鑑定スキルレベルアップ
「おはよう、ケンタ。」
「おはよう、起きてたの?起こしてくれればよかったのに。」
「うん、私も今起きたところだよ。」
「よしじゃあ、起きて準備しようか。」
「あっ、そう言えば洗濯をどうする?今夜から夜洗って干しておくようにする?」
「そうだな。着替えは十分に持ってるけど、ここなら洗濯もできそうだね。簡易キッチンの流しを使う?」
「うん、シャワーで洗うよりいいかも。」
「了解。今日戻ってから改良しようか。配置とかも考えた方がいいかな。」
「どこまで改造する気?簡単でいいよ。」
その後簡単に朝食を取って、一応物品は全てアイテムボックスに戻しておくことにした。多分ここに戻って来るだろうけど、一応念のため。入り口は岩を置いて隠しておいた。
「じゃあ、今日は地図にない部分から行ってみよう。」
「了解。」
そう言いながらすでに俺の頭の中にはその先の景色が広がっている。
空間感知と魔力操作のコンポ、マジでやばい。
空中から哨戒している様な、頭の中に3Dマップがある様なそんな感じ。
なので不意打ちに会うことはない。
・・・多分。
この両方から隠蔽出来る様なスキルを持ってれば別だけど、少なくとも魔物も一つしかスキルを持ってないみたいだ。
というか魔物は100%スキルをもっているんだけどね。
なんでこの世界の人はスキルを持ってない人が多いんだろう?
一時間ほど進んで地下7階の西側がほとんど埋まった頃に前方に巨大な魔力を持った魔物の反応。
この感じは経験したことがないから、多分オーガかもしれない。
「前方500m位先、多分、オーガだと思う。大きな魔物の反応がある。」
「了解。視認出来たらすぐに鑑定するね。」
「よろしく。オーガなら、俺が頭部と首を狙うから、シャルは心臓狙いでよろしく。」
300m程の距離になった時に前方の岩陰から巨人が姿を現した。
「オーガ、LV20、光魔法、剛力」
「えっ?2つスキルを持ってるの?」
「魔物にはたまにダブルスキルの個体がいるみたい。高レベルのモンスターのみだけど。このオーガかなりハイレベルだけどどうするの?」
「勿論撃破だよ。攻撃はさっきの分担で。」
そう言って俺が駆けだしていく。
シャルも獣人族なので身体能力は高いけど、まだ俺の方が高い。
まあスキルを発動してるからだけどね。
オーガの目の前から一気に跳躍してオーガの背後に着地してまずは頭に一撃。
通らない。
頭に浅い傷をつけるだけだ。
俺の動きに合わせてオーガが手を振り上げてきて注意がそれる。
シャルが上手く死角に入りわき腹から心臓をめがけて十字閃。
俺はその間に首筋を狙い何撃も放つ。
シャルは、二刀流で防御なし。
全て攻撃を華麗に避ける。
オーガは、小さな傷は時間とともに塞がるようだ。
オーガの持つ光魔法の効果か?
