アイテムボックスの力
ギルドハウスを出て、馬車とかが行き交う大通りを進んで教えて貰った道に入ると、食堂の看板が出ていた。名前は教えて貰った宿屋だしここでいいよな。中に入ると奥の方にカウンターがあって、そこに女将さんだと思うけど猫族の女性が座っていた。
「いらっしゃい。食事かい?もう少し待ってもらえたら昼のランチセットが出せるけど。」
「はい、食事も頂きたいんですが、冒険者ギルドのシャルさんに紹介されたんですが、宿泊をお願いします。」
「シャルから紹介?お客さん、人族だよね?ハーフかい?」
「シャルさんにも聞かれましたが、祖父の代まで遡って人族ですね。」
「ふーん。まあシャルが言うならその通りなんだろうね。それで何泊だい?」
「えっと、料金は?」
「シャルが言ってなかったかい?一泊銀貨3枚だよ。朝と夕食は付いてる。風呂は共同だけど、シャワーでいいなら部屋についてるよ。」
「しばらくこの街で冒険者として生活する予定なので、取り敢えず一ヶ月予約できますか?」
「一ヶ月?30日かい?となると銀貨90枚になるけど。」
「じゃあ、取り敢えず、金貨1枚で」
「前払いで金貨?お客さん、何者だい?まあお客の素生を詮索しないのは常識なんだけどさ。一ヶ月分の前払いなら値引きもあるよ。」
「いえ。じゃあ、その分でお昼ご飯を作って頂けると嬉しいのですが。サンドイッチとか無理でしょうか?日中外に出てクエストをやる予定なので。」
「いやいや、サンドイッチぐらいなら露天でいろいろ買った方が安いだろうさ。」
「あちこち移動するのも面倒ですし、シャルさんが紹介して下さったってことは料理の味もきっと素晴らしいでしょうから、お手数でなければお願いします。」
「そうかい。まあ料理の味には自信はあるんだけどさ。それじゃあ、お客さんの場合には一ヶ月3食付きで金貨1枚と言うことでいいかい?」
「はいそれでお願いします。」
「じゃあ、お兄さんに限って、さっきの条件で契約。ようこそいらっしゃいませ、日向亭へ。店主のマルチナだよ。」
「しばらく世話になります。F級冒険者のケンタです。」
部屋は3階建の建物の一番奥、角部屋だから高級とかないよね。ちなみにちゃんと窓ガラスがついてるんだよね。そう、中世ではないんだよ。部屋も小さなユニットバス付きのビジネスホテルみたいな感じだ。テーブルも椅子もないけど、綺麗に整頓されてるし、ベッドメイキングもきちんとされてる。シーツも綺麗だしね。というかこの世界、洗濯物の乾きがいいんだよね。俺もここに来るまでの間に着替えがないから部屋に入ったらマッパになって洗濯してたんだけど、翌朝にはちゃんと乾いてたしね。
とアイテムボックスの整理と確認。
まず数が5つ以上入ることは確定。そして入れる物によって入れた時に解体するかどうかのアナウンスが出る。今手にしているのは、服、防具、ナイフ、小刀、懐中電灯、石鹸、回復薬、ポーチ、バッグ、リュックなんかだけど、この中で、ポーションは解体するかどうかのアナウンスが出てくる。回復薬ポーションは銀貨5枚もするんだけど、確かめるしかないか。勿体ない気もするけど、入れた時に、解体をやってみた。すると、薬草、魔力水に分離した。二つを取り出してみる。薬草は葉っぱの形で2枚。魔力水はポーションの瓶に入ったまま取り出せた。
ふむ。回復薬の成分分解したってことなんだろうか。成分とは違うか。薬草は今から取りに行く物だな。確か一株で葉っぱが5枚程付いてたような気がしたけど。あと魔力水か。これは素材として売ってるのかな。誰かに聞いてみよう。
これ以上の検討は出来ないので、薬草と魔力水をアイテムボックスに収納した。と、またもや頭の中にアナウンスが、
「解析が完了しています。合成しますか?」
その後目の前に、「初級回復薬」という項目が出てきた。それを念じるとアイテムボックスの中に初級回復薬が出来た。これは俺が買った回復薬とは別物として認識されたようだ。
今度は俺が作った初級回復薬と、買ってきた回復薬を取り出した。
先に、初級回復薬と収納。アナウンスはない。
次に、回復薬を収納、アナウンスがあり解体。一旦取り出して、素材を入れて合成。
これで、初級回復薬が2つになった。
ふむ、このアイテムボックス何気に凄いな。死にスキルって言ってごめんなさい。地球の神さまどうもありがとう。使えねーとか思ってました。済みません。
今回のことで分かったのは、俺のアイテムボックスは、この世界のアイテムボックスとは別物ってことだな。しかも多分俺しか所持してないスキルみたいだ。解体、合成を繰り返せば、いろいろレシピが増えるのか?というか、もしかして調合師として生きていけるんじゃないか?「調合師で成り上がり」に改題すべきか?(誰に向かって言ってるんだ)
ともかくだ、この能力が厳重に秘匿しなくてはならない。と言うか今後の為にも薬草採集頑張らないといけないな。その分冒険者ランクは上がらないかもしれないけど、まずは月に金貨1枚稼げる手段を確保しなくては。
その後、下におりてお勧めランチを頂いた、ゴロゴロクリームシチューみたいだ。パンも黒パンで上手い。お代りをしたいぐらいだ。
「ごちそうさまでした。会計をお願いします。」
「何言ってるんだい。昼食も込みの値段だったろう。ここでお金をとったら契約神の天罰が下るよ。」
「天罰ですか?そんな大げさな。」
「何言ってるんだい。さっきちゃんと契約を交わしてるんだから有効だよ。何だい、ケンタは血の契約しかやったことないのかい?その年まで生きてそんなことはないだろう。」
「あー済みません。今夜から有効かと思ってましたから。」
「まあその辺りは確かに詰めてなかったけどね。でも契約が昼食前なんだから、契約のスタートは昼食からだよ。」
「了解しました。それじゃあ、薬草採集に行ってきます。それからこの近くに調合師の店とかありますか?」
「うん、行っておいで。森の中には入るんじゃないよ。調合師は大通りを出て城門に向かったら道沿いにあるよ。そうかい。回復薬を買っておくんだね。いい心がけだよ。余裕があるなら回復薬はいつも常備しとくんだよ。」