ドラゴンスレイヤー
ということで、現在俺は、アミラス王国のどっかの貴族領の中を走ってる。
まあ風魔法などの付加した状態で疾走する姿を誰かに見られる訳にもいかないし、基本街道を外れ裏道、獣道、道なき道を進んでいる。
ただ黙って走り続けるっているのも意外と苦行に近い。
一日二日ならまだ頑張れるけどね。
変なこと承諾してしまったなぁとか思いながらも、皆を連れて馬車で長期間移動とか無理だしね。
何と言っても俺の顔はこの国には知られてるし、元教え子が各地に散ってるから俺の素生を隠しながらの移動とか無理そうだしね。
やっと見えてきた。
まあリンの迷宮のある場所から、アミラス王国の中で言えば反対側にあるからな、距離も離れてるか。
さて、どうやって中に入るかな。入り口で冒険者カード見せたら、どう言う反応されるか分からないしな。
ここは隠密行動で行くか。
最近、走りながら独り言が増えた。
いや、夜はちゃんと家に戻ってるし、ご飯も食べに戻ってるんだけどね。
何と言うか、一人走ってると人淋しいんだよ、マジで。
アミラス王国の迷宮は、巨大な迷宮都市だった。
かつてのマルク王国の王都ぐらいある。
迷宮を中心に発展したんだろうけど、遠目で見た城壁が、都市の城壁の一部だったとは。
近づくにつれ空間感知で認識されるその規模に圧倒された。
あっ、元教え子達だ。
迷宮探索やってるのか。
ちゃんとパーティー組んでるな。
まあ地球出身者ならこの手の攻略は協力プレーした方がいいことは知ってるだろうしな。
ちなみにマルク王国の迷宮にも冒険者として何人かの元教え子達が来ている。
俺は会わないようにしてるからあっちは気付いてないだろうけど。
面倒だしね。
以前、マルクの冒険者ギルド本部で、A級冒険者に会わせろとか、自分達をA級冒険者のパーティーに加入できるように紹介しろとか言ってきた馬鹿がいるらしい。
勿論、受付でやんわり断られ、その後周囲の冒険者に説教されてたみたいだけど。
未だに自分達を特別視している感覚が凄いけどなんだかなぁと思う。
って言うか、そのA級冒険者や、パーティーが俺だとは気付いてない時点でどれだけ情弱なんだよって感じだけど。
脳筋系が多かったからなー俺のクラス。
そんなことを思いながら、さてどうやって迷宮の中に入るか思案してみた。
素直にA級冒険者カード出したら、中には入れるだろうけど、門番のみならず周囲の冒険者も大騒ぎになるだろうし。
現在光学迷彩も使って完全に隠れているので見つかることはないんだけど、何と言うか、入口に人が多い。
入場制限でもしてるのか、1パーティーずつ順番に中に入って行く。
入るのも門番が指示してからだ。
例えで言えば某テーマパークの入場制限かけられた順番待ちの状態。
何だかなって感じだ。
これだけの冒険者と言うか探索者がいたんだなぁ。
鑑定で見るとLV的には多分E程度しかないやつも入って行ってるけど、まあ中級冒険者と一緒だし大丈夫なのか。
パーティー制が浸透して、それまで迷宮に入れなかった層の冒険者が入れるようになったのが混雑の原因なんだろうか。
その後、何とかコソコソと他の人が入る後をついて入って行って、何とか入り口の水晶の登録ができた。
走っている時よりも疲れた。
この迷宮、大陸で一番大きいと言う話だ、周囲15キロとも20キロとも言われている。
これだけの人数入れても十分に対処できるのもうなずける規模だ。
その後、都市の外にマークしていた場所まで転移して、また走り出した。
帝国の迷宮もこんな感じだったら大変だなぁとか憂鬱になったけど、その時はその時だなってことで今は帝国との国境まで急いだ。