ミスリル剣に剛力を乗せるようにして魔力を流す。
ミスリル剣が蒼い光を放ちそのまま一閃。
スパーンと音がする様にして頭と胴体が分かれる。
そのまま胴体を回収して頭も素早く回収。
アナウンスが流れて解体完了、凄い数のアイテムがとれてるけど。
それよりもステイタスを確認すると無事光魔法があった。
おー合成メニューに上級回復ポーションと。
念のため作ってみると上級回復ポーションがちゃんとできてる。
ついでに、上級魔力ポーションも作成っと。
上級魔力ポーションを取り出して、シャルに鑑定して貰う。
ついでに上級回復ポーションも鑑定をお願いした。
「これって?上級魔力ポーションってどういうこと?今のオーガからドロップされたの?聞いたことないけど、魔物からポーション系がドロップされるとか。こっちは上級回復ポーションだけど、これはギルドで買ったやつだよね?」
「ポーションは今出てきたやつじゃないよ。それよりそれってどのくらいの価値だと思う?」
「中級で金貨70枚だから、白金貨何枚の世界だよね。これ一本で王都に邸宅が建つよ。」
「ほむ。その分効果も高いんだろうね。」
「単純に10倍とかじゃないんだろうけど、それなりには凄い効果があると思うよ。」
「飲んでみる?」
「冗談だよね?」
「マジ」
「無理無理。中級魔力ポーション受け入れるのでも一杯一杯なのに。」
「だよね。まあこれは置いといて、まずは一息つこうか。のど乾かない?」
そう言って、中級魔力ポーションの水筒を渡してあげた。
のどが渇いてたのかごくごく飲んでる。
まあ中級魔力ポーションで5本分は飲んだね。
よかった。
そのまま受け取って俺も飲んだ。
少し頬を染めてるけど、今さら間接キスぐらいで・・・って本当に照れてるのね。
「さて、さっきのオーガからは魔石とオーガの角、オーガの皮が手に入ったよ。」
「うん、ケンタの非常識さには今さらだけど、それ全部A級素材だからね。オーガは素材の宝庫ではあるんだけど、普通はオーガの爪かオーガの牙を取るだけで一杯一杯だよ。フィールドで出現することもあるけど、その場合でもオーガの皮については中々回収が難しいと言うか皮剥ぎにミスリル以上のナイフを使わないとダメだし、角はアダマント製の剣かナイフじゃないと取り出せないから。普通は素材を諦めるんだけどね。」
「まあなにはともあれいろいろ素材が手に入ってよかった。」
オーガの肉とかオーガの肝臓とか、オーガの精巣とか、ふむふむ言わない方がいいか。
その後この階層でまだ地図が埋まってない北方面に向かって歩いている時に、
「ねえ、ケンタ、鑑定が変。」
「ん?どう変なの?」
「生命値と言うのと、スキル値と言うのが見える。」
「具体的にはどんな感じ?」
「えっとね、
名前 ケンタ・アマミヤ
年齢 22歳
職業 B級冒険者
LV 21
生命値 250
スキル値 2660
スキル なし
名前 シャル
年齢 17歳
職業 B級冒険者
LV 14
生命値 140
スキル値 620
スキル 鑑定
「あれ?シャルって苗字ないの?」
「えっ?そこ?平民だから苗字なんてないよ。ケンタはちょっと変わってるけど苗字だよね?普通、間に、「フォン」か「ド」がついてるんだけど。それよりこれってどういうこと?生命値とスキル値って何?」
「うん、もう一度、俺を鑑定してみて。」
俺は中級回復ポーションと中級魔力ポーションを飲んで、シャルにお願いしてみた。
「えっと、生命値が350、スキル値が2860に変わったよ。」
「じゃあ今度は?」
今度は初級回復ポーションと中級魔力ポーションを飲んで見て貰った。
「えっと、生命値は同じ350、スキル値は3060」
最後にもう一度、今度はシャルはこれを飲んで自分も鑑定してみて。
俺は上級魔力ポーションを、シャルには初級回復ポーションを飲んだ後鑑定して貰った。
「えっと、ケンタが、生命値は同じ350、スキル値6060。私が生命値150、スキル値620」
「なるほどなー。そういう仕組みか。」
「何?何仕組みって?何か怖いよ。」
「いや、怖くないよ。ありがとう、シャル。お陰でいろんなことが判明した。この辺り魔物の気配がないからちょっと休憩しながら話そうか。」
そう言って、露天で買った果実水を出して適当な岩に並んで腰かけて話をした。
