奴隷購入
「それで今度はどこへ行くの?」
「後は奴隷商と、フランさんのところだけど、先に奴隷商に行ってみる?」
「そうだね、目当ての奴隷がいるかどうかわからないしね。」
最初に向かったのは、シャル達がミミを購入した奴隷商だ。
この世界では奴隷商は社会として認知されていて、国としてもスラム化する様な事がなく借金が出来て犯罪予備軍になりそうな人を管理できるし、奴隷となる人も衣食住を保証されるので望んで奴隷になる人もいるそうだ。
そう言えば王都でも迷宮都市でもスラム街とかみないなー。
社会的に必要なシステム何だろうな、この世界では。
「いらっしゃいませ、今日はどのような奴隷をお探しですか?」
「戦闘奴隷と、家事が出来る奴隷を探してます。彼が奴隷購入初めてなので、一通りこちらにいる奴隷を見せて頂くことはできますか?」
「勿論です。では、先に女性からご覧になりますか?それとも男性から?」
「どちらでも構いません。」
「では近い方で、男性の部屋から。一応入り口の側には近づかないようにお願いします。あと直接お話ししないようにお願いします。気になる奴隷がおりましたら後ほど面談室の方にお連れします。」
そう言われて、一通り案内された。
いろんな種族がいた。
獣人族が多いかな。
その次は人族。
俺はシャルの邪魔しないように一人ひとり眺めるようにして時間を稼ぐ。
シャルから合図があった。
「それじゃあ、女性の方を見せて下さい。」
今度は女性の部屋だ。
これだけ女性が集まるとちょっと壮観だ。
教室でも生徒の前に立ってたけど、女性だけ、しかも割とかわいい獣人族が一杯いるし。
部屋は、種族ごと年齢ごとに分けられてるようだ。
こっちも圧倒的の多いのは獣人族。続いて人族だ。
シャルが獣人族の10代の部屋の前で立ち止まる。
兎族の少女を見ている。
「あの兎族の子?」
「うん、そうだけど、多分あの2人姉妹だと思う。欲しいのは姉の方だけ。」
「えっと、あの兎族の子と話をできますか?」
「承知しました。どちらの子を希望でしょうか。」
「両方一度にできますか?」
「勿論でございます。では連れてまいりますので、先にお部屋でお待ち下さい。」
そう言って、俺とシャルの2人だけ先に面談室って場所に案内された。
部屋で2人になってから、
「それであの子はどういうスキルだったの?」
「剣術スキル。姉の方だけだけど。名前と年から言うと姉妹だと思う。」
その時ノックがして、奴隷商がさっきの姉妹を連れて入ってきた。
2人手を繋いで少し震えている。
「えっと、話してもいいですか?」
「勿論でございます。両人ともご覧の通り兎族でして、借金奴隷です。見ての通り顔立ちや髪の色が似ていますが姉妹でございます。」
「えっとはじめまして。姉妹と言うことだけど、君がお姉さんかな?名前と年を教えてくれる?」
「ミュールと言います。16歳です。」
「妹さんの方は?」
「えっと、ミューリ、14歳。」
「俺達は迷宮都市に住んでいるんだけど、住んでいる家の家事をしてくれる人を探してるんだ。あと迷宮探索してるからね、一緒に迷宮に入ってくれる人を探している。君達にはそういう仕事は可能だろうか?」
「あの旦那様、私は戦ったことはありませんが力はあります。迷宮でポーターとしてお役にたてると思います。また家事もできます。妹も家事は得意です。ただ妹は戦いには向いていません。その代わり私が二倍働きます。私達2人を買って下さい。」
「これ、面談ではそのようなことを言ってはいけないと言っておっただろう。二度目はないよ。お客様申し訳ございません。きちんと指導で来ておりませんで。」
「いえ、それは問題ありません。この子達の値段はいくらですか?」
「これと言って特技がある訳ではありませんが、これだけの器量よしですし。勿論奥様には到底及びませんが、一通りの教育は終わっております。共に金貨25枚は頂かないと。」
俺が返事をする前に、
「そうですか。値段によっては2人一緒にと思っていたんですが。ちょっと予算オーバーですね。姉の方はそれなりに即戦力になりようですけど、妹の方はどうでしょう。それに姉妹別々での販売は販売後のことを考えるとどうなんでしょうね。そちらとしても一緒に売った方が後のトラブルやら返品などの問題を抱えずに済むんじゃないですか?」
「あー思いだしました。奥様以前こちらでご購入頂いた時のお嬢様ですね。あの時の大奥様にも随分勉強させられました。そうですね。駆け引きなしで行きましょう。2人同時購入なら金貨35枚でいかがですか?」
