を止める性質があった。ガスタービンやターボプロップも同様であった。

 これは外海に出て資源と食料の確保が困難であることを意味した。自衛艦を含む現代日本のほぼ全ての大型船舶は電子機器に頼る部分が多いのだ。まさかどんな国家が存在するのかわからないのに軍艦もなしに輸送船や民間船を送り出せるわけがない。

 山脈の内側だけでも十分な資源が埋蔵されていることは分かっていたが、それらが安定して手に入るようになるのは数年先である。食料不足の問題もあるのだ。

 そこで政府はある決断をした。無職の人間は政府が用意した国家事業するよう勧め、参加しない者は配給を渡さないことにしたのだ。

 この決定に多くの野党や国民が反発したが「では国民全員で仲良く飢え死にしますか?」という言葉の前に黙らざろうえなかった。国内の工場や畑に配属されなかった人々は新天地に送り出され、芋と米ばかりの朝食を胃に流し込み、昼間は農地の開墾に従事し、日が暮れれば朝とほとんど変わらない夕食をとり眠りにつく日々を過ごした。ちなみに昼食はない。昼食にありつけるのは自衛官に官僚、警察や技術者といった国家運営に必要不可欠な者か大物政治家、大企業の社長のような金持ちだけだ。

 国内の中小企業が相次いで倒産、従業員の大量解雇で人には困らなかった。むしろ食料が手に入ることから自ら志願した。

 GPSがなくなったことで途絶えていた物流を何とか回復させたが、それに合わせて政府は企業の、国家の統制を強めていった。反発した企業は干乾しにされ、人間は様々な差別や嫌がらせをもって従わせていった。

 農家や漁師は優遇されているが、それでも厳しいことには変わりない。石油不足から全木製の手漕ぎ船すら当たり前に使われた。むしろガソリンを消費しないことから手漕ぎ船のほうがありがたられ、養殖が軌道に乗るまでの間必要になるだろうということで大型の手漕ぎ船すら造られた。しかも機会を一切用いず職人の手造りで。

 同じことは猟師にもいえた。猟銃は弾薬共々国に徴収され、代わりに与えられたのは弓だった。資源枯渇の危機が迫っているなか現代の素材を用いるわけにはいかず、木材で作られた古めかしい弓と矢が支給された。

 それらは油の補給が難しく、獲物に困らない大陸にて活躍した。その傍ら陸上自衛隊が電子制御などを取り入れていない車両と共に山脈を超えて、未知のウイルスや原住民のいない、安全を確認した場所から順に国内の無職という名の穀潰しを送り込んだ。

 農地は一軒家の庭や学校の校庭までも畑と化し、日本人の胃袋に収まる芋を増やすのに役立った。

 3年後、日本各地の人口食材製造プラントや漁業関係者の努力で大陸での食料生産が軌道に乗るまで乗り切った。同時に技術開発も加速していった。

 予算と愛国心と自身の明日のために働いた研究者、技術者達は失われた技術の一部を取り戻すことに成功し、設計された物は平時では考えられない速さで工業ラインが設置され、大量生産された。

 国力に物を言わせた生産で輸送機と輸送船、各種兵器を作り上げ、かねてより頭痛の種であった原住民の駆除が実行された。前世界では余程のことがない限りは賛同されなかっただろうが、異世界転移がもたらした国家崩壊の危機と歯向かえば生き残れない統制社会という壁の前に反対する者はいなかった。

 作戦は双発レシプロ爆撃機でペストを付着させたタオルを定期的にばらまき、全滅するのを待つというものだった。時間がかかるが、現状ではベトナム戦争を再現するほどの余裕がない以上仕方がなかった。

 その間に蒸気タービンを搭載した駆逐艦と軽重巡洋艦を護衛とする輸送艦対を海図の作成中に発見した大陸に派遣した。事前に行われた水上偵察機による偵察で、現状の燃料で行ける場所には砂浜、遺跡などがあることが判明した。

 指揮官の唯月忠信海軍大佐(国家統制の完了と共に自衛隊は国防軍に改名した。軍隊でありながら軍隊ではないという矛盾の解決とこれからはアメリカに頼らずに国を守るという意思表示である)は山崎学陸軍少佐との話し合いの結果、砂浜に上陸することが決定された。

 輸送艦を改装して作られた松型揚陸艦の後部から発進した83式上陸艇(年号は皇紀に変更された。異世界転移によって西暦を用いる必要性が薄れたためである)が戦車も含めた重装備と共に未知の大陸に降り立った。

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