迷宮地下9階、10階
クイーンの間の先には下に降りる通路があった。
無事地下8階の地図は完成したしそのまま地下9階へ進んだ。
この時点で俺はLV24、シャルはLV19になっていた。
B級冒険者のレベルは20が目安らしいし、シャルも十分にレベルアップ出来てるって感じだ。
地下9階に降りながらシャルとおしゃべりしてみる。
シャルも自分がLV19にまでなって超ハイテンションだ。
「レベル上げるんだったら、フィールドで、コブリンとか、ホーンラビット、ボアー辺りを狩りまくったら、安全にレベルアップできるんじゃないの?」
「だめですよ。こういう常識はほんとうにないよね、ケンタは。LVが上がった後、弱い魔物を倒してもLVは上がんないんだよ。まあそれで収益は確保できるから狩って無駄って訳じゃないけど、レベルを上げたいなら迷宮なりに入ってそこそこの魔物と戦わないといけないんですよ。普通、このレベルまでくるのに20年ぐらいかかるんですよ。なのでB級冒険者っていったら最低でも30歳以上だし、C級でも20台後半なんですよ。10歳代でこのレベルって普通はあり得ません。」
「そうなの?でもシャルはサクサク上がってるようだけど。」
「それはケンタと一緒に迷宮の中層で戦ってるし、多分ラストアタックを貰ってるからその分レベルに反映されてるんだと思う。」
「そうなんだ。まあシャルが強くなってくれれば俺も安全になるしね。一緒に頑張ろう。」
「でもケンタの魔法って何であんなに強力なの?光魔法だけじゃなくて、風魔法を使えるんだね、もうびっくりだよ。」
「だよなー。自分でもびっくり。こんなに効果があるとは思わなかったよ。」
「はー本当にどこまで規格外なんだか。」
地下9階は上層と同じような洞窟みたいな場所だ。
ただし全体的に通路全体が光っていて割と見通しはいい。
俺は探知を働かせながら探索を続け、脇道がなく魔物が寄ってきても迎撃しやすい行き止まりの小部屋みたいな場所に岩のコテージを設置することにした。
排水の方は先に床を土魔法で掘り下げてるし大丈夫みたいだ。
この水ってどうなるんだろう?迷宮が吸収してるのかな?
ともかく、天井との空間は土魔法で完全に塞いで通路の入り口も土魔法で塞いだ上で結界を張ってるから問題ないでしょう、多分。
一応この階には、火魔法を持っているダークバッドというコウモリみたいな魔物がいるみたいだし穴は塞いでいた方がよさそうだ。
完全に入り口をふさいでるけど、これだけの空間だし数日分ぐらいの空気はあるだろう。
「この部屋にも慣れちゃったね。中に入ると安心感があるよ。」
「まあね。一応安全対策はしてるし問題ないと思うけどね。この階は割と小型の魔物も出るみたいだし、入口は完全に塞いでるよ。結界も張ってるしね。」
「魔物が小型になると一度にエンカウントする魔物の数が多くなりそうだよね。うん、それはそうだな。2人で捌けないようになったらシャルが言う様にパーティーメンバー増やすのも考えないといけないかもな。」
「ここからだと地上まで最短コースでどのくらいかかるかな?」
「どうだろうな。途中あのクイーンとかビッグアントの集団とエンカウントするようなら半日はかかりそうだけどね。サクサク進めば5時間ってとことかな。」
「迷宮の下層を目指すとして、1日で行き来できる場所に何ヶ所か拠点とか作った方がよくないかな?その方が目安にもなるし。」
「今で9階か。切りのいいところで10階の探索が終わったら一度地上に戻る?」
「それでもいいんだけど、これも伝説と言うかお伽噺の話なんだけど、中層と上層の間には一度だけ現れるボスモンスターがいて、それを倒すと特殊なアイテムを貰って、いつでもその場所に戻れるらしいんだよね。一応、正教会が持っている秘宝らしいんだけど。過去に踏破したS級冒険者の遺物ね。まあそれを使っても誰も転移なんてできないからある意味眉唾なんだけど、それでも正教会が秘宝認定しているものだし。」
「なるほど、転移系のアイテムがあるんだ。」
「何?ケンタこの話信じるの?」
「だって、転移アイテムはある意味定番なんじゃないの?」
「一瞬でその場所に行けるんだよ。非現実的じゃない?」
「それ言ったら、魔法とかアイテムボックスとか非現実的なんだけど。」
