冒険者組合
冒険者ギルド。そこは猥雑な荒くれどものも巣くう場所・・・・と言うことはなく、一見すると市役所のロビーみたいな場所だ。端の方には掲示板にいろんな依頼が張り出されてる。ハロワーかって感じ。
受付はどこも開いてたけど、俺は一直線に真ん中ぐらいに座る受付の前に進んで行った。
俺が周りの空いている受付を無視して向かってきたので少し引いてる感じだ。すまん、少し焦ってしまった。しかしあえて言おう。異世界転移されて猫耳娘を見てここに来ないやつはいないと。ついに生猫耳娘だ。耳がピクピクしてるし。生ピクだー。
「えっと、済みません。冒険者登録をお願いしたいんですが。」
少し真面目モードでお願いしてみた。
「はい。冒険者登録は初めてですか?他の国で登録されておられましたら引き継ぎが可能ですが。」
「はい。全くの初めてです。いろいろ教えて頂けると嬉しいです。メアドでもラインでも。」
「えっと、メアドとかラインについてはよく分かりませんが冒険者ギルドについては喜んでご説明させて頂きます。」
はっ、しまった。これじゃあ、ナンパ師じゃないか。硬派で行かなければ。
「では、ご説明しますね。初回登録には銀貨1枚が必要です。最後の依頼完了記録から5年が経過するとカードの機能が停止します。再登録は可能ですがその場合銀貨5枚が必要になります。」
えっと、そのカードに記録されるのはどういった内容が記録されるんでしょうか?」
「お名前とランクになります。最初のカードは鉄でF級を表します。次は銅でE級、D級。その次は銀でC級、金のB級。続いてミスリルのA級になります。最後はアマダントのS級になりますが、現在アダマント級認定者はおりません。まあ龍山脈で竜を倒さないといけないと言う規定ですからある意味飾りの様なものですね。」
「飾りですか?」
「すみません。冒険者の方に。飾りと言うのは言葉足らずでした。そうですね、最終目標といいますか、冒険者が冒険者であると言う最終目標みたいなものですね。ちなみに、A級認定の冒険者は現在お二人だけですけどね。」
「そうですか、ありがとうございます。それで級の進級はどのようにして決められるんでしょうか?」
「それは、各級ごとに討伐完了認定されたポイントで決められます。例えば、今日登録されますと、すぐに鉄のF級プレートをお渡しする訳ですが、討伐依頼を10回完了しますとE級に進級します。」
「なるほど、ではまず登録とF級でも受けられる依頼を教えて頂けますか?」
「それでは、こちらの方に必要事項をお書き下さい。あっ、文字は書けますか?」
実は文字を読むことはできるんだけど書けないんだよな。日本語で書くと周りには古代文字みたいだと認識されるみたい。馬車の旅の中で痛感したので現在文字の練習中だ。翻訳は自動でできるから文字を覚えるだけなんだけどね。それでもきちんと書けるかどうかは分からないので代筆して貰うことにした。あー頭悪い奴って思われただろうな。この猫娘とのフラグは折れたな。
「では、お名前と、年、種族、出身地、スキルがあればスキルをお願いします。勿論スキルは個人の生命にかかわる事ですからおっしゃらなくて結構ですよ。あくまで任意ですから。以上をお教え願いますか?」
「名前は、ケンタ・アマミヤ。年齢22歳。人族。日本?地球出身。スキルはアイテムボックスです。」
「えっ?」
「えっ?」
「あーもう冗談ですよね。全く面白い方ですよね。人族なのに私の所にいらっしゃるし。」
「えっ?どうしてですか?一番好みの方に処理して欲しいと思ったんですけど。」
「えっ?好みですか?えっと、ケンタさんはハーフとかではないですよね?」
「そうですね。少なくとも祖父の代までは全員人族ですが。」
「それなのに、獣人族に嫌悪感と言いますか忌避感みたいなものはないんでしょうか?」
「どうしてですか、こんなに可愛らしい方を嫌悪する人とか言ないと思いますけど。」
「本気で言ってます?」
「本気と書いてマジです。」
