迷宮地下6階攻略
地下6階は、それまでの洞窟っぽい雰囲気から一変して、
岩がごつごつした山岳地帯って感じだ。
魔力感知と探索感知を最大限に広げて進む。
この層までは割と詳細なマップがある。
本来高価な商品らしいけど、冒険者ギルド職員の権限なのか
上層部の判断なのかともかく地下7階までの地図を貰ってきている。
道に迷うことはないけどどうせなら採掘も経験してみたいし、
ゆっくり回ってみることにした。
と言っても全体で10キロ四方もある広大な面積だし、
本当に探索しようとしたらそれこそ大変だな。
進むこと5分。最初の反応があった岩トカゲという擬態を得意とする魔物だ。
シャルさんに鑑定して貰うと、LVは11、隠密スキルがあるそうだ。
それで探知の方にはかからないのか。
魔力感知でかろうじて擬態している場所がわかる。
シャルさんも俺に指摘されて鑑定するまでは
そこに魔物が張り付いているとは思わなかったようだ。
「恐らく外殻はかなりの硬度があると思います、狙い目は関節部分、もしくは腹の部分だと思います。俺が蹴り上げて腹を晒しますから、シャルさんがまず一撃を加えてみて下さい。」
俺は、それだけ言うと、両手にミスリルの剣とナイフを持って跳躍し、
魔物が張り付いている胴体の部分を掬い上げるように蹴り上げ、
同時に尻尾の継ぎ目に一撃を加えた。
特に抵抗なく切断。
後ろから走ってきたシャルさんが無防備になった腹の心臓部分に双剣で十字閃。
グエーとか泣き声を出して背中から落下したところに、
俺が上から心臓部分にミスリル剣を突き立てた。
少しバタバタしてたけどすぐに動きが止まった。
そのまま収納すると。
鉄鋼石と岩トカゲの目玉、あと、魔石が分離された。
「岩トカゲの目玉って回収できましたけど、討伐部位ですよね?」
「岩トカゲは魔石の方が討伐部位。目玉はレアドロップ品ですよ。確か調合の素材だったと思います。」
「そうなんですね。了解です。取り敢えずこの階でも何とかなりそうですね。どうしますか?」
「私の方は問題ないですよ。ケンタさんと一緒ならどこででもOKです。尤も岩トカゲをあんな風に攻略してるのは私たちだけだと思いますけど。足痛くないんですか?岩トカゲの外殻かなり硬度があるんですよね。それを蹴り上げるとか。竜人族並ですね。」
「多分、大丈夫みたいですよ。防具がいいんでしょうねー。」
その後進むと、アースゴーレムも出てきた、体長3メートルぐらいある巨人だ。
まあ俺とシャルさんの跳躍力をもってすれば問題ないけど。
散々攻撃して、何とか首を一閃して屠れた。
ミスリルナイフは通るけどあの手の動きが邪魔だな。
攻略方法を考えないといけないかも。
ワイルドウルフの群れも出てきた。
8頭の集団だ。
集団戦は初めてだったけど、囲まれそうになったら跳躍で囲いから逃げ
一匹ずつ数を減らしていった。
こっちも戦略的にはいろいろ検討の余地はあるかな。
1時間ほど進んだ先に、魔力感知で強い魔力を感じる部分を見つけた。
ツルハシでしばらく採掘して、掘りだした塊を鑑定して貰ったら、ミスリル鉱石だった。純度とかは解らないけど、これでシャルさんにもミスリルの剣を作ってやることができそうだ。
取り敢えず、この辺りで魔力反応が強く出ている部分を全部採掘してどんどん収納して行った。
流石に収納量が多いことがばれただろうな。何も言わないけど。
取り敢えず、ミスリル鉱石、銀鉱石をそれなりに採掘した後、地上に戻ることにした。
ここから最短コースで帰っても、1時間半ほどかかるんだよね、地上まで。
「じゃあ、今日ここまでで帰りましょうか。」
「今15時ぐらいですか?」
「ですね。15時を少し回ったところです。もう少し狩りませんか?」
「帰り、最短コースでも1時間半かかりますよ。途中戦闘があれば多分2時間はかかると思います。帰りながら狩りをしていくってことでどうでしょう?」
「ですね。初日ですし。済みません。自分が戦えると思って。」
「ですよねー。まあシャルさんと一緒だからですけどね。シャルさんが鑑定で情報をくれるので攻略しやすいですよ。」
「あんまり役に立ってない様な。でも頑張ります。」
俺達は、帰りながらも話をできるぐらい余裕があった。
俺自身の感知能力の精度が上がったと言うこともあるけど、
シャルさんも結構感覚が鋭くなってきたようだ。
俺達二人でいて不意打ちを受けることはなさそうだ。
「そう言えば、迷宮都市で知り合いの鍛冶師さんとかいないですか?」
「鍛冶師ですか?いないですね。鍛冶師に限らず、迷宮都市に知り合いとかいないですし。武器の手入れですか?」
「いえ、折角ミスリル鉱石が手に入ったので、シャルさんの武器を作って貰おうかと思いまして。」
「えっ?私のですか?ミスリル製の武器とか贅沢ですよ。最低でも金貨数枚はしますよ。」
「でも、武器はいい物を使った方がいいと思います。どの道今の武器にそんなに馴染んでないですし、長く持てる武器を持った方がよくないですか?」
「それは欲しいですけど。普通、贅沢ですし。私、ケンタさんに一生かかっても返しきれないぐらいの借金を抱えてます。」
「そんなのないですよ。気にしないで下さい。一緒に戦って頂く仲間ですし、シャルさんの攻撃力が上がれば、俺自身の安全性も高くなる訳ですし。」
地下5階以降の魔物はほとんど片手間作業だ。
会話を続けながらもサクサク屠って、サクサク回収して行く。
この辺りまで来ると他の冒険者の感知も反応があるけど、
そこは無視してどんどん地上に向かう。
早歩き状態だ。
「早く地上に戻れるようですし、夕食の食堂を探しながら鍛冶屋探ししませんか?鑑定で武器の性能を見て貰ったら、大体の鍛冶師の腕前が解らないですかね。」
「了解です。いろいろありがとうございます。御恩は生涯をかけてお返しします。」
「そんないいですよ、本当に。」
地上3階からはほとんど蹂躙状態で進めるから、試しに走りながら進んでみた。
自分達の体力と言うか身体能力を確認する意味でも。まあともかく問題ないようだ。地図なしでどんどん道を進めるし。
「そう言えば、今後のことですけど、迷宮内の深部に進むなら、迷宮内での野営とか視野に入れないとまずそうですね。」
「ええ、私もまさか中層まで進めると思ってなかったのでその辺りの準備と情報は仕入れてませんでした。明日、ギルドに行った時に聞いてみます。あっ、帰りにギルドで聞いてきます。鍛冶師の情報も聞けると思います。」
「そうですよね。そっちからの情報の方が正確だし広域ですね。お願いします。」