ケンタ迷宮
「ただいまー。」
「お帰りーって、何持ってるの?すごい魔力感じるけど。」
「おー、マルク迷宮攻略してきたぞ。」
「マジで?」
「本当よ。もう少しで死ぬところだったわ。ケンタったら一人でワイバーン倒しちゃったのよ。」
「まあ成り行きでな。で、これがあそこのダンジョンコア。ワイバーンが持っていた。」
「凄いわ。どれくらいかけたらここまで魔力を練れるのかしら。最後の守護者は強かったの?」
「LV50に生命値7000だからな。身体強化、鱗化、魔法耐性も付いてめっちゃ強敵だった。」
「LV50の守護者って、そのダンジョンの使徒はどれくらいのレベルだったのかしら。少なくともLV70ぐらいね、きっと。あれ?おかしいわ、このダンジョンコア。ダンジョンの核が残ってる。ここで定着したってこと?あり得ないわ。周囲で一番魔力の強い場所に飛んで行って定着することになってるのよ。ほら、これが私のダンジョンコア、この中に種みたいなものが見えるでしょう、これがダンジョンの核なのよ。」
そう言って、俺が持ってきたコアの半分ぐらいの大きさで深紅と言うにはまだ透明度の高いダンジョンコアを見せてくれた。
「なるほど確かにそうだな。となると新たなダンジョンは形成されないってことか?」
「というか、このダンジョンコアまだ生きてると言うか、ダンジョンはそのまま存続してる感じかな。」
「ケンタ、転送項目が大変だよ。」
ミュールにこの場所の水晶の登録をさせていたシャルが叫ぶ。
「ん?どうした?」
「ケンタも見てみて。」
「な、これは。」
「どうしたの?」
「マルクの迷宮が、ケンタの迷宮に変わってる。」
「えー、マジで?」
「マジで。」
「じゃあ、あっちの迷宮の所有権がケンタさんに移ったってことだよ。」
「そんなことあるの?」
「迷宮作成のスキルを持ってる人なら、ダンジョンコアの所有者になれるんだけど、そもそもダンジョンコアの所有者はダンジョンの影響範囲から出れない訳だから、同時に同じダンジョンに迷宮作成のスキルを持った人がいることなんかできない訳で。」
「まあともかくだ、ダンジョンのことは、サクラが専門だし、一度確認してくれ。シャル、ミュール行くぞ。」
そう言って3人を引き寄せてマルク迷宮改めケンタの迷宮地下25階に飛んだ。
「ちょ、私はここから出れない・・・って出れた?」
「おう、ここが元マルク迷宮のさっきまでワイバーンと戦ってた25階だ。」
「凄い。凄い規模だね。何この迷宮。凄すぎる。あーん、私こっちに移りたい。」
「って移れるのか?」
「うーん移れるんじゃない?こうして移れてるし。念のため私も登録しとく。あれ?やっぱりここの所有権、ケンタさんになってるよ。」
「そんなことわかるのか?」
「うん、一覧表みたいなのがあるのよ。それによると間違いなくケンタさんの所有になってるわね。ねえ、私に管理任せて貰えない。いえ、任せて下さい。これから師匠と呼ばせて頂きますから、ねえお願い。」
「まてまて、あっちはどうするんだ?」
「えっ?二つとも管理できるわよ。こっちなんてほとんど完成してるし。ちょこちょこメンテナンスする程度だし。というか、いろいろ参考にしたいし。」
「迷宮作成ねー。念のため、どうやったらその管理画面がでるのか教えてくれ。」
「えっ、コンソールオープン。あっちは私の所有迷宮だからアドミンコンソールオープンで管理者画面が見れるわよ。」
心の中で念じてみる。
だー、出たー。
まじでこの迷宮俺の所有物になったんだ。
何々、ほほーいろいろ細かい設定が出来るんだな。
ふむふむ。
おおこれがいいか。
守護者が防御の要なら、従者がメンテナンスの要だな。
「じゃあ、サクラをこの迷宮の従者に任命してやるよ。」
「マジで?じゃあ、いろいろ好きに弄ってもいいんだね。全階層行き来自由になるし。それに念話出来るようになるから便利だし。」
「何?念話?」
「そうだよ。管理者と守護者、従者の間には、念話で意思疎通が出来るんだよ。って私とタイちゃんと会話するとこ見てたじゃん。」
