アイテムボックスでアルバイト
その後、部屋の前で待機していた、ガタイのごつい騎士たち挟まれていくつかの城壁を越えて、王都?の市民街区と思われる場所まで案内して貰った。どんだけ広いんだよって距離を一緒に歩いてたし、俺自身丸腰で、ヨワヨワって雰囲気だし騎士さん達も少しは気を許してくれていろいろ話してくれた。取り敢えず、冒険者ギルドや商業ギルドに登録して身分証を作ってた方が王都を出るにしろ、他の場所で生活するにしろ便利だと教えて貰った。で、冒険者ギルドと商業ギルド何が違うのかと言えば、迷宮探索や魔物討伐をメインでやるのが冒険者ギルド、採集や生産職に就くなら商業ギルドがいいそうだ。俺的には生産系がいいんだけどなーって思ってたら、騎士さんが商業組合は最下層のランクFから上がるのに最低1年ぐらいかかるし、その間はほとんど無給に近い状態だと聞かされて、通常は10歳未満で口減らしで商業ギルドに預けられるやつが多いと聞いて止めた。
いろいろあったけど、時間的にはまだお昼前だ。ちなみに時間は地球と同じ24時間らしい。数え方が違うけど大体そんな感じだ。一年はほぼ同じぐらい。ただし1週間と言う単位はなく、一ヶ月に当たる分け方で12ヶ月で一年だ。一ヶ月が30日。夜になると赤い月が出てその位置で一年を区切っているらしい。夜に観察してみよう。
さて、いずれにせよ冒険者組合一択なんだけど問題はこの国の冒険者組合で登録するかどうかなんだよな。一応、冒険者組合はこのガイアの大陸で国家の枠にとらわれずに独立した組織であるらしい。でもなー、基本この王国は信用できないんだよな。何と言っても生徒達を騙して隷属させてるしな。俺自身をどうこうしようと思えば簡単に消されるだろうけどしな。
しかし、アイテムボックスが死にスキルとはねー。この世界の人全員が持ってるスキルとか。スキルとも言えないか。全く、あの神様に騙された気分だ。まあ思えば地球でもあんまりいい思いはしてなかったしな。あーマジカル少女シリーズのフィギア勿体なかったなー。あれ集めるのにどんだけ苦労したか。まあ、HDDの処分して貰ったのは感謝だな。あれが世に出たら、俺は社会的に詰んでたな。
ともかく、財布だっけ?この金貨をまとめて収納できそうなものを買っておくか。そう思いながら大通りを歩いていると前の方から大きな荷馬車を前にして大声を出してるやつがいる。
「どうするんだよ。今から雑用夫見つけるとなると出発が遅れて夜までに宿営地につけねえぞ。ただでさえ、出発が遅れてこれ以上遅れたら信用問題だぞ。何とかならないのか?商業ギルドとか冒険者ギルドでも余ってるやついるだろう一人ぐらい。」
「両方当たってみましたがダメです。夕方なら何とかなりそうですけど、こんな時間ですし、ポーター出来そうなやつはすでに迷宮の荷物持ちに出ていってますよ。」
「あの?雑用できる人を探してるんですか?」
「ん?お前は?見たことない顔だな。」
「ええまあ、今日王都に来たので。」
「兄さん、アイテムボックスの空きあるかい?身体はちょっとヒロッとしてるけど」
「ええまあ、身体は丈夫だと思いますが。」
「そうかい。じゃあ、マルク王国まで片道7日の距離だけど雇われないかい?」
「えっと、何もできませんけど。」
「いや、アイテムボックスが空いてるなら問題ないんだ。壊れやすい商品がいくつかあってね、そいつの収納をお願いしたい。」
「枠って5つしかないんですよね?」
「何を当たり前のこと言ってるんだい。勿論、お前さんの私物については入れ物を準備するからそっちに移して貰えばいいし。」
「それで費用は?」
「7日で銀貨10枚だ。勿論途中の食費はこっち持ちだし、護衛も付いてるから魔物に襲われることもない。盗賊が出たらそのまま逃げてくれていい。どうだい?」
