第66話 マルクス王国からの使者
相変わらず遅い更新、話が進まなくて済みません。
第66話 マルクス王国からの使者
通常、他国からの使者と言うのは、王国で言えば騎士階級の人間が、親書を持ってやってくることが多い。
身分制度とか、格式を重視する貴族にしてみれば、ヒノモト国なんていうのは、ポッと出の小国、しかも格下国家という位置づけなのかもしれない。
俺自身、そう思われても何とも思わないし、興味もない。
なので、執務館にある謁見の間は、どこかの王宮みたいに豪華絢爛の装飾とか、いかにもって言う感じの玉座とかない。
いたって普通の応接間だ。
それでも地球で中流家庭で育ってきた俺にしてみれば、超豪華なお屋敷の応接の間って感じだけどね。
とにかく、そこで待っていたのは、マルクス王国の第一王女御一行様だった。
王女とは、一度マルクス王宮で会ったことはあるけど、その時には、いかにも王女様って感じのドレスを着て、侍女を何人か従えていたイメージしかなかったけど、こうして面と向かって顔を合わせると、所謂りかちゃん人形みたいな、ザ美少女って感じだ。
まあ、シャルには負けるけどね・・・
「突然の来訪に応じていただきありがとうございます」
俺が上座に着席すると、王女様が立ち上がって、優雅にお礼の言葉を口にする。
ちなみに、この応接間に置いてあるのは、地竜の皮で作ったソファーだ。
スプリングも自作して、座り心地も抜群だ。
一見すると普通の椅子だけど、解る人がみたらこの世界では国宝級の価値がある。
王女様もこのソファーが気に入ってくれたようだ。
「いえいえ。わざわざ王族の方に遠路お越しいただいて申し訳ありません。マルクス王もお元気でしょうか?」
「はい。王もお健やかにお過ごしです」
そんな感じで和やかに始まった会見だけど、すぐに重たい雰囲気になった。
これが、食事をしながらとかお茶をしながらなら間が持つけど、流石に正式な謁見の場で飲食物はでないので、双方が黙り込むと途端に空気が重くなる。
ここは俺の方から切り出すか、そう思って、
「それで王女様、今回わざわざ王女様が使者として来れれたのは、どのような御用向きなのでしょうか?」
「はい。一国の統治者であるアマミヤ様に対して、本来であれば礼を逸したことであるのは重々承知しておりますが、是非私の話を最後までお聞き入れ下さいませ。お願いいたします」
そう言いながらも、なかなか話を切り出せないでいる。
可哀そうなので、さらに俺の方から水を向けてみる。
「俺自身、元は平民で一介の冒険者に過ぎません。マルクス王の温情でこの迷宮を頂いて、ヒノモト国を興しましたが俺自身は統治者と言うより、やはり迷宮探索を行うただの冒険者です。幸い、俺には助けてくれる仲間に恵まれましたから何とか国と言う形態で統治していますが、基本俺は王の器ではないと思っています。国として統治し、国を安定させることのできるのは、それのできる器と能力などのある者がつくべきなのでしょう。ですので、俺は王になるつもりはないですし、この国が王国になることはありません。」
「す、するとアマミヤ様は、王国連合と袂を分かつおつもりなんでしょうか?」
俺の発言をどのように受け取ったのか解らないけど、少し青ざめた顔で王女が声を出す。
「あー袂を分かつと言うか、別に敵対も同盟もするつもりはありません。俺は、いや、ヒノモト国は、俺たちの持つ軍事力を持って、この大陸の中で中立国家を目指すつもりです。俺たちの国が持つ最大の資源は、ご存知の通り俺を中心とした武力です。ですのでこの武力を他国に貸し出します。ただその際の条件は2つ。全ての人に対して平等に権利を認めること例えば種族間差別の完全撤廃を実施することと、俺の国つまりヒノモト国の統治に関して完全に不干渉を約束して貰うことです。この契約はヒノモト国と国を統治している統治者との間で交わされます。従ってその国の統治者が変われば、この契約は破棄されます。またヒノモトの国民ないしヒノモトの領地が侵害されば場合にも破棄されるものとします」
俺の説明をじっくり頭の中で吟味した後、王女が俺にこう聞いてきた。
「それでは、仮にガルク帝国、いいえガルク帝国皇帝が、ヒノモト国との同盟契約を打診してきた場合、それに応じる可能性があると言うことでしょうか?またヒノモト国の武力を貸し出すと言うのは、契約した国家いえ統治者が、他国または自国内での武力行使に当たって要請があった場合、ヒノモト国の武力を貸し出すと言う意味でしょうか?」