勿論正式に国境を超えることはできないので、道なき道を進むんだけど、途中盗賊のアジトがあったので潰しておいた。
両国に跨っているので盗賊にとっては立地条件がいいのかな。
アジト自体は洞窟ではなく、砦とまではいかないけどそれなりの建物だ。
昔の砦跡なのかもしれないけど、生活するには便利だ。
水も豊富だし、寝床もしっかりしてる。
牢屋まで完備だ。
盗賊自体は全員眠らせてマッパで繋いで街道脇の大木に繋いでいる。
誰かが見つければ国境の兵士を連れてくるだろうし、運が悪ければ魔物の餌になってくれるだろう。
まあ国境の高見台から見える場所だし、時々商人が通っているみたいだし大丈夫だろう、多分。
アジトのお宝と魔道具一式、食料品などは全て頂いた。
あんまり欲しいとは思わなかったけど、そのまま放置するのも勿体ないし、また誰かがここに住みつくのも避けたいしね。
一応、念のためこの場所に水晶の欠片を置いて、結界を張っておいた。
簡単にはみつからないだろうし、魔物も入りこむことはないだろう、多分。
「無事に帝国領に入ったよー。」
夕食に戻ってシャル達に報告した。
「お疲れ様―、ケンタ。それにしてもいろいろ大変だったのね。盗賊退治は私もやりたかったなぁー」
「そうなの?あんまり楽しい物じゃないよ。むさ苦しいやつらをまとめて縛りあげるとか。」
「でも、ちゃんと届けたら報奨金とか貰えたんじゃないの?」
「そうなのかもしれないけど、いろいろ面倒そうだったしね。」
「旦那様、アミラス王国の迷宮はいかがでしたか?」
「ああ、人がいっぱいだったな。こことか、サクラのところも人が増えて多いなーって思ってたけど、その比じゃないね。入るのに順番待ちしてるぐらいだし。」
「いつかは、私の所もそれに負けない程の人気ダンジョンになってみせます、師匠。」
「私も大きくしたいなぁ。」
ダンジョンコアにとって迷宮の発展を求めるのは、本能的なものなんだろうな。
リンまでサクラの意見に同調するとは。
帝国領のダンジョンは一つは帝都の近くにあった。
こっちが地下16階まで探索が進んでいる迷宮A、そこから3日程離れた場所にもう一つの迷宮があった。
こっちが迷宮B。
いずれもアミラス王国の迷宮ほどじゃないけど賑わってた。
やはり迷宮と言うのは大切な資源なんだな。
それを6つも保持しているマルク王国が一気に大国になるのも解ると言うものだな。
まあ帝国迷宮Aの方は、竜の件が片付いたら皆と入って攻略してしまおう。
そこからさらに3日程の苦行を終えて、やっとのことで龍山脈に到達した。
遠かったなぁ。
しっかりマーキングして家に戻って、久しぶりにのんびり過ごすことにした。
俺はやり遂げた。
そんな風に思っていたら、
「お疲れ様、ケンタ。後は龍山脈に入って、いくつか山を越えて竜を見つけるだけね。」
そうだった、竜を探して、あの標高数千メートルも山々が連なっている龍山脈の中を探索しなくてはならなかった。
「旦那様、どのような準備が必要でしょうか?寒い場所だと聞いていますが。」
そう言えば、この大陸高い山ってないし、第一、冬がないんだよね。
日本で言えば秋ぐらいな感じ。
雪なんて見たことないだろうしね。
防寒具とかないんだろうな。
「ミュール大丈夫よ。ブラックタランチュアのインナーには体温調整の機能がついてるし。迷宮の灼熱フィールドでも大丈夫だったでしょう?」
「なるほど、ではいつもの装備で問題ないんですね。」
「そうなんだ、知らなかった。」
「ケンタは相変わらずだよね。第一タイタンの革にもその機能があるんだから、私達がフィールドで困ったことないでしょう?」
「確かに。深く考えてなかったよ。」
