ビッグキラーアント
夕食後一緒にお風呂に入りながら、シャルにもう一度俺の鑑定をして貰って、スキルがないことを確認して貰った上で、シャルに話すことにした。
「じつはね、シャル。見て貰ったように俺にはスキルはないんだけど、どうも魔法が使えるようなんだ。」
「そうなんだ。でも魔法師じゃなくても簡単な魔法を使える人いるよ。まあかなり限定的な魔法だけど。例えば火魔法でも薪に火をつける程度とか、水魔法でもコップ一杯ほどの水を出せる程度とかね。いずれにせよ、スキルホルダーの持つ魔法にはかなわないけど。」
「そうなんだ。スキルに現れなくても魔法を使えるのは普通にあるんだ。」
「普通じゃないけど、偶にいるって程度。ケンタ最近悩んでいる感じだったけど、そのことを悩んでたの?」
「まあそれも一部あると言うか。」
「スキルホルダーじゃなくてもケンタはケンタだよ。むしろスキルホルダーより多才だし。」
「そうか、まあそれならよかった。そうだ、じゃあ洗濯は俺がやるからね。光魔法の浄化が出来るみたいだし。」
「浄化魔法がつかえるの?それってかなり凄いけど、確か中級光魔法だったんじゃないかなぁ。それでスキルなしで使えるとか、どんだけ規格外なの。」
「そうか、それはそれで規格外なんだね。」
「もしかしてこのお風呂も浄化魔法?」
「うん、浄化魔法。試しに使ってみた。」
その後、部屋に戻って浄化を掛けまくってみた。服も部屋も、ついでに身体にも掛けてみた。お風呂上がりだけど髪がサラサラになった感じだし、肌も艶々した感じ。
「ねえ、もしかして結界とかも張れたりする?」
「結界?」
「うん、光魔法師の中には魔物が入れないようんする結界を張れる人がいるらしいんだよ。マルク王国にはいないけど、正教会教皇国とか、帝国とかにいるって話。」
「うーん、どうやるんだろう?覆う感じ?部屋全体を浄化エネルギーで覆う感じか?半透明のお椀を被せる感じだな。うん出来てる。魔力感知でこの部屋を中心に周囲と切り離されてる感じ。」
「マジで。今できるようになったの?」
「多分、スキル値の関係じゃないかな?確認してみてさっきと比べて減ってない?」
「あー確かに、スキル値が200ぐらい減ってる。」
「多分、新しいスキルというか能力を習得する時にはそれに応じたスキル値を消費するんだよ。一旦獲得したスキルを発動する時には周りにある魔素を利用して発動している感じだろうね。発動のたびにスキル値の減少はなさそうだし。」
「ケンタって、スキルはないけど能力を習得する才能は高いんだね、きっと。」
「魔法の種類とか学ぶのはどうすればいいんだろう?」
「えっ?図書館とかに行けば基本的なことは学べると思うけど、でも魔法に関してはフランに聞いた方が早いかも。あの子そっち方面では知識が豊富だし、いろんな情報をもってると思うよ。」
「そっか、フランさんね。王都に戻ったら聞いてみようかな。」
翌日は、コテージとお風呂を収納した後、探索に出ることにした。
と言うのも、結界魔法が使えるなら別にこの場所にこだわる必要がないんじゃないかってことになったからだ。
確かにその通りだな。
戻るのにも無駄に時間がかかるし。
森の中では何度か魔物にエンカウントしたけど、問題なし。
風魔法の使用を解禁したので遠距離攻撃が出来るようになったからだ。
最初いきなり魔物の手足が切り落とされて時にはシャルもびっくりしてたけどすぐに理解してくれたらしい。
あっさり岩の裂け目に到着。
中に入ると上に繋がっているようだ、内部が立体的な通路になっていたので外から感知がやりにくかったようだ。
アリの巣みたいな通路を進む。
アリの巣みたいじゃなくてアリの巣でした。
ビッグキラーアントが集団でいる。
中には剣を装備している奴もいる。
魔物が剣ってどうなってるんだ?
さらに観察を続けるとメイジアントという魔法を使える奴もいるみたいだ。
「シャルこの魔物の情報はある?」
「キラーアントはフィールドで出現する魔物だけど、この魔物は初めて。キラーアントも集団で行動してキラーアントクイーンが群れの長でクイーンを倒せば巣自体の討伐は完了。でも素の討伐はレイド級クエストだから、ギルドと騎士団が一緒になって処理しないと達成できない様なクエストだよ。」
「こいつらは、集団と言っても一緒にいるのは精々5体程度だし、なんとかなるんじゃない?」
「まあケンタの風魔法が不可視だからそれを使えば奇襲攻撃的に行けるとは思うけど。」
「一応、周辺の感知で随分この中の状況は確認できてるし、相手が隠蔽とか特殊なスキルを持っているんじゃなければ敵の位置も把握できてる。LVは20前後なんだよね?取り敢えず、後ろから挟み撃ちされないように討伐して行く場所を検討しながら進んでみない?」
「恐らく、ここを進まないと下に進めないようだし。ケンタに任せるよ。」
「了解、なるべく音をたてないように進もう。まずは目の前のあの3体を処分。声を出せないように首を狙っていくね。」
それから先は、索敵して隠れて近づき奇襲するってことを繰り返し、巣穴の端から順次討伐を進めていった。
ビッグキラーアントの甲殻って言うアイテムがどんどんたまっていく。
魔石もシャルによれば最低でもB級ランクの魔石らしい。
何本かの別れ道を探索して潰した後、いよいよ本丸と思われる通路を進む。
他より幅が広いし、先にいる魔物の数が結構ある。
前の部屋から出てきそうもないし、ここまでの戦いでこいつらの攻撃パターンも読めてる。先にメイジアント3体を処分した後、一気にのこりのソードアントを処分する。
ソードアント20体俺達2人の戦いだ。
先に倒したメイジアントの死体を回収するために俺が飛び出す。
3体のアントのうち1体は火魔法を持っていた。
ここまで土魔法と水魔法しか持ってなかったけどこいつのスキルはぜひ欲しい。
俺が全力で突っ込んで行くと少し遅れてシャルも突っ込んで行く。
跳躍し無事メイジアントの死体を確保、その前に風魔法を放っているのですでに4体は死亡、2体は腕を切られてもがいている。
俺は戦いながら死体回収、シャルは双剣で無双。
あっという間に討伐完了だ。
20体相手に2分かかってないんじゃないかな。
そこから延びる先に、最後の大物クイーンがいる。
鑑定の結果3属性の魔法スキル持ちだ。
生命値は500。レベルは22。
やつは部屋からは出てこないようだ。この階層の守護者って感じなのかな。
毎回こいつと戦うとか大変そうだけどね。
まあ結果は圧勝だった。
魔法は使うけど、余裕で回避できるし身体はでかいけど魔力を通したミスリル剣で余裕でダメージか通る。
一瞬のすきを突いて首を一閃。
そのままアイテムボックスに収納した。
そう言えばこのアリの巣の中にはあちこちに宝箱があった。
中には武器やら、ポーション等があった。
初級魔力ポーションもあったけどなんだかな。
武器は鉄鋼剣。
何だかなって感じだ。
クイーンから得られたアイテムは名前から言ってもかなりレア度の高いものみたいだ。
シャルが知らないってことはそれだけレア度が高いってことなんだろうな。
何に使うのかわからないけど持っておけばその内役に立つこともあるだろうな。