銀貨10枚の価値がよくわからないけど、そんなにボラれてない気もするし、このままこの国を出れるならいいかって思ってバイトを受けることにした。」
「それじゃあ、こっちの荷物を頼むぜ。今回仕入れた陶器という食器だ。いくつ空きがあるんだ?」
「えっと、4つで。」
全部空いてるってことになったら、いろいろ不信がられると思ってそう言っておいた。
「そいつはありがたい。じゃあ、この2つと、あとこっちの1つも持ってくれ。それから、護衛に持たせる予定だったこいつもお願いできるか。まあこれでお前さんの価値はとんでもなく上がったからな。お前さんが死なないようにしっかり護衛して貰うとしよう。」
あー死んだらアイテムボックスの中身が出てくるんだったけ。確かに凄い価値なんだろうなきっと。
その後、商談の一員として王都を出て、いくつかの街を進んで行った。入る時に水晶の丸い石に手を置かされた。なんでも盗賊になると石が赤く光るようになっているらしい。
馬車の後ろに乗りながら(と言っても荷物の隙間だからかなり窮屈だし乗り心地は最悪だけど)道中仲良くなった護衛のマルスと言う人に話を聞いてみた。
「そう言えばさ、街に入る時の盗賊検知器ってさ。」
「盗賊検知器?あーステイタスの鏡のことか?あれがどうした。」
「あーそうそう、ステイタスの鏡。あれって盗賊だと赤く光るんだろう?要は人殺しかどうかってこと?」
「そうだな。悪意を持って人を殺せば職業が盗賊になるからな。」
「でも、ほら、殺されそうになって逆に殺しちゃうこともあるんじゃない?」
「勿論そうだ。盗賊狩りの場合など人を殺す。それがどうした?」
「いや、そうした場合、殺した方も盗賊判定されないのかと思って。」
「盗賊は魔物と一緒だ。魔物を殺して悪いことはないだろう。また相手が自分に危害を加えようとしてきた場合は問題ない。自分に対して敵性を持った者を殺しても盗賊になることはない。また正統な決闘の時みたいに精霊に誓いを立てて殺し合った場合を除いて、間違って人を殺した場合には、審判スキルを持った者に裁定して貰うしかない。ただし、審判スキルを持った者は正教会に所属しているからな手続きが大変らしいが。」
「判定は人を殺した場合だけ?例えば強姦や、盗みとかは?」
「ふむ、盗みだけでは付かないんじゃないか。街の中には盗みを働く者もいるし。強姦も同じだな。ただどっちにしても、そういうやつらは兵士に捕まって犯罪奴隷として鉱山送りになるだろうが。」
「なるほどね、完全に悪人をチェックできる訳じゃないんだ。」
「それは当たり前だ。そんなこと精霊様でも出来んよ。まあ正教会のやつはそれができると考えているようだが。」
「あーそう言えば戦争とかの場合はどうなるんだ?国同士本来戦う相手に恨みとかないだろう?」
「それは、国同士が争う前には正式な契約をしているからな。その争いに関わる者もその契約の範囲に含まれる。なんだケンタは妙なことを気にするんだな。」
「妙か?ほらきちんと線引きを認識しておかないと、変なことに巻き込まれていきなり盗賊とかにされてしまったら生活できなくなるじゃないか。」
「は、は、はっ。そんなことを考えていたのか。まず普通に生活していれば大事にはならんよ。それに、仮に盗賊になっても、大きな街以外にはステイタスの鏡はないんだからどこででも暮らしていけるだろう。なんだ都市で暮らしたいのか?」
「いやー別にそうじゃないけどさ。」
とそんな話をしていると、馬車が急に止まった。サッとマルスが飛び降りて護衛仲間の所へ走って行った。俺自身も護衛の人の目に入る位置に移動する。俺のアイテムボックスの中身の貴重性を知っているんだろうけど、俺は常に護衛の人の監視下と言うか最重要護衛対象物になっているようだ。