「ええ、先程言った、2つの条件を実行することを約束してくれる統治者であれば、相手の国情などに関係なく同盟契約を結ぶつもりです。同盟を結んだ統治者に対してヒノモト国も不可侵契約を結ぶことになりますので、仮にヒノモトが個別に同盟契約を結んでいる統治者が統治する勢力が争う場合、その双方に不可侵ですのでヒノモト国としては中立を貫くことになります。内紛などの国内での戦闘に俺たちが戦力を貸し出すかどうかは、その時の状況によるでしょう。対抗勢力が俺たちの国是に対抗している勢力なら、将来を見据えて国内紛争であっても助力すれでしょうし、単に権力争いのようなものなら中立を貫くと思います。国レベルの傭兵部隊と考えていただければと思います、少し例えは大雑把ですが」
「それでは、もしマルクス王国が、いえ現マルクス王がヒノモト国との同盟をお願いした場合、受けていただけるのでしょうか?いえ、是非前向きに検討していただきたいのですが」
「ヒノモト国は、現在マルクス王国領内に存在している国家です。俺自身、冒険者となりその後様々な便宜を図って下さった恩義もありますし、王国の多種族融和政策はヒノモト国が目指している国の在り方に近いと思っています。その意味では、同盟をお断りする理由はありません。ただ、この国がガイア大陸全ての国家に対して中立を宣言すると言うことは、場合によっては大きな勢力と敵対する可能性もあります。特に、王国連合議長国の立場としては、ヒノモト国と軍事同盟を結ぶことは困難ではないですか?」
しばらく考え込んでいた王女は、突然決意に満ちた表情で、
「これから話すことは、ここだけの話と言うことでお願いします。父上であるマルクス王は、王国連合の議長国の座を降りるおつもりだと思います。私にもはっきりとはおっしゃいませんでしたが、このたびの使者の任を私に御命じになられる際に、そのような決意を持っておられると感じました。今回、私が王族の身ながら使者の任に任じられたのは、アマミヤ様に対する父上の最大限の敬意を示されておられるものと認識しております。そして私に課せられた使命は、王国連合としてこれまでアマミヤ様、ヒノモト国に対して内政干渉ともとれるような要求をしてきたことで、アマミヤ様が王国連合に対して疑念や不満をお持ちであるならば、この身をなげうってでも、アマミヤ様の疑念や不満を解消していただくこと。そして可能ならば、これまで同様、マルクス王国との良好な関係を継続して頂いて、さらに強固な関係になる最恵国相互不可侵協定を結んで頂くことでした」
「マルクス王国との相互不可侵協定ですか。すると国王陛下は、王国連合議長国としての立場よりも、マルクス国王としての立場を優先させた、いや王女殿下がおっしゃったように議長国の座を降りて、マルクス王国としてヒノモト国との関係を形成しようと決意されたと言うことですね。大変ありがたいお話です。申し出の協定内容と、ヒノモト国として大陸中の国家に対して宣言する軍事的中立国家としての協定を結ぶという内容とは、少しずれもあるようですし、国王陛下にはその旨お伝えいただいて、再度協議の場を設けさせて頂くということでいいでしょうか?」
「はい。いろいろご配慮頂きありがとうございます。早速国に戻って父上に報告いたします」
「そうですか。では、難しいお話はこれくらいで、あとはゆっくりお休みください。最近開発した、スイーツもありますのでお部屋の方にお持ちしますよ」
「えっ?あ、はいありがとうございます。ヒノモト国のお菓子は、王都でもどれも人気のようでして、私も偶に王都に出かけてヒノモト国のお菓子が売っているお店に寄ってみるんですが、いつも売り切れで・・・」
「そうでしたか。では、今日はたっぷりとご堪能下さい。日持ちするお菓子をいくつかお土産に持ってこさせましょうか?」
「是非、是非、お願いします!」
今日対面して一番の笑顔になった王女を見送りながら、王女と言えども女子なんだなぁとしみじみ思ってしまった。
うちの女子たちも、お菓子パーティーが始まると人格が変わるからな。
お菓子作りで成り上がり目指せばよかったかなぁ。(って誰に向かって愚痴ってんだ、オイ)
誤字脱字誤変換など多々あると思います。
笑ってお許し下さい。