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調査4

「昨日はよく眠れたかい?」

「いえ……」

「ははは……そうか。まあ若い女の子と二人きりだったんだ。仕方ない」

 リカードはのんきに笑っている。

 この男が何を思ってあんな女と2人きりにしたのかわからない。問い詰めさせてもらいたいくらいだ。

 ミーシャを見ても、素知らぬ顔で隣を歩いている。

 しかし、一見しただけでは女があんな痴女的な行為を働くようには思えない。リカードの人柄からしても、痴女と平気で一夜を過ごさせるような男には思えない。

 一体何を考えているんだこの女は。

「ここだ」

 リカードは民家の前で立ち止まった。

「この家も例に漏れず、灰に埋もれた家でね、重要な物件だからずっと調査しているんだが、それらしき手がかりがなかなか出てこない」

「氷の魔女が消えてから火山が噴火したという話は聞いた?」

「ああ、聞いたよ」

 なぜだか知らないけど、ローランドとかいう国が魔女を討伐しようとしたら、魔女はどこかへ消えてしまっておまけに火山が噴火したって話だったよな。

 ついでに、俺が生意気そうに答えてしまったのも昨夜の件でこの女に対する好感度がガタ落ちしてしまったからだ。

「魔女が消える少し前に、その国のお姫様が宝を持ち逃げしてこの家で暮らしていたそうよ。その名も、パンドラの箱。推測だらけの話のなかでも確証のある話」

 あんなことがあったのに、この女は昨日と変わらない調子で話している。もしかして俺は夢でも見ていたのだろうか。あの生々しい感触も、吐息も。確かに昔からリアルな夢を見てばかりいたが。

「どうだい? お姫様の暮らしていた家とは思えないだろう。これでも当時を出来る限り再現したんだ」

 外から見て十分にわかっていたことだが、中にはベッドもシャンデリアもない。生活していくのに最低限あればいいと言うか、――郷に入っては郷に従え――そんなコンセプトの家だ。リカードの暮らしていた小屋の三分のニ程度の大きさしかない。

 ここから何かわかることがあるかだって? お姫様も硬い寝床で苦労していたんだろうな。それと、リカードは猫の手を借りてでもよっぽど調査を進展させたいらしい。調査員の中には進展させたい派と、支給された食糧で延々食っていきたい派がいるんじゃないか。というのは勝手な憶測だが。

「城の生活が嫌になって逃げ出したっていうのはわかるんですが、その宝っていうのは一体何なんですか?」

「それは僕にもわからない。ただ、その宝があったから魔女が攻め込もうとしなかったって言い伝えがある」

「無理にわからなくたっていいわよ。調査が進まないまま、食料が支給されなくなったって真っ先に追い出されるのはマコトだから」

「おいおい……」

 撤回しよう。こいつは荒野のような女なんかじゃない。砂漠に生えた図太いサボテンだ。さっさと調査を終わらせてほえ面かかせてやろうじゃないか

 怒涛の勢いでタンスを開けていくが、どれも庶民的な服しか入っていない。鬼のような面でテーブルの下を探ってもほこりしか出ない

「じゃあ、そろそろ次のところにいこうか?」

 待ってくれ……いや、そうだ。仮に国の討伐部隊が姫を探しに来たことがあったらどうだ。姫はどこかに隠れるだろう。となると、人間が隠れることのできる空間を探すのもありなんじゃないか?

 天啓が閃いたかもしれない。これで一生分の食い物に困らなくなるかもしれないと一瞬、姉堂マコトは淡い夢を抱いた。

「リカード!」

 突如、見知らぬ男――リカードと同じ服を着た――が開いたままの扉から入ってきて叫んだ。

「おお、どうした?」

「入口が見つかったんだ!」

「何だと!?」

「教会に地下があったんだ!! 来てくれ!!!」

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