S級冒険者
「ただいまー」
「師匠、竜倒した?」
家に帰ると、全員集合してた。
皆が挨拶を返す前に、サクラが早速俺にそう言ってきた。
「あー、うん。念話が通じなくてさー。一当てしたら転移して帰って来るつもりだったんだけど、なんか作戦が上手くいって倒しちゃった。」
「あーケンタ、ドラゴンスレイヤーになってる。」
「本当です、旦那様。ついに旦那様は勇者におなりになったんですね。」
あっ、忘れてた。LVが上がると偽装が解除されるんだった。
直しておかないと。
「それで、アイテムは?師匠。」
うん、サクラは欲望に素直だな。
こいつの目的は竜の魔石だろうな。
「あるぞ、竜の魔石。結構濃度濃いからな、ここで出したら周囲に気付かれるかもしれないから、迷宮の25階に行くか。」
「サクラの迷宮に行こうよ。」
「私の所でもいいですよ。最近、ケンタくん、来てくれてないしぃ。」
すかさず、リンも参戦してきた。
竜の魔石は、2人にとっては垂涎の物か。
「ちゃんと2人の迷宮にも補給するし心配ないぞ。それに途中でいろいろ狩ってきたし。竜の住処の周囲に強い魔物の反応もあったからな、明日にでも皆で狩りに行けると思うぞ。」
そう言う訳で、取り敢えず、俺の迷宮の地下25階の別荘(魔改造して、今や一番の住み心地のいい場所になっている。何と言っても安全だしね。俺と一緒に転移する以外に入ってこれない空間だし。)に連れて行って、一通りアイテムを見せた後、シャル達の防具も一新させた。
サクラ達も物欲しそうにしてたんで、ついでに作ってやったら喜んでた。
「凄いです、師匠。少し分けて頂いていいですか?」
「私も分けて欲しいかも、ケンタくん」
ダンジョンコアの血が騒ぐのか、さっきからそわそわしてるので、許可をだしたら2人ともスタッと移動して、竜の魔石から魔力を吸い上げてるようだ。
そんなので恍惚な顔をしてるし。
ダンジョンコアの性は理解できない。
2人がたっぷり満足するほど吸っても、ほとんど魔力がかわってないけど、どんだけ凄いんだ、この魔石。
この後、俺の迷宮のダンジョンコアの側に置いたら、コアが明滅して赤みが深くなった。この状態でもダンジョンコアって貪欲に魔力を吸収するんだな。
余裕で迷宮を拡大できそうだ。
サクラもリンも、いそいそと自分の迷宮に戻っていた。
ダンジョンコアが成長して迷宮を成長させたいと言う欲求を抑えられなかったんだろうな。
念話で改造するなら中層までにするように言っておいた。
今や2人の迷宮は人気が出て上層は人がいっぱいだからな。
急に迷宮が成長したら警戒して人が入らなくなるかもだしな。
シャル達は、竜の肉を使った料理を始めた。
この場所には最新鋭?の魔道具が揃っている。
まあフランさんの自己満足的な魔道具が多いけど、俺的には結構気に入っている。
キッチンなども家に置いてあるやつより高性能だ。
「竜の肉とか初めて調理するけど、任せといて。最高の料理を作ってみせるわ。」
とか言ってミュールと、ミューリを引き連れてキッチンに行ったけど、どんな料理をつくるんだろう、おいしければいいか。
でも竜の肉、数年分はあるよなー自分達で食べるとしたら。
流石にこの肉はシャルのお母さんの所でも買い取りはしてくれないだろうし。
なんせ価値が半端ないだろうしなぁ。
その後、自分達の迷宮から離れたがらなかった2人はほっといて、竜の肉づくしの夕食を食べた。
鑑定すると、回復ポーションみたいに肉自体に治癒能力があるそうだ。
竜の能力恐るべし。
「それで、明日からどうする?龍山脈で狩りでもするか?」
「行きたい。竜はいないんだったら安全じゃない?」
「まあ、今の3人なら問題ないかな。ワイバーンとかもいたけど。」
「問題ないよ。狩って、サクラ達の迷宮で使ったらいいんじゃない、ワイバーンの魔石。」
「まあ、そうだな、フィールドの強い魔物を狩って再利用した方がいいか?でもあんまり強くしすぎたら、誰も攻略できないんじゃないか?」
「強い迷宮があった方が、大陸のためにはいいんでしょう?なんなら死体ごと運んでそのまま迷宮に吸収させた方がいいんじゃない?ケンタのアイテムボクスなら簡単に持って来れるんだし。」