「はーそうですか。確かに極まれに人族の方でもそう言う方はいらっしゃると聞いたことはありますけど、珍しいですよ。ここは冒険者ギルドで多種族同士で働いてますからそういったことはないですけど、普通は他種族間には見えない壁みたいなものがあるんですよ。」
「そうなんですか。まあそう言ったものは同じ人族同士にもありますしね。」
「えっと、何の話でしたっけ。ああ、出身が日本、地球でしたっけ?そう言った国を聞いたことがないんですが。」
「まあ小さな国ですし。」
「では、出身国は森の中と言うことにしときますね。」
「それでいいんですか?」
「人族以外は大体こんな感じですよ。ドワーフ族の方だと山の中ですし。」
「なるほど、ではそれで。」
「あと、スキルはアイテムボックスですか?そしたら世界中の人がスキルホルダーになっちゃいますよ。スキルホルダーの場合には、大体、銀プレートC級スタートになりますけど、ケンタさんの場合には、きっちり鉄プレートスタートですからね、もうプンプン。」
プンプンとか言う人初めて見たけど。いや随分前にもテレビでは見たことあるけど、こうして言われると可愛いな。しかし、アイテムボックスってスキルはやっぱりごく普通のスキル何だなぁ。
しばらく待っていると、真新しいプレートを持って猫耳娘が戻ってきた、そう言えば名前を聞いてなかったな。
「それではこちらが冒険者カードです。失くさないようにケンタさんの「
スキル」のアイテムボックスにちゃんと収納しておいてくださいね。尚、紛失すると再発行はできませんので。またもし探索中に他人の冒険者カードを見つけたら持ってきて下さいね。カードによって報奨金が出ますので。それから、こちらがF級で受諾可能な依頼です。お散歩か、解体作業の手伝い、荷物運びは都市の中で行えますから安心です。薬草収集は少し離れますが森の周辺にも生えてますので頑張れば可能ですね。勿論森の中だとたくさん群生していますけど、魔物が出ますから絶対に入っちゃダメですからね。」
「ちなみにですけど、F級でも討伐によって完了できるものがあるんですか?」
「それは、依頼は一つ上の依頼まで受けられますので、E級の討伐依頼になる、ホーンラビットやボアー等は討伐完了回数に含まれますけど、スキルホルダーでもない初心者には無理ですからね。第一、魔物を運搬するだけでも大変ですから。」
「勿論しませんよ。そう言えばパーティーとかを組んだりして討伐とかないんですか?」
「冒険者同士でパーティーを組むと、素材の分配やなんやで揉めることが多いですからね。冒険者が連れてるのは荷物持ちに特化したポーターか、戦闘奴隷だけですね。」
「なるほど、あと、一通り装備を揃えたいのと、お勧めの宿があれば教えて欲しいんですけど。そして、あなたのお名前を教えて下さい。」
「えっつ、私の名前ですか。えっと、シャルと言いますけど、なんで名前を?」
「だってこれからこちらの冒険者ギルドでお世話になるんですから、できればシャルさんにお世話して欲しいじゃないですか。」
「本当に私でいいんですか?」
「シャルさんでお願いします。」
「分かりました。私、シャルが誠心誠意お世話させて頂きます。」
「よろしくお願いします。」
「えっと、それで一通りの装備ですね。上級者になれば、個人の工房と個人契約って手もありますが、最初でしたらこのギルドの2階に一通りの者はそろってますのでそちらで購入して下さい。あっ、これを出したら10%引きで売ってくれますから。職員割引です。あと、宿はギルドを出て最初の角を左に曲がった所にある、日向亭がお勧めですよ。一晩銀貨3枚です。勿論、おいしい食事つきですよ。受付でシャルの紹介だとおっしゃって下さい。」
「えっと、いろいろありがとうございました。それじゃあ、取り敢えず、装備を整えて時間があれば宿に行って、薬草採集に行ってきます。」
「行ってらっしゃい、ケンタさん。あっ、大きめのバッグかリュックを買っておいた方がいいですよ。最初は使わないと思っても、すぐに必要になりますからね。」
「あっ、ありがとうございます。確かにアイテムボックスだけでは足りませんね。」