「ケンタいいかな?私はいいと思うけど。」
ああそうなの?問題ないのね。
「解りました。では2人購入します。契約はすぐできますか?」
「勿論です。では少々お待ち下さい。」
「ああ、あと費用は出しますので、2人に服と履物を揃えて下さい。」
「承知しました。ではそちらの費用も込みで金貨35枚でよろしゅうございます。」
その後、血の契約と言うものをやって2人の所有権は俺の者になった。
シャルは俺と結婚してないので今の状態では所有者に入れられないそうだ。
ともかく、2人の兎族の少女を伴って奴隷商を出た。
シャルと打ち合わせをしてまずは日向亭に連れていくことにした。
日向亭に連れて行って、シャルのお母さん達に、ミュールとミューリを引き合わせた。
「と言うことで、この2人を購入してきました。ミュールには冒険者登録をして、俺とシャルと一緒に迷宮に入って貰う予定です。ミューリの方には家事を専門にやって貰う予定です。一通りのことはできると言うことですが、日向亭で料理や家事などを指導して頂けないでしょうか。」
「ケンタには一年分の宿代を先払いしているからね。その分をミューリに使うと言うことなら3食と泊る場所を提供することは可能だよ。うちの宿と食堂を手伝ってくれると言うならその分、給料がかわりに多少のお金も渡すよ。シャルがいなくなって食堂も忙しくなってるからね。人手があることは助かるよ。」
「ミュール、ミューリどうだい?少なくともミュールの方が迷宮探索で戦力になると判断できるぐらいの間は、王都と迷宮都市で離れて暮らすことになるけど我慢できるかい?」
「旦那様、いろいろありがとうございます。離れて暮らすのは心配ですが奥様の実家ですし妹にお仕事を教えて頂くならこれほどありがたいことはありません。」
「わ、私も一生懸命頑張ります。」
「淋しいことなんかないさね。ミューリにはミミと言う先輩兼お姉さんもいるんだしね。ミミ後輩が出来るけど大丈夫だろう?」
「勿論です。ミューリちゃんかわいいし、私、姉妹とかいなかったから嬉しいですよ。」
「ミミは裁縫の才能があるからね。勿論食堂も手伝って貰ってるし、宿の仕事もやって貰ってるから家事仕事は何でもできるよ。ミューリが本当に仕事を覚えて、ケンタやうちの娘の家の家事全般をやりたいならきちんと教え込んでやれるよ。その代わり仕事は大変だよ、頑張れるかい?」
「はい、私、頑張ります。お姉ちゃん、ミューリ頑張るから、ミューリのことは心配しないで。」
「お姉ちゃんもこれで安心だよ。死んだお母さんも安心してくれると思う。お姉ちゃんも頑張るから、ミューリも頑張るんだよ。」
「よしっと、それでは今日からお願いします。ミュールの方は、手続きとかいろいろあるから俺達と一緒に出ようか。あっ、女将さん、ミューリの部屋は。」
「使ってない部屋が一つあるからね。そこを使わせるよ。必要な物はこっちで揃えるから心配いらないよ。」
「じゃあ、お母さん、私が案内するね。」
シャルがそう言って、自分達の部屋のある棟に俺と、ミュール、ミューリを連れていった。
部屋は6畳ほどのシンプルな部屋だ。
タンスと小さなテーブルがあるだけ。
隣はミミの部屋になるらしい。
寝泊まりするのにいい部屋だな。
「よし、じゃあ、今日からここがミューリの部屋になる。ミューリが頑張って仕事を早く覚えたら迷宮都市の家に呼んで一緒に暮らせるようになるからね。これは元気の出る薬だよ。今飲んで。」
そう言って上級魔力ポーションをミューリに飲ませた。
シャルには事前に相談していたので特に何も言わない。
ミュールとミューリは一瞬怪訝そうな顔をしたけど、俺達2人が変なものを飲ませることはないと思っているのか素直に受け取って一気に飲み干した。
ミュールは飲み干すミューリを見て少し緊張したみたいだけど、
「旦那様、特に味もしないですけど、何だか元気になった気がします。何でも覚えられるような感じです。」
鑑定でもしたんだろう、シャルも満足そうにしている。
スキルポイントが3000ポイントぐらいあれば何でも吸収できるだろうな。
「それと、これは今月分のおこずかいだよ。
自分で買いたいものがあるかもしれないからね。」
そう言って大銀貨1枚を渡しておいた。
大銀貨1枚は銀貨10枚分だ。
アイテムボックスの制限があるだろうからね。