「まず、生命値と言うのはね。何と言うのかな、身体の持っている体力量っていうのかな、例えば魔物にダメージ受けた時に、この生命値が0になると死亡するって感じかな。そしてこの生命値を回復するのが、回復薬という薬品だと思う。勿論、食事をしたり、寝たりしたら疲れがとれるでしょう?多少の病気なら病気も治る。つまり自然に元に戻る値だと思う。さらに、この生命値はLVによって増えるんだと思う。どのような割合で増えるのかは不明だけど、例えば、俺の場合LV21で生命値が350が上限。シャルの場合にはLV14で生命値が150が上限。今後レベルが上がるとこの辺りが上がっていくと思う。高LVが魔物に強い、多少のダメージを受けても死なないのはこの生命値が高いからだと思う。
回復薬については、初級回復薬で、多分生命値10以上、中級では生命値100以上回復するようだね。正確にどの程度回復するのかは、今後検証する必要がある。ここまでは理解出来た?」
「うん、よくわかった。ケンタ教えるの上手だね。」
「まあ本職だけど、それは置いといて、次にスキル値。俺はこれが魔力値という項目だと思ってたけど、ともかく、これはそうだな、スキルを強化するためのポイントと考えたらいいかな。」
「スキルを強化する?」
「そう。つまり例えば、シャルには鑑定というスキルがあるでしょう?この鑑定を強化することで、今シャルが見えているように、これまで見れなかった情報まで見れるようになったってこと。で、この強化をするためにはスキル値というポイントを消費しなくてはならないんだけど、多分このスキル値と言うのは、ご飯を食べたり寝たりして回復する生命値のように自然回復しないんだと思う。つまり生まれつき持っていたポイントを使ってしまうと増やせない、だから普通の人はスキルの強化と言うのは特別の人しかできないってことだと思う。」
「じゃあ、ケンタが飲ませてくれた中級魔力ポーションって言うのがこのスキル値を増やしたってこと?」
「その通り、さっき実験した結果、中級魔力ポーションでスキル値200、上級魔力ポーションでスキル値3000が増えることが分かった。」
「ってさっきの、上級魔力ポーションを飲んだってこと?」
「うんそう。それはいいんだよ。で俺が何でスキル値を増やしてるかと言えば、スキルの項目に出てこないけど、スキルを持っているのと同じ効果を、能力を鍛えることができるんだよ。俺だけじゃなくて、世の中の人全員。だからスキルを持ってなくても料理が上手な人や、調合が出来る人、剣術や、体術、感知能力を発揮できる人がいるんだと思う。」
「じゃあ、ケンタがいろいろ出来るのは、そうやって鍛えてるってこと?」
「まあそう言うこと。俺もこんな仕組みになってるとは思ってなかったけどね。シャルのお陰でいろんなことがわかったよ。」
「確かに、普通の人は魔力ポーションとか縁がないし、生まれつき持っていたスキル値を使いきってしまえば新しいスキルとか自分の持ってるスキルを鍛えることはできないからね。なるほど、理解できたよ。」
「まあ尤も、何事にも向き不向きがあるし、練習したからって欲しいスキルが手に入る訳じゃないんだろうけど、それでも、例えばシャルとかは料理と裁縫とか意識したら上達するんじゃないかな。」
「そうかな、そうだといいな。って何でそんなこと知ってるの?」
「え?シャルのお母さんが言ってたよ。宿の内装ほとんどシャルが作ってるんだろう?カーテンとかシーツとか。料理も上手だって聞いたよ。いい嫁になるって言ってた。」
「えーケンタさんにそう言ってたの?もうお母さんたら。」
「まあともかく、シャルの場合には、もうしばらく鑑定の強化をして欲しいかな。俺の推察が正しければ、もう一段進化すると思う、シャルのスキル。」
「そうなんだ。私、頑張るよ。最初はちょっとびっくりしたけど、考えてみたら凄い能力だよね。魔物の生命値が解るし、ケンタや私の生命値を数字で見れるから回復薬を使うタイミングも解りやすいし。」
「そうだね。これって冒険者として凄い能力なんだよ。」
「もしかして、最初から解ってたの?私の鑑定スキルがこう言う使い方ができるって。」
「まあ、そうだね。魔物と戦っている時に一番欲しい情報だからね。シャルが冒険者になりたいって話を聞いた時は何とかパーティーを組めたらいいなぁって思ってたよ。」
「そっか。同情とか、お荷物じゃなかったんだね。よかった、私でも役に立てるんだ。」
「勿論、なのでこれからもよろしく。」
「うん、益々頑張るよ、私。」