「あーそう言えば、ボッチ会話していると思ってた。」
「ボッチ言うな。」
『ほら、通じるでしょう?』
『な、確かに、これは凄い。』
「シャルお姉ちゃん達も設定してたら?自由に会話できるよ。人数制限はないよ。まあその分魔力使うけど、あれだけのダンジョンコア持ってるんだったら問題ないよ。」
「シャル、ミュール、今から2人をこのダンジョンの従者に設定するからな。そしたら離れていても心の声で会話が出来るようになる。」
「よくわからないけど、いいよ。」
「旦那様のお望みのままに。」
『どうだ?聞こえるか?』
「何?頭の中に直接ケンタの声がしたよ。」
「それが念話。声に出さなくても心に念じたら通じるから。」
『ケンタ、大好き』
『おう、俺も好きだぞ』
「何、2人して赤くなってるの?」
「何でもないぞ。」
じーい。
『旦那様、どうでしょうか?』
『大丈夫だ、聞こえてるぞ』
「そう言えば、俺がここの所有者ってことは、このダンジョンの領域から出れないってことか?」
「それは大丈夫なんじゃない。私も出てるし、第一最初に、師匠が飛んで来た時にすでにこの迷宮の範囲から出てるわよ。」
「なるほど。つまりあれか?内から出れない結界みたいなものがあって、転移でその結界の外に出ちゃえば自由みたいな。」
「そんな感じじゃないかな。私が持ってる知識の範囲外の事態だけど。」
「まあ、ケンタは規格外だからね。」
「旦那様ですからね。」
「何か納得できないけど、取り敢えず、サクラも出れたならよかったじゃん。家に帰ってちょっといろいろ整理しよう。」
家への転移も問題なくできた。
勿論サクラ付きで。
サクラは2階の空いてる部屋を使うことになった。
俺達3人だけでお風呂に入っていたら、仲間はずれは嫌だとか言って一緒にお風呂に入って来やがった。
決してロリではないけど、メリハリボディーは目の毒だ。
夕食を食べ、寝る時にも俺達3人が一緒に寝てると知って割り込んで来やがった。
今夜は疲れてたからそのまま寝たけど、迷惑なやつだ。
それから2週間ほどは、両方の迷宮作りに奔走した。
ケンタの迷宮を鬼仕様に変えた。
ちなみに15階の守護者は、タイタンの魔石はシャルの新しい武器に使ったので、サラマンダーを置いた。
LVは控えめのLV35だ。
なぜなら俺のLV55なので20差ギリギリを置いた。
元々LV30だったし、さらに迷宮作成の機能だけでなく、能力付与も使って、物理耐性、魔法耐性を付加してるし、炎魔法使用だ、そうそう破れないだろう。
地下11階から下はかなりの鬼改造だけど、10階までは攻略しやすい設計にした。
特に地下8階からは罠や、魔物、索敵などの経験が身に着くような親切設計だ。
B級素材も出やすくし、鉱石採取、防具の素材も手に入れやすくしているのでパーティーを組んで攻略した方が結果的に収益が増えることになり、冒険者の意識も変わっていくだろうと思う。
鬼改造には俺がアイテムボックスに所持していた様々なアイテムが役に立った。
サクラは自分の迷宮にまわって来る魔石が少なくなったと不満を零してたけど、迷宮が誕生して一ヶ月もしないで100年分ぐらいの進化をしているんだから文句はない筈だ。
俺の迷宮と比べるのが間違っているんだし。
まあそうは言ってもサクラの知恵がないと俺にはダンジョン作成の知恵は自然と頭に流れて来ないし、機嫌を取る必要はある。
ちなみに、スキルポイント10万ぐらい使ったけど、「迷宮作成」のスキルが「迷宮創造」に変化したことはサクラには黙っている。
これは非常に危険なスキルだ。
なんと自由にダンジョンの種を作ることが出来る。
つまり、好きな場所にダンジョンを作り放題だ。
しかも、階層の変化も可能だ。
こっそり地下26階を作ってプライベート空間を作成中だ。
何を置いてるかと言えば、鉱魔法で作成したフィギアゴーレムだ。
声がつけられたら最高だけど現時点では形成のみ。
等身大フィギア達が、俺の迷宮内の階層守護者となる日もあるかもしれない。
俺が死んだ後この階層が発見されたらね。