ちなみに奴隷の場合個人の所有物と言うのはないそうだ。
そして奴隷が持てる最高額は銀貨50枚までらしい。
借金奴隷などが主人のお金を持ち出して自分勝手に奴隷契約の解除をしないための処理らしい。
ともかく、大銀貨1枚と言うのは奴隷にとっては大金だ。
「こんなにたくさん頂けません。ただでさせ、私達姉妹を一緒に買って頂いた御恩があるのに、こんなにたくさんのお金まで。」
「使わなければそのまま持っておくといいよ。御守りみたいなものだ。いざとなったら馬車に乗って迷宮都市に自分で来れるからね。必要な物は日向亭の女将さんが全部揃えてくれるだろうから自分では使わないかもしれないけど、これから先、俺達の家の家事を全てお願いすることになるからね、お金の使い方も学んで欲しいと思ってる。」
「解りました。では頂いておきます。早く旦那様と奥様のお役にたてるように頑張ります。」
「よしじゃあ、ミューリは女将さんの所に行っといで、お昼の手伝いとかある筈だからね。」
「はい、じゃあ行ってきます。お姉ちゃん。お姉ちゃんも頑張ってね。」
「うん、ミューリも頑張るんだよ。」
ミューリが出ていった後、ミュールにも上級魔力ポーションを飲んで貰った。
ミュールも何か力が湧いてきた感じだと喜んでいた。
確かに回復薬と違って直接的に体力値を回復している訳でないけど、精神的なものが充足される感じあるんだよね魔力ポーション飲むと。
「さて、それじゃあ、俺達も用事を済ませようか。先に、ミュールの方の装備を整えるかな。基本はシャルと同じでいいかな?」
「うんそうだね。身長は私とあんまり変わらない感じだし、体系もあんまり変わらないよね、まあミュールの方は発展途上ということでこれからだけど。」
「ん?発展途上?」
「えっと、旦那様、済みません。奥様のように胸がないので。」
「あーそうだね。でもバランスいいんじゃない?」
「えっ?ケンタない方が好きだったの?」
「そんなことないよ。シャルは全てにおいて俺の真ん中ストライク。完璧だよ。」
「旦那様と、奥様仲がいいんですね。素敵です。」
「まあ結婚してる訳じゃないけどな。シャルは俺の永遠のパートナーだよ。」
「永遠のパートナーって、もうケンタったら。」
「そうなんですか?結婚されて子供を作られるので、私達を買われたんだと思ってました。」
「まあ子供はいずれ作るだろうけど、まずは迷宮探索しながら実力を上げるのが先かな。ミュールにも頑張って貰うよ。」
「はい、精一杯頑張ります。」
「ということで、この辺りでいいかな。ブーツはロングがいいかな?皮のロングドレスもあるけど、こっちの方が日常着るのにいいかもね、どう思う?」
「インナーを付けた後これ一枚で上半身、足首までカバーできるし、ブーツをロングにしておけばいいかもしれないわね。武器は私の最初の双剣でいいんじゃないかな。手の長さは私より少し長いし。頭は迷宮に入る時だけ着ければ違和感ないかな。皮のドレスに、この白いエプロン着けてたら普段着でもいいかもしれないよ。あーそうするとウエストポーチと双剣装備するのに邪魔かなー。」
シャルと違って髪はセミロングで今はポニーテールにしてるし、似合うんじゃないかな。
タイタンの皮で作ってるから、ドレスとしては黒っぽくなってるけど悪くないと思う。
エプロンは前掛けタイプのやつを着けて腰にウエストポーチを着けたらいいん感じななった。
双剣の装着も問題ない。
パット目、戦うメイドさんって感じだ。
俺達も装備を着ける。
俺は一見するとGパンを履いたカジュアルウェアーだ。
ただし両手にガントレットを嵌めている。
ジャイアントクイーンの甲殻から作ったものだ。
同じガントレットをシャルも嵌めてる。
俺達は盾を持たないのでこのスタイルにした。
ちなみにシャルはキュロットのロングスカートだ。
上は服の下からインナーと長袖のシャツにベストを着けてるので一見するとお洒落着をつけてる感じだ。
まあ鑑定持ちの人が俺達の装備を見たら飛び上がるんだろうけどね。
腰に差したミスリルの剣だけでも業ものだし、3人ともS級素材のタイタンの革の装備だ。
まあともかくゴテゴテした装備ではないし黒を基調とした目立たない服装なので3人揃ってギルドに入った時にもあまり注目を浴びなかった。
シャルの先輩の所に行って、ミュールの冒険者登録を申請して、同時に素材も提出してC級のカードを作って貰った。
ある意味チートではあるけど契約違反ではないし問題はないみたいだ。