第三十四話『アルフォンス・アディミオと言う男』
にっこりと営業で鍛えた笑顔を浮かべ 、とりあえず初対面の相手にはご挨拶からだ 。
「アルフォンス・アディミオと申します 。 救世主殿……」
「始めまして 、アディミオ殿 。 沖田一成です 。 こちらの慣習で言えば 、オキタが姓となります 。 オキタと呼んでください 、何かご質問でもありますか ?」
アディミオさんが肯定派か否定派か 、それとも日和見派かはわからないけど 、会場の厳つい強面さん達がアディミオさんと俺の様子をつぶさに観察している 。
「ではオキタ殿 、失礼を承知でお聞きしよう 。 貴方はここにいない戦争を起こしたがる国へ直接交渉にいくと言っていたが本気かい ?」
「えぇ 、本気です」
「はっきり言うが 、俺たちにはあんたが強いようには到底見えない」
でしょうね 。 だって対峙しているアディミオさんは現役の特殊部隊や本格派アクション俳優とでも呼べるほどに鍛え抜かれた肉体美を誇る 。
かたや俺はしがないサラリーマン……だった無職の親父だ 。
仕事は基本的にデスクワークだったし 、歩くのは自宅と職場との往復と家の中でトイレに行くときくらい 。
休みの日は基本ごーろごろしている俺が強そうに見えるわけがないっつうわけで 、アディミオさんの主張もわからないでもない 。
「えぇ 、強くありませんよ ? アディミオ殿のおっしゃる通りです」
「ここに参加していない連中は裏社会の中でも札付きの悪党達だ 。 話してわかるような生易しい連中じゃない」
だろうね 、アディミオさんの部下らしい連中も俺を睨み付けている 。
「オキタ殿の国がどうかは知らんが 、少なくとも俺達は強い奴としか組まない 。 自分よりも弱い者の部下には決してならない !」
「……それで ? だからどうしろと ?」
「証明しろ 、あんたが俺達の頭に相応しい男だと」
なんかさらに面倒な事になってきたな 。
勢力争いとかって勝手にやってくれよ 、俺は博愛主義者で平和主義者なんだけど 。
暴力反対 !
「はぁ 、タマ様」
たのむからこの血の気の多い筋肉集団を何とかしてくれ 。
「カズナリ殿 、世の中は諦めが肝心じゃ 。なぁに 、カズナリ殿なら負けることはないじゃろう 。遠慮なくカズナリ殿の実力を示してやれば良い」
唯一の頼みの綱は事態を治めるどころか面白半分で煽る始末 、実力って言ってもなぁ……どうすれば良いんだよ 。
「はぁ 、わかりましたよ 。 それで ? どうしろと ?」
諦め半分で投げやりにアディミオさんに視線を向ければ 、アディミオさんがニヤリと口角をあげて笑った 。
「なに 、最近調子に乗っている跳ねっ返りの若い衆を二、三潰してくれれば良い」
若い衆って 、あんた達の後輩くらいきちんと躾けてくれよ 。
なんか良いように厄介事を押し付けられた気がするんだが 。
「それで ? その反抗期の跳ねっ返りの方々はどこにいるんですか ?」
俺が聞くとアディミオさんは心底楽しそうに人が悪い笑み浮かべている 。
「俺が案内しよう」




