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翌朝の俺の気持ちはまさに混沌そのものだった。
今日はアナスタシアは学校に来ているだろうか? そればかりが気になって仕方がない。
俺は教室の前で立ち止まった。
彼女が今までと変わらずに登校してきたとしよう。それなら問題はないのだ。
あいつが言うには、俺には魔法の耐性とかいうのが出来ていて眠ることはないらしい。だから、お前がいてくれたって構わないんだ。今まで起きた多少の超常現象やストレスには目を瞑ろう。
でも、もしもあいつがいなかったら……?
そんな漠然とした恐怖を抱きながら、俺は教室の扉を開けた。
そこにアナスタシアはいなかった。いきなり嫌な汗が出始める。教室の雰囲気はいつも通りだ。
何が起こってるのか理解できないまま席に着く。
なぜアナスタシアがいないんだ? おかしい。あいつがいてくれないと困る。今まで散々おかしなことしておいて夢でしたってオチか? どれだけ性質の悪いドッキリなんだ。ぬか喜びもいいところじゃないか。……いや、そうか。最近は睡眠不足のせいで遅刻ギリギリに来てたから忘れてたが、あいつはいつも授業直前に来るんだった。今いなくてもおかしくはない。
時計を見てほっと胸を撫で下ろす。授業が始まるまでまだ10分はある。
「姉堂君、そこ、姉堂君の席じゃないよ?」
鳥肌が立った。悪い意味で。
聞き覚えのある声に振り返ると、あの時と同じく、井守が立っていた。
「そこ、私の席だよ」
俺は返す言葉もわからず、無言で席を譲ってしまった。その時の井守は、俺の顔に心底怯えていたようだった。