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競売の行方は……。

 俺が起業に必要な書類を法務局へ提出して今日で丁度一週間。


 受理された時の話では調査やら事務処理など、起業届けが正式に承認されたかの結果が出るまで一週間と言っていたため、今日には結果が見られる筈だ。


 登記簿が確認できる機械に俺が起業に使用した会社の名前があるかを確認するため、液晶タッチパネルに会社名を打ち込んでいく。


 一文字一文字打ち込む度に無数にあった会社名が減っていき、最後に残った会社の名前は『スピリットワールド社』。


 間違いなく俺の会社だ。良かった無事に起業することが出来たらしい。


 今日のイベントはこれだけではない。むしろ本日のメインイベントと言っても過言ではない。


 そう、例の異世界への直行エレベーターがあるあのお屋敷の競売の結果が出る開札期日、競売の参加者の入札金額が記入された札を開いて落札者を決める日だ。


 結果は電話で問い合わせることも出来るらしいが、俺はあえて会場となっている指定の家庭裁判所へやって来た。


 出来れば後学のために一度は会場の空気を味わってみたいじゃないか。


 そんな中やって来た家庭裁判所の中は既に入札参加者が会場入りしており、特に署名や身分証明書などを求められることもなく、俺はすんなり会場へ入ることができた。


 会場への出入りは自由とのことなので、少し緊張していた俺としてはとても拍子抜けだった。


 会場となる部屋には長椅子が数列並べられていて、長椅子には不動産業の業者さんのようなスーツ姿の方や子連れの主婦のような方も沢山参加しているようだった。


「お集まりの皆様、これより開札の結果をお知らせいたしたいとおもいます、まず……」


 そこから本日の進行役によって開札結果を聞くに当たっての注意事項の説明を受ける。


 注意事項とは言っても携帯電話はマナーモードにしてくださいとか、大きい声をだす等の行為はしないでくださいとか、ありふれた内容を聞く間にも、会場の片隅で次々と入札金額が記載された封筒が切り開かれていく。


 全て注意事項を話し終わった進行役の元へ開封されたばかりの入札結果が手渡され、いよいよ結果が発表される。


 どうやら今日はあの屋敷のほかにも四十件以上の不動産の競売開札が行われるらしい。


 これは時間が掛かりそうだなぁと嘆息していたが、競売の案件一件あたり二分とかからずに次々と発表されていく。


 事件番号の若い順から順次発表されるようで、事件番号を述べた後にその案件の入札件数と、入札の金額が高かった上位三位の入札金額と入札者の名前が発表されていく。


 しかも焦らしや合間を取るなんてことはなく淡々と読み上げられるため、拍子抜けだった。


 入札者に名前が上がるのはどうしても企業が多く、個人が入札者に選ばれる事は予想以上に少ない。


 しかも個人が入札出来た家には一切企業が入札に参加していない物件ばかりなのだ。


 あの屋敷は広大な土地と屋敷を有しているから、企業の入札が入れば俺の手元に来るか怪しい。


 そうしている間にも入札は続き、あの屋敷の事件番号が読み上げられた。


 俺は手に持った事件番号の書かれた紙を無意識に握りしめる。


「この案件の入札件数は五件御座いました。三位〇〇住販様!七十八万八千円。二位沖田一成様!八十六万円。一位ドリームズホールディング様!一千五百万円!?」


 もともと買い手がつくかどうか微妙だと言われていた物件に五件もの入札があった事にも驚きだが、金額の桁が違いすぎる……一千五百万なんてとてもじゃないが俺には出せない。一位のドリームズホールディングとはどんな会社なのだろう。

 

 まだ他の案件の発表が続くなか、会場を後にした……。




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