A級冒険者昇格
一応の検討を繰り返した後、迷宮を出た。
16時ぐらいになっていた。
久しぶりの地上だな。
取り敢えず、ギルド支部に向かうことにした。
換金についてすぐに出すのはやばいだろうってことになって、宿泊できる物件の準備が出来ているかどうか確認するためだ。
「ケンタ様、シャル様、こちらにお越し下さい。」
受付で用件を言って待っていたら呼ばれて奥に通された。
中には支部長と一緒にギルマスも待っていた。
「おお、無事だったか。しばらく2人の姿を見ていないと聞かされたので飛んできたのだが、無事だったのか。」
「えっと、どう言うことでしょう?」
「申し訳ございません。私の早とちりでして。一週間以上素材の買い取りがないですし、宿泊されていた宿にもずっと戻られていないようで、何かあったのではと思いまして、本部に連絡しまして、ギルマスが飛んできたということです。」
「それは御心配をおかけしましたが、冒険者の動向をそこまで心配されたんですか?」
「まあケンタ殿は特別ですからな。それでいままで迷宮探索されておられたので?」
「そうでうすね、戻ってからずっと潜ってました。それで、この場所の遮音は大丈夫ですか?」
「問題ないです。防音設備で遮蔽しています。冒険者ギルドの仕事には内密のことも多いですから。」
「ではまず報告からですが、今回地下15階まで探索が終了しました。」
「へっ?今何と。地下15階とおっしゃられましたか?」
「はい、その通りです。勿論、各階層の探索は完全に終わっていると思います。地図も作製しています。」
「勿論疑っている訳ではないですが、証拠はありますか?」
「その辺りは私の方から。素材と各階層の出現する魔物の情報もありますが。」
「な、確かにシャルさんなら魔物の鑑定は可能でしょうが。」
シャルさんに小声で指示された討伐部位と魔石の一部を、テーブルに置いた。
ギルマスにはそれがどう言ったものであるか理解できたようだ。
全てA級素材だ。
魔石も明らかにB級魔物以上のものだ。
「念のため確認させて貰うが間違いないだろう。しかしたった1週間で15階層まで完全に探索するとは。」
「ケンタさんは、このことをあまり大きく喧伝されることを望んでいません。勿論地図についてもギルドに公開することについては納得されていますが、それによって様々な厄介なことに巻き込まれることを望んでいません。例えば王宮への招聘とか。」
「なるほど、確かにこれだけの偉業だし、マルク王国のみならず、3大国すらケンタ殿の招聘に動くでしょうな。」
「ケンタさんとしてはそう言った諸々のことが防げるなら全てのことをこちらの冒険者ギルドに委任しますし、今回獲得したドロップ品のみならず、これから探索を始める迷宮下層のドロップ品もギルド経由で換金をお願いするつもりだそうです。勿論、さらにいい条件であれば、他国の冒険者ギルドないし商業ギルドに席を移す予定です。ケンタさんとしては迷宮探索がしたいのであって、その他の煩わしいことは避けたいと言うのが一番の希望ですから。」
「ケンタ殿は先ほどから何もおっしゃらないが。」
「俺は全てのことをシャルさんに一任しています。交渉事とかよくわからないですしね。彼女のスキルや知識等を考えればいろいろと好都合でしょうし。」
「なるほど、確かにシャルさんの方が交渉の窓口としてはいいのかもしれませんな。我々の内情もよくわかっていますし。」
「少なくとも、王宮には報告しなくてはなりません。地図の公開については順次公開して頂くのがいいでしょうな。尤も現在、地下7階以降に潜れる冒険者は限られますし。」
「その辺りは、シャルさんが言ったように出現する魔物の情報を合わせて公開することで多少進むのではないでしょうか。少なくとも9階ぐらいまではB級上位であればしっかりした準備とパーティーを組めば十分に攻略可能です。」
