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調査2

 熱いままだった茶を急いで飲み干してきた。胃の辺りで溜まっているのが分かる。茶の味を楽しむ余裕なんてなかったが、空腹には代えられない。

「ミーシャさんはどうしてここにやって来たんですか?」

 ひょっとすると自分より年下の少女に敬語を使っていると思うと違和感がある。

「私は食いぶちがなかったからここに流れ着いただけ」

「そうなんですか……俺と同じですね」

 異世界人も食わなければ死ぬのだ。だがおそらく、レム達のように自給自足するという概念がない。

 リカードはもう発掘することもないと言っていた。ここでの仕事がなくなれば、ミーシャやリカードもまた放浪を始めるのだろうか。

 町並みが見えてきた。至る所に白い砂のような物がこびりついている。

「何か気づいたことはある?」

「え?」

「気づいたこと。調査が行き詰ってるから何でもいいから気づいたことがあったら言ってほしいんだけど」

「えっと……」

 民家の一つにも入らない内からそんなことを聞いてこられても困る。いや、あるいはリカードの話も加味した上で気づいたことを言えと言われているのかもしれない。もっとよく聞いておくべきだった。何のために調査しているんですかなんて今更聞けないよな。

 焦り気味になめまわすように町を見ると、確かに火山灰のような物が所々残っている。しかし、それだと幼稚園児でも言える。火山灰から連想できることを言えばいいのか? 情報が少なすぎる。

「……眠たいですね」

「眠たい?……あははははっ。そっか、じゃあ少し眠ってからでいいよ」

 思ってもいないような言葉を口走ってしまったが、苦笑混じりで答えてくれた。

 実のところ、先程の睡眠で眠さはとっくになくなっていたのだが。

「後で様子見に行くから、小屋で休んでて」


 そうして少し仮眠を取るつもりで小屋の中で寝たはずだったのだが、目が覚めれば外は暗闇。夜になっていた。

 何て許しを請えばいいだろう。

 ミーシャもリカードも俺が爆睡してるのに気を使って起こしてくれなかったようだ。

 起きた時には二人共ランプの置かれたテーブルを囲んで夕食を食べていた。

「すみません……寝てしまいました」

「いや、いいんだよ。君の分もあるから食べてくれ」

 役立たずでしかない俺に、リカードは気さくに応じてくれた。何とも申し訳ない。

 小さなテーブルの上には一見、雑多に皿が並んでいるように見えたが俺の分の皿もあった。と言うかなぜこんなに食糧があるんだ?

「国から支給されていてね。食べきれないほど運んでくるんだ。レムやエリーにもお裾分けしようと思って持って行ったことがあるんだが、どうやら口に合わなかったらしくて突っ返されたよ、ハハハ」

 リカードにつられてミーシャも笑う。

 発掘という作業に従事している割には二人ともよく笑う。

 目の前にある見たことのない野菜やスープに危ない成分でも入っているのだろうか。とは言え、手に付けないでいることもできない。

「では、いただきます」

 スープを口に運ぶ。赤色い見た目通り、熟れかけたトマトをスープにした味だ。保存食だからなのか、味が死んでいる。村の人々が嫌うのも分かる気がする。

「マコトはこれからどうするつもりだい? 君さえよければ、いつまでになるかはわからないが手伝ってくれてもいいんだが」

「え……いいんですか? 是非手伝わせていただきます!」

 思ってもない計らいだった。これで調査が終わるまで俺の身の安泰は約束された。

「うん。一緒に頑張ろう。ところで、もう案内は終わったかな?」

 心臓に悪い質問だ。俺がどう応えようか迷っていると、ミーシャが横から口を出してきた。

「まだ一つも行ってないです」

「え!? 一つも!!!??」

 リカードは急に声を荒げた。口から何かが飛び出たような気がするのは気のせいだろうか。

「すいません」

「そうか、まあいいんだよ。明日改めて案内しよう」

 申し訳ない。俺が爆睡こいてたせいだ。

 なんとも居心地が悪くなってしまった。まだ腹は減っているが、このまま素知らぬ顔で食べ続けるのもよくないし、そろそろ終わりにしよう。

 そして、俺はここに泊まれるのだろうか? 寝床は二人分しかない。野宿しろと言われても受け入れよう。食を与えられるだけましだ。

 しかし、話出し辛い雰囲気だ。狭い部屋にカチャカチャと食器の音が響く。

「まだ寝床をどうするか決めてなかったね。僕は友人のところで眠るから、マコトとミーシャはここで寝てくれて構わないよ。それでどうかな?」

「私はいいですよ」

「うん。マコトは?」

「ありがとうございます」

 俺は心の中でもう一度感謝した。

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