第二十八話『演説と親子喧嘩?』
俺の出した要望に 、集まった民達が静まり返った 。
「魔素を当たり前の様に消費して生活をしているこの世界の人には分かりにくいのかもしれないが 、俺が暮らす世界には 、魔素を生活に利用するという発想がない」
あまり大きな声を出しているわけではないが 、米粒サイズの顔すらわからない人たちも静かに話を聞いてくれているのがわかる 。
「俺が暮らす世界ではこちらとは真逆で魔素が濃くなりすぎて悪影響を及ぼし始めています 。さてなぜそこまで魔素が増えていったのか 。こちらの世界とは違い 、魔素を使える者がいなかったことで魔素が増えすぎてしまいました」
答えは簡単 、使わないから増えたんですっていったらポカンとして口を開けている人たちがいた 。
そんなに無防備に口を開いていると 、虫が口の中に進入しますよ ?
「なら減った魔素を増やす方法は単純です 。使わなければ良いそれだけです 。減らしたいなら使えば良いんですから」
自分で言っていてなんだかなぁと思うが 、ようはそういう事だろう 。
金と一緒だ 。使えば使っただけ貯蓄は無くなる 。
生産される魔素が少ないと言うなら増えた分だけを消費するようにできれば今ある魔素をこれ以上浪費せずに済むはずだ 。
「俺はこの世界を救ってほしいと頼まれましたが 、この世界に住む全ての住人が消費する魔素を最小限にする努力と 、自分達でこの世界を守るんだと一人一人が自覚しない限り 、俺がいくら頑張ったところでこの世界は助からない 」
「 この世界を 、いや自分の大切な者達どうしたいのか 、その為にはどうすれば良いのか 、その為に自分達は何をしなければいけないのか 。未来を考えるのに貴賤は関係ありません 。明日 、その答えを聞こうとおもいます 。各々考えて纏め代表者が城へいらしてください 。それでは解散 !」
言いたいことは言わせて貰ったし 、もう良いだろう 。後はこの世界の人々が対処するべきだ 。
テラスから部屋へ戻ると美枝子が微笑みを浮かべて迎え入れてくれた 。
王様に演説内容について文句を言われる前に美枝子の手を取り 、途中で王子様といちゃついている愛娘を回収し 、家族揃って岡の上にある地球とこの世界を繋ぐ屋敷へ帰ってきた 。
「だぁー 、疲れた……」
ふかふかの高そうなソファーにグデッと伸びる 。
「パパ 、みっともないからやめてうざい」
スマートフォンの画面を見ながら 、俺の持ち込んだプリンターの前に陣取ってなにやら印刷している蛍が残り少ないライフを言葉の刃で削ってくる 。
「もう 、蛍 ? そんなこと言わないの 。 一成さん 、かっこよかったわよ」
「美枝子ぉぉぉ 。蛍が冷たい !」
「うわキモいし 。 マジうざい 。 私の前でいちゃつかないでくんない ?」
美枝子に抱きつくと冷たい視線が蛍からバシバシ届いた 。
「……ところで蛍 、さっきから何をしているのかな ?」
インクジェットプリンターの音が鳴り止まない 。
一体何をそんなに印刷しているのかと 、美枝子から離れて 、背後からコッソリ覗き込んだ 。
「ちょっと ! 人のスマホ覗かないでくんない !? まじあり得ないんだけどこの変態オヤジ ! ちょっと返して !」
プリンターから出てくる出てくる写真を横からかっさらい 、蛍の手が届かない高さにあげて一枚 、また一枚と中身を見ていく 。
ぴょんぴょんと取りかえそうと跳び跳ねる蛍の追撃を逃れて確認した写真は自撮りしたらしく 、可憐に加工されおり 、可愛い上目遣いな蛍と一緒に馬の骨が写っていた 。
数枚捲って馬の骨の頬に唇を寄せる写真を見つけて…… 、ハッ ! 気が付けば思いっきり写真を破り捨てていた 。
「あぁー ! 信じらんないなんてことするのよ ! パパなんてだいっきらい !」
蛍はそう叫ぶと 、俺の股間を蹴り飛ばして真っ二つになった写真を胸に抱えて部屋を飛び出していった 。
だいっきらい ! だいっきらい……だいっきらい……
蛍の言葉が頭の中でこだまする 。 そして俺は息子を押さえて飛び回った 。
痛い 、心も息子も痛すぎる !
「今のは一成さんが悪いわね 。 完全に……」
だって仕方がないじゃないか ! 蛍が 、蛍がぁ~ !!
「しかし 、あの子大丈夫かしら ? もう外は真っ暗なのに ? 困った子ね」
耳を澄ませば窓の外からバタンと扉が閉まる音がして俺の頭から血の気が引いた 。
「つっ 、連れ戻してくる !」
「ちょっと待った !」
慌てて飛び出そうとした俺の襟をつかんで止める 。
「私も行くわ」
えぇぇ~ !!