「なるほど、確かにそっちの情報の価値は大きいですね。王宮との交渉は私に任せて頂くと言うことでよろしいのですね。」
「問題ありません。こちらの要求を通して頂くなら。」
「了解しました。それでは、まず買い取りの素材ですが、まだありますか?」
「私が確認したところ、A級昇格できるほどには所持しています。」
「それほど。」
ここで、支部長が口を挟む、
「ギルド長、支部にはそれだけの素材を買い取る金貨はありません。ここに出ている素材だけでも白金貨分になります。B級昇格したお二人がA級昇格できるほどの素材となりますと支部の方で今、買い取りは・・・。」
「ケンタ殿、先日約束した迷宮都市での宿ですが、賃貸を考えていましたが買い取りにして頂く訳にはいきませんか?勿論ギルドが買い取った金額と同等です。A級昇格は先に手続きを進めますので、実際の買い取りは、後日本部より代金を準備してきてからと言うことで如何でしょうか。」
「シャルどう思う?」
「物件はどのようなものですか?」
「大通り沿いにある一軒家だ。王宮の貴族の館だったものをギルドが買い取ったものでな。将来ギルドの幹部職員の寮にするつもりだったからものはいい。部屋数も4つあるし利便性もいいと思う。」
「金額は?」
「白金貨1枚」
「入居はすぐできるのですか?」
「勿論。2人に賃貸として提供する予定だったし、最低限の家具は準備している。防犯も万全だ。ギルドの幹部用として準備したものだしな。」
「それを含めてどの程度の素材買い取りをされたいんですか?」
「支部長どれぐらいまで可能だ?当面3日分ほどの回転資金があればいい。」
「そうですね。白金貨4枚程までなら。」
「だそうだか、可能か?」
「問題ありません。ギルド長としてはどの素材がいいですか?」
「一応、手持ちの素材を見せてもらえるか?それによって決めることは可能だろうか?」
「では、部屋をお貸し下さい。手持ちの素材の一覧表を作ります。」
「それはありがたい。」
それから会議室みたいな場所に案内されて、シャルと俺だけでアイテムの整理をしてみた。俺自身何が入っているか解らないからな。
取り敢えず、アイテムボックスの一覧表を書き出して、シャルが仕分けをして行って、シャルも知らない様な素材は現物を出して引き取り対象になりそうな物はそのまま残していった。
凄いアイテム量になった。
まさかここまでとは思ってなかったようだ。
そんな中、水晶の欠片と言うアイテムがあった。
取り出してみると俺の指輪が光る。
シャルに見せるとシャルには見えないそうだ。
転移を意識すると、転移一覧表に。マルク迷宮入口、マルク迷宮15階、冒険者ギルド会議室と出てきた。
これって転移先を指定できるってこと?ただし欠片は2つだけ。
どこに置くかはよく考えないといけないのか。
俺が黙ったので心配そうにシャルが俺を見ている。
「大丈夫だよ。よくわからないアイテムがあったからね。取り敢えず、後で検証してみようか。」
恙無く作業が終わり、ギルマス、支部長、あと多分鑑定持ちのスタッフが入ってきた。
一覧表を見てギルマス、支部長は絶句してた。
手にミスリルのプレートを持っている。
先に準備してくれたようだ。
A級の場合大々的に宣伝するそうだけど、今回のことは内密にするそうだ。
ミスリルプレートも事前にギルマスが準備していたらしい。
遠からずA級に上がることを見越していたらしい。
まさかこんなに早く昇級するとは思ってなかったようだけど。
シャルが鑑定して素材のレア度が鑑定できなかった物は大部分がS級素材扱いみたいだ。そっちの買い取りは今回は見送りになった。
これだけで白金貨の取引になるそうだ。
B級素材を中心に転売しやすい素材を最初に卸すことになった。
特にビッグアントの甲殻はA級素材ながら恐らく即完売するだろうとのことだ。