「そうだな。分解せずにそのまま持ってくるか。素材とか必要ないしな。」
俺達が龍山脈で、亜竜と呼ばれる竜の下位互換みたいな魔物やLV20前後の魔物を狩っては、死体を迷宮に吸収させ、迷宮内でリボーンさせ迷宮の強化を図ることを1ヶ月程過ごした後、そう言えばギルドマスターからの竜討伐の依頼の返事をしてなかったことを思い出して、王都の冒険者ギルドの本部を訪ねた。
「これはこれは、わざわざケンタ殿が訪ねて下さるとは、いいお返事をお聞かせ願えると言うことですな。」
早速、ギルマスがジャブを打ってきたけど、すぐにノックアウトしてやった。
「取り敢えず、一体ですけど討伐してきましたよ。」
ギルマスが飲んでいたお茶を口に含んだまま、口をあんぐり開けて固まったので、お茶が口から出てるけど。
コントの一場面のような状態から復帰するのにたっぷり数十秒はかかった。
その間、俺は大人しくお茶を頂いてたけど。
その後、ベルを鳴らして、鑑定持ちのスタッフを呼んで、俺を鑑定させた。
俺の職業欄は、ドラゴンスレイヤーになっている。
この職種にしてた方が、補正効果があるからね。
勿論レベルとかは弄ってるけど。
流石にLV75(この一ヶ月でLVが1つしか上がらなかった。)は見せられないだろうなってことで、LV30にしてある。
それでも凄いらしいけど。
鑑定を終えたスタッフは、口をパクパク。
やっとのことで声出して、俺の職種がドラゴンスレイヤーになっていることを告げた。
「取り敢えず、竜の爪と竜の鱗です。倒したのが地竜だったので、角はなかったですね。」
「これは、王宮に渡してもいいんですか?正式に指名依頼を契約してませんが。」
「王宮が欲しいならいいですよ。」
「ただ、これはマルク王国一国のみならず、この大陸中に公表しなくてはなりませんが。」
「政治的にいろいろ制約を受けないのなら問題ないです。そうですね、今回の王宮からの依頼を受け、俺がこの国でS級冒険者の昇格を受けることに対して、褒美や報奨を頂けるのであれば・・・」
「恐らく、辺境伯待遇での綬爵になると思いますぞ。領地も相当な領土を割譲されるべきでしょうが、元々マルク王国が所有していた領土はこの王都周辺のみですからな。新たに領有が認められた地域か、マルク王国にあらたに下った領主の地域になるでしょうな。」
「いや、そう言うのはいらないんで、現在、開発がほとんど行われていない、魔物の森の真ん中にある迷宮の管理権と所有権を頂けないかと。」
「迷宮の管理権と所有権ですか。確かにS級冒険者になれば、興国の権利がありますが。」
「いや、別に国を作るつもりはありませんよ。単に迷宮を自由に探索したいと言うか、自分の迷宮を持って、のんびり探索三昧の日々を送れたらいいなぁという感じです。俺が探索した後は、他の迷宮のように他の人にも開放しますし。」
「あの迷宮の所有権は現在、マルク王国が持っていますし、迷宮のある地域の魔物の森もマルク王国の領土に組み入れられてますので、王宮がケンタ殿に下賜する形ならば問題はないかと思います。幸い、他の迷宮の整備を優先させて位置的なこともあって、現在ほとんど手つかずの状態ですが。」
「その辺りを踏まえて交渉をお願いできませんか。俺としてはこの条件を満たして貰えるなら、この竜の素材を王宮に差し上げてもいいですし、竜討伐したことを公表して貰って、この国でS級認定を受けることに問題はありません。」
「承知しました。では、その線で交渉してみましょう。おそらく問題ないでしょう。しかし、授爵はいいのですか?王族と同じ待遇での綬爵ですぞ。」
「そう言うのは、興味ないんで。のんびり迷宮探索してる方が、性にあってますよ。」
長期入院中でして、執筆ができません。
取り敢えず、きりのいいところまで書いて、第一章としたいと思います。
なんとか、主人公の建国のところまでいけました。
成り上がり物語の構想は、まだ先もあったのですが
取り敢えず、次話で長期休止する予定です。