「何言ってるの?そんなの当たり前のことじゃない。転移だよ、転移。超ありえなくない?」
「まあじゃあ、取り敢えず、地下15階を目指してみるか。ってここ以外にも迷宮はたくさんあるんだろう?他の迷宮とかで中層越えた迷宮ないの?」
「ある訳ないよ。この迷宮でも地下7階の一部が探索できたのは、たまたまA級冒険者のパーティーが潜ったからで、それ以降、全然進んでないんだよ。多分、地下6階もあんまり入ってないと思うよ。」
「そうなんだ。まあそれはどうでもいいけど。じゃあ拠点作りは地下10階辺りに固定の場所を作るようにする?それとも今後のことを考えたらセーフティーゾーンとして各階に拠点を作ってれば人も入りやすいのかな?」
「そこまですると、悪い人の拠点になると思うよ。迷宮内では悪いことし放題の無法地帯だし。」
「なるほど、確かにそうなる可能性が高いね。となると、俺達の場所をキープすればいいのか。」
「ケンタの場合には、各階にこの岩のコテージを設置できる場所をキープしとけばいいんじゃないかな。排水とかそういう部分を処理しといてコテージを出せばすぐに拠点が出来るみたいな。」
「じゃあこれまで地下7,8,9階で確保してきた場所をキープする感じで、これから先もそれを気にしながら探索を進めるって感じで。」
「うん、そうだね。まずは地下15階か。随分先に感じるけど。」
「まあ一週間はかかるだろうからね、地図を作りながらだと。」
「多分、この地図の情報だけでも冒険者ギルドは相当な金額を積むと思うよ。確かこの大陸で最古の迷宮以外で探索で来てるのって帝国領にある迷宮の地下10階までだったし。もし明日地下10階に到達出来たら、マルク国王から呼び出しがあるかもしれないよ。一気にこの迷宮の知名度が上がるし、王国連合の中では一番深い階層まで入れる迷宮になるしね。」
「やっぱりそう言うのは重要な要件なの?」
「それはそうだよ。地図があって出現する魔物の情報があれば探索が楽だし、それに向けて事前の準備して潜れば、確実に素材回収できるしね。迷宮に入る人が増えれば入場料も増えるし、その分持ちかえる素材が増えることになる。迷宮を管理している王宮にとっても無視できない事柄だと思うよ。」
「あんまり目立ちなくないなぁ。」
「その辺りは間に冒険者ギルドに入って貰って交渉して貰えばいいんじゃないかな。冒険者ギルドも素材をギルド経由で卸してくれるなら何もせずに大きな利益が入る訳だし。」
「なるほどねー。もしそうなったら交渉の方はシャルにお願いするよ。」
「私でいいの?多分、考えられないぐらいの利益が手に入ることになるよ。このまま下に進めば間違いなくA級冒険者。下層に入るならもしかしたらS級って話も出てくるかもしれないけど。」
「S級って、竜退治しないといけないんでしょう?そう言うのはパスしたいなー。」
「もう、そんなこと言って。竜を倒したら英雄に慣れるんだよ。」
「うーんそう言うのはパスの方向で。」
「まあいいわ。ケンタはどう言う訳か目立ちたくないみたいだしね。」
その日から順調に探索は進んだ。
地下10階は灼熱の洞窟だった、火トカゲや、マグマゴーレムという火属性の魔物が出てきた。
採掘スキルが上がったのか、ある場所を掘り進めるとアダマンタイト鉱石を掘り当てた。シャルが卒倒しかけて、この情報は地図にも載せず完全に2人の秘密にした。
このことが分かったら帝国をはじめ大国がこの迷宮の所有権を巡ってマルク王国と戦争をしてくる可能性があるそうだ。
それくらいアダマンタイトと言うのは超レアな鉱物らしい。
この鉱物をかなりの量掘り当てたことは黙ってることにした。
握りこぶし大の大きさを見せただけで、この騒ぎ様だ。
その何倍も見つけたとか知ったら大変だろうな。
ちなみに、この鉱石を掘る時には鉄鋼製のツルハシでは当然刃が立たない。
周囲の岩ごとアイテムボックスに入れたら自動解体してくれた。
アイテムボックスも進化してるんじゃないかな。
その内ボックス内で精製とかやってくれたりして。
ともかく、掘り進んだ場所はこの階層にしては暑くもなく過ごしやすいのでこの階の拠点場所にした。
地下10階は探索の範囲が狭かったし、下に続く通路も見つかったので残りは俺の探知で地図を完成させて地下11階へと進んだ。