第63話 王国連合との外交問題
相変わらず、遅々として話が進みませんがお許し下さい。
こっそりとPadで書いているので・・・
第63話 王国連合との外交問題
「ケンター、いい加減、この書類に目を通してサインしてよー。流石に、代理でサインするには無理がある決済ばっかりだし」
俺が久しぶりに、ヒノモト国の執務館の執務室に戻ると、シャルがドアを蹴破るようにして入ってきた。
シャルって、俺の気配が解るんだよね、どう言う訳か。
ちなみに、水晶の指輪(迷宮転移の指輪)は結局シャルの薬指に嵌ったままだけど、未だに自分一人では転移はできない。
ミュールやミューリも同じだ。
水晶の指輪を装備してても自分だけでは転移不能みたい。
今、迷宮間を自由に転移できるのは、俺と、サクラとリンの3人。
何が制限になっているのか不明のままだ。
それはいいとして、とにかくシャルは一定の範囲になると俺の居場所が解るらしい。
気配察知のユニーク版みたいなスキルなんだろうか?
シャル曰く、愛の力だと言うことだけど、突っ込むといろいろ大変なのでスルーしている。
「おっ、シャル。お疲れ~。いつもご苦労さま~。肩でも揉んであげようか?」
「ケンター。今日と言う今日は、そんなことじゃ騙されないからね~。今日は、しっかりお仕事して貰います」
シャルとそんな話をしていると、パタパタと足音を立てながらミュールが部屋に入ってきた。
「主様、お忙しい所申し訳ございません。取り急ぎ目を通して頂く書類をお持ちしました」
そう言いながら、両手いっぱいに抱えた書類を、ドンと俺の机の上に置くミュール。
言葉づかいは丁寧ながら、目の奥はメラメラと燃えるような何かが・・・ちょっと怖い・・・。
「主さまー。お帰りなさいですの。お疲れでしょうから、ミューリの新作のエクレアと紅茶をどうぞー。主さまに教えていただいたレシピを再現してみたのー」
ミュールもミューリも随分と今の生活に慣れてきたようだな。
そうそう、俺の呼び方は、俺がヒノモト国を建国した時に、王様とか陛下とかになりそうだったけど、俺が建国はしたけど王国制にしないから、王様とか陛下とかの呼称は禁止にしたので、いろいろあって主様に落ち着いた。
ミューリは大抵、サクラと一緒にいるみたいで、年も同じはずなんだけど結局、サクラの妹ポジションに落ち着いたみたいだ。
元々妹属性が強かったのか、俺に対しても主さまと呼びながらも、兄に甘えるような言動が出てきた。
俺も嫌じゃないし、そのままにしていたら最近は、兄の世話の為に家事全般をこなす妹ポジションに納まった感じだ。
ちなみに、ミュールはシャルの補佐、仕事のできる秘書ポジションだ。
もともとしっかりものでもあったけど、シャルの補佐をこなす様になってからさらに磨きがかかった感じだ。
いつの間にか、交渉スキルも習得してたしね。
俺がそんなことを思いつつ、ミューリの新作のエクレアを堪能していたら、後ろから殺気が・・・。
俺の横に座って、俺と一緒にお茶をしていたミューリはいつの間にかいなくなっていた。
背中に冷たい汗を感じながら、ポーカーフェイスを使って、後ろを振り向くと、見かけ上は満面の笑みを浮かべた、シャルがぴくぴくしながら、
「ケンター。美味しい?ねえ、それ美味しいの?」
「シャルもお一ついか・・・。ごほん。ではそろそろ仕事を始めようかな。ミュール、書類を取ってくれるかな」
部屋の隅の方で、すこし震えて立っていたミュールに話を振って、何とか地獄を見ずにすんだ。
シャルっては、そのうち威圧スキル習得するんじゃないかなぁ。
俺の国は、言うならば官僚制(?)みたいなものだ。
ただ官僚は公僕ではなく、君主と臣下の関係を基盤として、臣下にそれぞれの俺の支配領域の管理運営を任せている感じだ。
ただしヒノモト国の国民と言うべき者たちは全員、俺が直接雇用している。
生産者階級と言うべき農業や林業従事者も、ヒノモト国の国民であれば俺に直接雇用されている。
従って、国民に課している税はない。
支払う給与の段階で必要経費を差し引いている。
従って、国民それぞれの給与は異なっている。
パソコンや経理ソフトのないこの世界では、この雇用管理だけでも大変な作業だ。
勿論、現在俺の領地と言うか、領土に住み着いているのは国民だけではない。
(国民には、それぞれの仕事の状況に見合った宿舎と言うか家を与えている)
最近は、冒険者ギルドや商業ギルドなどの本部が領土内に移転してきているし、鍛冶ギルドや調合師ギルドなども本部の移転を考えているようだ。
基本、税金がかからず、迷宮や魔物の森からの素材が豊富にあり、時々龍山脈の魔物の素材すら流通しているヒノモト国は、ガイヤ大陸の中でも異質な国家みたいだ。
