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異世界って良い世界?

 チン!


 と言う聞き慣れた音が、乗せられた部屋から響いた。


 いやいや、なんでエレベーター? しかも行き先はボタンが二つのみ。これどう見ても貨物用でしょう。


 既に色々有りすぎて一体なにから突っ込んで良いのかわからなくなってきた。


「おっ、暴れるのやめたのかね? なんならもっと盛大にあわてふためいても良いのに」


「まぁ、エレベーターですしね」


 異世界なんて、娘の好きなライトノベルの設定だ。その小説で行われる異世界への移動は大抵神様やら精霊による転生と勇者召還と神隠しらしい。


 しかもその対象は美男美女、間違っても普通のそこら辺にいるような平凡な俺を召喚するメリットなんてないはずだ。


 年々黒い髪の中に白く輝く髪を見付けては四苦八苦して抜いてしまったせいで最近では髪の後退が気にかかるし、容姿だって、そんなにずば抜けているなんて事はなく、どこにでもいる普通の親父だ。


「まぁ、良い。オキタ殿! 着きましたぞ、ようこそ我が愛国! トリスティアバイン王国へ!」


 扉を開ける前までは確かに幼女だった筈なのに、見事絶世の美女へと変貌を遂げたのタマの肩の上で見たいトリス、トリ……なんちゃら王国は中世ヨーロッパや某ネズミの楽園を彷彿とさせる城を備えたそれは見事な石造りの街並みでした。


 うわー、うーわー。 太陽が二つあるー。


「ふぅ、やはりこちらは楽じゃな。やっと元の大きさに戻ったわ」


「元って、こっちの姿が本来なんですか?」


「そうじゃよ。さぁ、早速出発しようか」


 一体どちらへ……。


 タマが右手を口に付けて鋭く吹き鳴らすと、嘶きと共にやって来た生き物に度胆を抜かれたのは仕方ないだろう。


 背中に革製の鞍をくくりつけた蛍光ピンクの飛竜に驚くなと言う方が無理がある。


「ど、どどど、ドラゴン」


「あぁ、可愛いじゃろ! 儂の愛竜どらちゃんじゃ!」


 そのままじゃないですか! と突っ込む前にタマ様はさっさと俺を抱えたまま飛竜どらちゃんの背中に乗り込んだ。


 艶々のピンクの鱗に太陽が反射して眩しい。


 色んな意味でダメージを受けていると、どらちゃんは片翼二メートルはあろうかと言う蝙蝠のような皮膜を広げて羽ばたきを始めた。


 大きな翼に煽られて地面から砂塵が舞い上がる。


「わっぷ。ペッ!」


「さぁ飛ぶぞ!きちんと口を閉じていないと舌を噛みかねんからの」


「って、うわー!」


 一瞬のうちに空高く舞い上がったどらちゃんは螺旋を描きながら雲の上まで上昇すると一気に急降下を始めた。


 命綱もシートベルトすらなく、ドラゴンジェットコースターに乗せられて、ふぅっ意識が遠のく。


「あっ、落とした」


 気が付けばこの身体一つで俺は宙を舞っていた。


 わぁ、空が綺麗だなぁ。美枝子、蛍どうやら俺はもう助けてやれないみたいだ……。


「まったくもう! 世話の妬ける男じゃのぅ。 ほれ今度こそきちんと座っておれ」


「ぐふぁ!」


 ドスッ!と言う衝撃を腹部にくらって、どらちゃんの背中に連れ戻される。


 どうやらスカイダイビング中の俺をタマ様が回収してくれたらしい。


 先程とは違ってタマに抱き締められる形でどらちゃんに座っているせいか、背中に立派なお胸様が当たっております。


 ちっぱいどこいった!


「ほれ降りるぞ」


 どらちゃんの向かう先には白い石造りの城があり、どうやら城の敷地内にある広い草地へとおりたった。 


「た、助かった。死ぬかと思った」


「大袈裟じゃな。これくらいで。ちょっとしたお遊びじゃろうが」


 あっ、遊びなのか!? 空飛ぶドラゴンからスカイダイビングさせるのがお遊びなのか!?


「さぁ着いたのじゃ」


 タマに手を引かれてこれから向かう先の城壁を見上げた。そして振り替えればすぐに見える距離に先程の屋敷が見える。


「タマ様、どらちゃんに雲の上を通させる意味があったんでしょうか?」


「うーん、ノリ?むしろどらちゃんじゃなくても問題ないわ」


 俺はノリで死にかけたんですかい! 


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