まあ準備とか言っても、毎日、家に戻って眠るんだし何も要らないか。
想像はしてたけど、迷宮の下層並みに魔素濃度が高いなぁ。
魔物の反応はないか。
現在、俺は一人で龍山脈の中を歩いている、走っているか。
最初はシャル達も一緒にってことだったけど、状況がわからないし、目的地や方向も解らないので、俺が一人で先行した方がいいと言うことになった。
ミュールなどは最後まで同行するってことを主張してたけど、戦いの時のためにレベルアップしておくように説得して納得してくれた。
今は、サクラの迷宮の下層で戦っている。
サクラは自分自身のレベルアップを目指してるみたいだし、シャル達もまとめて面倒を見て貰うことにした。
上級回復ポーションをたっぷり渡してるし、何かあれば念話で連絡付くから大丈夫だろう、多分。
誰かに見られる心配もないので、風魔法をまとって、全力で山の中を踏破していく。
普通に歩いてたら数日かかりそうだけど数時間でひと山越えた。
途中で迷宮下層レベルの魔物と戦いながらより魔力の高い方に進んで行く。
回収した魔物の死体はサクラとリンへのお土産だな。
多少はダンジョン内の魔力補充に役立つだろう。
龍山脈と言っても高い山だけが連なっているのではなく、高原みたいな場所があったり、岩山みたいな場所があったり意外と変化に富んでいる。
魔物もそこそこいるようだ。
高LVだけでなくLV20前後の魔物も生育している。
やっぱりあの中だよなぁー。
俺の目の前には、岩の裂け目と言うには大きな空洞が広がっている。山の周囲を探索していたんだけど、この裂け目から濃厚な魔力が放出されている。
シャル達を呼ぶかどうかを一瞬考えたけど、取り敢えず確認してからだなって思って、裂け目の中に入ってみた。
竜がどの程度の魔物かは知らないけど、少なくとも今通っている場所は、竜が通れる道ではないと思う。
大きな地震の後にできた地割れみたいな感じだ。
道と言うより、大地の裂け目を周囲の岩が崩落しないことを願いながら進んでいる感じだ。
間違いなくこの先に何かがいる。
かなり濃厚な魔力の気配だ。
2時間ばかり道なき道を進んだ先にいた、はっきりと感知できた。
竜だな。
恐らくあっちも気付いたと思う。
こちらの気配を探っているみたいだ。
勿論、3点セットで気配遮断しているので認識はされていないだろうけど、何かが近付いているのを感じているんだと思う。
魔力が濃厚になった。
目視できる地点にでると、俺がいる場所はドーム状の大きな空間の丁度天井部分になるようだ。
ドームの中心には、竜が横たわっている。
名前 ドラゴニア
種族 地竜
生命値 12000
攻撃力 5500
防御力 4500
スキル 炎操作、身体強化、鱗化、自動治癒、逆鱗化、咆哮、威圧、剛力
全身固い竜の皮で覆われ、首の周囲にはびっしりと鱗で覆われてあたかも首のまわりだけ鎧を着けているようだ。頭をもたげて天井を見上げて顔をグルグルしている。俺の位置の捕捉は出来てないようだ。
スキルで逆鱗化とあるぐらいだから、凶暴化するか、身体強化が更に強固になるって感じなんだろうな。
鉄壁でない分まだましか。
攻撃は炎操作って言うぐらいだから、口から炎でも吐くのか。
できればその攻撃は食らいたくないな。
俺の炎魔法より強力そうだしな。
ほほーっ。首の内側にある、あの部分が逆鱗か?
鱗の向きが一ヶ所だけ逆だ。
上から狙うならあそこになら剣が通りそうだな。
念のため、この場所に水晶の欠片でマーキングしとくか。
ん?
念話が通じない?
迷宮の最下部とも念話出来るから深さは関係ないと思うけど、魔力濃度と関係してるのか?