第一ヒノモト国内では凶悪犯罪が発生しない。
発生はするけれども、すぐに悪事を働いた者が捕まり、一度悪事に加担するとヒノモト国内への立ち入りができなくなる。
これは、ヒノモト国入国の契約として認知されている。
つまりはじめてヒノモト国に入る者は、全員この契約を結ばないとヒノモト国に入国できないし、密かに侵入しようとすると強制的に排除されその場で石化してしまうのだ。
そのことが解ってから、密かに入国しようとする者はなくなり、また犯罪もなくなった。
そんな国なので、土地を購入するのではなく、土地と建物を賃貸する形でしかこの国に滞在できないんだけど、他国の者からすれば理想郷にみえるみたいだ。
これは、生産者である農業従事者、林業従事者も同じだ。
スキルホルダーでなくても、働く気持ちさえあれば住む場所と仕事を与えてくれて、しかも、割り当てられた以上の収益は100%自分の収益となる。
給与だけでも十分に生活可能だし、家族全員で国民になっていれば家族にも給与が与えられ、子供が小さい頃には、学校と言う所に無償で通わせて貰えて、教育を受けられる。
教育などは、他国では余程の大金持ちか貴族でなければ受けられない。
さらには、医療に関しても国民は無償で治療を受けられる。
もっとも、ヒノモト国は、建物自体を国家が建設するので、上下水道設備を含めて衛生状態が格段に高いので、疫病が発生しにくいし乳幼児でも病気になり難い。
ヒノモト国の政治体制はシンプルだ。
シャルを執政のトップに置いて、司法、医療、建設、教育、雇用・産業、軍事、外交の7部門に分けて、各部門のトップは、シャル、ミュール、ミューリ、フラウ、リン、サクラをおいて、外交のみ俺が直接トップなんだけど、実質、7部門のまとめ役をシャルが兼任しているので、実質シャルが外交の窓口になっている。
大抵は街道がどうだとか、大使館がどうだとかどうでもいい様な話だし。
今回、シャルが般若の顔じゃなく、外面的には菩薩様の顔をしながら詰め寄ってきているのは、多分、この前言ってきた王国連合加入の話だろうな。
「それで、早急に決済しないといけないのは、何?」
「ケンタ。もはや先送りできない状況なの。今、この場で判断して頂戴。どのような判断をしても私たちはケンタの判断に従うし、いろいろ責任とか考えなくていいから」
「わかったよ、シャル。それで、ミュールのこの書類によると、王国連合に加入するために、王国制に移行しろって話かな?」
「まあ、王国連合に加入するなら、絶対条件として、王国制にならないといけないみたい。って言うか、王国制以外の国って、ガルグ帝国や正教会教皇国だけで、あとは獣人族の国と言うか集合体があるぐらいだよガイヤ大陸には。ケンタの言う今のヒノモト国の国家形態は、ガイヤ大陸では全く新しい国家形態になるんだよ。国家形態が違えば、今の世情から言えば、新たな勢力ってことになると思う。建国当初みたいに、迷宮内のみの話なら何の問題もなかったんだけど、日に日にこの国に入ってくる人と、物の数が増えてるし、冒険者ギルドや商業ギルドなどの本部がこの国にあるってことは、各国からすればかなりの脅威だと思うよ」
「何か面倒くさいね。そう言うのあんまり考えたくないんだけどな~」
「主様。そうは言いましても、ヒノモト国の国民として登録している者の数はすでに1万人を超えています。その多くは、主様が進んで集めた国民ではないとしても、やはりこの国の在り方は、明確にしておくのがよろしいかと思います。それで国民が離れるとは思いませんが」
「ミュール。そのことは今はいいのよ。私たちが直接集めた人以外で、この国に集まった者たちは自己責任です。冒険者ではないけど、故郷を捨ててヒノモトの国民になった時点でそのことは納得して貰ってもらっているんだし。それよりも、ケンタがこの先どうしたいのか少なくとも、私たち6人は理解しておく必要があるの」
「申し訳ありません、シャル姉さん」
「いや、ミュールも助言ありがとうね。シャルもありがとう。まあ、俺もいつまでも先送りにはできないって思ってたしね。ここいらできっちり話しておくかな。どうせなら、サクラ達も呼んで、皆揃ったところで話そうかな」
「わかった、ケンタ。じゃあ、フラウを呼んでくる。サクラとリンは念話で連絡したらいいかな。どこで話をする?ラビリンスの方?」
「あっちの方が、セキュリティーもしっかりしてるし、他の者に話も漏れないだろう。じゃあ、先に行っておくから、フラウを連れてきたら連絡してね」
コメントをありがとうございます。
センブスフォースの方も、誤字脱字等のご指摘ありがとうございます。
個別にお返事できなくて済みません。
励ましのコメントもありがとうございます。
励みになります。