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新たな仲間

 なにがどうしてこうなった。


 目の前に巨大な銀狼が腹部を晒して撫でられるのを待っている。


 しかもこの狼の下僕らしい黒い狼たちもまるでオセロのコマのように一斉にひっくり返った。 


「どうしろと?」


「とりあえず撫でて上げればいいんじゃない?」


「それもそうだな」


 悩むだけ無駄だろう。 なら蛍の提案通り巨大な銀狼がさらけ出した毛皮の感触を楽しむべきだろう。


 美枝子はロンダさんを治療をしていて、既に傷は塞がったらしい。


 流石に失われた血液は戻せないのか、貧血のためにまだ意識は戻っていない。


 残念ながら俺には鱗で覆われた彼らの顔色は判らない。


 恐る恐る刺激しないように銀狼に近付くと、ゆっくりと手を伸ばして体毛に触れた。


 一見して硬いように見える体毛は触れた手のひらを更々と撫でて行き癖になりそうなほど手に馴染む。


 そうか、これが蛍が夢中のもふもふと言う感触か!


「ちょっとパパ、惚けちゃって気持ち悪い」


 グサッ! となんか今蛍から刺さったぞ!?


「いやぁ、こいつの毛が触り心地良すぎてな。 蛍も触ってみろよ」


「えっ! べ、別に私は触りたいなんて……お、思ってないんだから!」


 もじもじしながら拒否しつつも、視線は狼を撫で続ける俺の右手にくぎ付けだ。


 昔はあんなに素直でパパ、パパ! とすり寄ってきたのに今ではこれだもんなぁ。


 ツンデレか? そうか、反抗期とは成長過程におけるツンデレ期間の事を言うのか。


「いいからほら! 触ってみろって」


「えっ! ちょっと!」


 右手首を捕まえてぐいっと毛皮に触れさせると、一瞬驚いたような表情をしたあとに雰囲気が蕩けた。


 夢中で撫でたあとニヤニヤと反応を楽しんでいた俺の存在を思い出したのか、なんでもなさそうにそっぽを向いてしまった。


「さて、お前の縄張りを騒がせて悪かったな。 ご近所さんなんだ、これからもよろしくな」


 ポンポンと眉間を優しく叩くと、忙しなく振られていた尻尾がペタンと萎えた。


「クゥーン」


 不満そうに野太く鳴くと、何故か蛍に甘えだした。


「きゃっ! くすぐったい!」


 ペロペロと娘の顔よりも広い舌で娘を舐め上げるものだから、涎まみれになってしまっている。


「……パパ、このこ連れて帰っちゃダメ?」


「ダメだ」


 上目使いにおねだりしてくる娘に否と答える。


 くそぅ、どうして久し振りのおねだりがよりにもよって狼なんだ!


「ちゃんと自分でお世話するし、散歩も連れていくから! ねっ?おーねーがーいー!」


 うぉー、可愛いなちくしょうめ! あー、うー、おー!


「ねっ! 一生のお願い~!」


「……きちんと面倒は見るんだぞ?」


「やったぁ!」


 きゃぁきゃぁと狼の首筋に顔を埋めてすりついている。


「はぁ、一成さんは蛍に甘いわねぇ」


 呆れたような視線を美枝子に貰ったがはっきり言おう! 美枝子と蛍には俺は勝てる気がしないのだ!


「仕方がないだろ、可愛くて仕方がないんだから。 さぁ蛍! パパの胸に飛び込んで「キモイ」」 


「まぁ良いわ。 きっとノアさんも心配してるでしょうし、戻りましょう? 回復魔法は使ったけれどロンダさんはちゃんとしたお医者様に診ていただいたほうがいいとおもうの」


「そうだな、竜人が俺達と身体の作りが同じとは限らないしな」


 ロンダさんの身体を背中に背負う。 狼はひと鳴きすると、黒い子分の犬たちを森へと帰した。


 狼に地面に穴を掘らせて、死んでしまった犬たちを供養したあと、四人と一匹は屋敷へと戻った。


 


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