今こっちを警戒してるからこの場から動くことはできないな。
転移で一旦逃げるか?
あれこれ逡巡していると、竜が立ちあがった。
完全に警戒モードに入った感じだ。
それでもグルグル顔を回してるところをみると、俺の存在を感知は出来てないんだろう。
チャンスは一回だ。
あの逆向きになった鱗の部分から剣を突き刺して、最大魔力の雷魔法をぶっ放す。
炎を操るから氷魔法の方がいいのか?
でも発動のスピードとか考えれば雷だな。
生物である以上心臓も脳もあるだろうし、生体静電気を持っている筈だから、身体内部への雷には抵抗を示せない筈だ。
ダメなら即転移。
武器を出したらその時点でこっちの存在を感知されるから、武器を出すのは直前だな。
武器も持たずに竜に飛び込むとか無謀もいいところだけど、これで転移まで使えないならジエンドだな。
ドームの中を顔を上げながら歩きまわる竜。
大丈夫こっちには気付いてない。
天井から嫌な雰囲気を感じてるってところだろう。
しかしスキルもないのによく感じれるな。
種族独特の能力なんだろうか。
こっちに寄って来る。
やつが横を向いた瞬間がチャンスだ。
身体強化をした上で最大跳躍、風魔法を駆使して一気に飛びこむ。
風魔法を使った時点でこっちを感知されるからね。
剣も同時に取り出す感じ。
やつが目の前を通り過ぎ、首を無防備さらして視線を外す。
ドンと音がした様な気もしたけど、一瞬で竜の首に剣を根元まで突き立てて雷魔法を最大出力で発動。
派手なエフェクトもなく、音もなく、一瞬で決着が付いた。
そのまま竜をアイテムボックスに収納。
大丈夫、収納出来た。
ちゃんと死亡したようだ。
名前 ケンタ・アマミヤ
種族 人族
年齢 22歳
職業 ドラゴンスレイヤー
LV 74
生命値 2220
スキル値 304000
攻撃力 2250
防御力 2440
固有スキル アイテムボックス、鑑定
獲得固有スキル 聖魔法、炎魔法、氷魔法、嵐魔法、鉱魔法、炎操作
魔力操作、空間感知、魔法耐性
剣豪、暗殺術、跳躍、鉄壁、剛力、
隠密、擬態(光学迷彩)、擬態(身体変化)、隠蔽、偽装
統率、指揮官、教導、威圧、迷宮創造
スキル なし
能力 学習、研究
補正 自動翻訳、ドラゴンスレイヤー(自動治癒、逆鱗化)
レア装備 水晶の指輪、タイタンのズボン、タイタンのベスト、タイタンのブーツ、タイタンの籠手、
まあこの際、ステイタスには目をつぶろう。
アイテムボックスの中を確認すると、竜の鱗が500枚以上に竜の逆鱗1枚。
竜の肉をはじめ竜づくしのアイテムがいろいろ手に入ったようだ。
竜の皮で防具とかできるのかなーと思ったらしっかりメニューに加わってた。
タイタンより下の欄みたいだからきっと防御力も上なんだろうな。
早速生成して着替えることにした。
タイタンの防具も黒系統だったけど、竜の革の防具は漆黒だ。
艶のある深い黒。
地竜って黒くなかったけどなーって思ったけど、そこは考えてはいけない所なのだろう。
武器の類は竜のアイテム関連で作れるものはないみたいだ。
まあ蒼龍剣で十分満足してるけどね。
今回もしっかり役立ってくれたし。
竜を屠って濃厚な魔力が散った感じだ。
周囲には生物の反応はない。
マーキングに使った水晶を回収した後、ドームから続く大きな通路を進んで見る。
出た場所は、俺が進んできた方向とは逆方向の山の中腹だった。
感知範囲ギリギリに魔物の反応もあるし、取り敢えずここにマーキングして家に帰ることにした。