まずはマルク王宮に売り込む算段らしい。
今回の転売だけで冒険者ギルドがどれ位の利益を得るのか解らないけど、ギルマスと支部長の目の輝きからすれば、白金貨単位の利益なんだろうなきっと。
ともかく、A級昇格に必要な素材以上の物品の販売契約をして、取り敢えず家と支部が支払える分の素材を先に渡して残りは4日後受け渡しすることで全ての処理が終わった。
尤も売っていない素材はたっぷりあるし、今後支部の方に専用の窓口を作ることになった。
窓口担当者は鑑定持ちのスタッフだ。
シャルによればスタッフにも買い取り額に応じて歩合給が入るとのことで、スタッフが俺達に愛想がいいのは、それが影響しているとのことだ。
なんだかんだで時間がかかってしまった。
俺達は教えて貰った通りに大通りを歩き、家に向かった。
大通りに面していると言うのに庭があり、しっかりした塀もある。
二階建てのレンガ造りの家だ。
鍵は魔道具で出来ている。
俺とシャル一個ずつ持つ、ブレスレットタイプになっているので割と便利だ。
ギルマスが薦めてていただけあって、なかなかいい物件だ。
キッチンは数人分が一度に作れるほど広くキッチンだし、ダイニングにリビングもある。
お風呂も十分な広さだ。
トイレは勿論水洗。
窓は強化ガラス何だろうか普通より厚手のガラスだ。
部屋は一階に1つ二階に3つある。
どれも20畳ほどの広々とした間取りだ。
各部屋には大きめのベッドと、テーブル机、タンス、書棚が置かれている。
俺とシャルは別々の部屋に入ることはせず、二階の角部屋。
一番景色がよく明るい部屋を使うことにした。
尚、家では土足厳禁にした。
この世界では部屋の中にも普通に靴を履いてはいるみたいだけど折角なので裸足で生活にした。
その代わりうちに入る前に浄化魔法で家中をピカピカにしたけど。
初めての家で食事の準備をして、お風呂にも入ってリビングのソファーで寛いだ。
「何かバタバタしたねー。」
「でも一度に用事が終わってよかった。王都に行ってギルド長と話をしないといけないかと思ってたし。」
「一度は王都に戻った方がいいかもね。もしかしたらお母さんも心配してるかもよ。わざわざギルマスがこっちに来るぐらいだし。」
「そうかなー。一度戻る?」
「だな。多分明日ギルマスも王都に帰るだろうから、一緒に乗せて貰う?」
「でも一日、ギルド長と一緒の馬車って大変そうだけど。」
「それはそうだな。やっぱり普通どおりに馬車に乗っていくか。」
「うんそれがいいよ。でさ、ケンタが嫌じゃなければ、王都で奴隷商館に行ってみない?迷宮都市よりも人が多いし、スキルホルダーに当たる可能性大きいし。」
「あーそうだね。この先、下層探索の前に、後1人か2人はいた方がいいかな。」
「うん、この家の専属スタッフもいた方がいいかもしれない。どう思う?」
「そうだね、料理か裁縫系のスキルを持ってる人がいるといいね。」
「ごめんね。私が役に立てばいいんだろうけど、あんまり役に立てないし。」
「そんなことないよ。シャルのお陰でスムーズに迷宮探索もできてるし。」
「でも、鑑定スキル、ケンタの言う様にさらに強化出来なさそうだし。スキル値も減らなくなったし。」
「まあそっちはまた考えようよ。今度は剣術関係とか魔法関係とか。」
「うん、王都に言ったらフランに相談してみる。」
「だね。そう言えばフランさんて、スキルホルダーなの?」
「あーその辺りは私からは言えないかな。スキルについては個人の生命線だし。」
「あっ、ごめん、そうだね、直接聞いてみるよ。」
「うん、フランなら大丈夫だと思う。ケンタに心開いてるし。あの子普通は気難しい子なんだよ。」
「そうなんだ。あっ、そう言えばミミさんとかの情報聞いちゃったけどよかったの?」
「ミミ達はうちの奴隷だし、問題ないよ。所有権はお母さんと私になってるし。」