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着信音は御料理番組。

 王城と教会に殴り込み!? なんつう過激な! こわっ!


 チャララッチャッチャチャチャッ!


 なるべく近寄らないようにしようと決意を新たにしているとどこからか聞き覚えがある陽気な某有名料理番組のテーマソングが聞こえてきた。


「なっ! なんだ!? この音はどこから聞こえてくるんだ!?」

 

 突如鳴り出した不審な旋律にカウンターの下を探すサントスさんを放置して先程からチカチカ光っている腕輪の魔石を撫でる。


『カズナリ殿!? 一体今どちらに居られるのじゃ! はよう城へ戻ってきて下され!』


 大音量で腕輪から響いてきたタマ様の声になるべく身体から腕輪を遠ざけて、耳を塞いだ。


 カウンターの下を探していたサントスさんはタマさまの声に驚いたのか、頭を打ち付けた様でガツンッ! とカウンターが盛大に揺れた。


 呻き声がするから結構な衝撃を受けたのではなかろうか。


「えー、今美味しく夕食をいただいていたので気がすんだら帰りまーす」


『夕食!? 一体どこで!』


「城下のサントスさんが経営する酒場です。 名前はえ~と」


「黒猫亭だ」


 視線をさまよわせていると、頭を撫でながらカウンターの下から出てきたサントスさんが店の名前を教えてくれた。


「黒猫亭だそうです」


『黒猫亭!? とにかく一刻もはやく戻ってくだされ!』


「えーイヤです」


『押し寄せた民によって城門が突破されましたぁ!』


 タマ様じゃない声が聞こえてきた。


『なんとか正門で食い止めよ! とにかくどらちゃんとすぐに迎えに行きますからな。 その店から出てはなりませんぞ!』


「えー」


『えーじゃありませんぞ! 元はと言えば誰のせいでこんな大騒ぎになっていると思っているのじゃ!』 


 それはもちろん。


「教会のくそ神官の見栄と我が儘のせいですね」


『……否定できないけど、とにかく迎えに行くからの! 動くでないぞ!』


「へいへい……」


 腕輪の放っていた光が消えたので、多分通信が途絶えたんだろう。


 しかし通信機能をこちらから発信したことはあったけど、受信ははじめてだったので驚いた。


 まさかの着信音、果たして変更は出来るのだろうか。


「あっ、あのぅ。 貴方様はもしや?」


 黙ってタマ様との通信が終わるのを待っていたサントスさんが恐る恐る声を掛けてくる。


「あっ、改めまして。 カズナリ・オキタです。 出身は地球……こちらで言うところの異世界ですね。 現在雇われて此方の世界でお世話になってます」


「やはり救世主様でしたか!」


 普段は細い眼をクワッ! と、見開き詰め寄られた。


「お恥ずかしながらそう呼んでいただくことも有りますね」


「まぁまぁ一杯」


「どうもどうも。 ありがとうございます」


 エールが入った大きな器を差し出されて半分ほどまで呑み進めたコップにエールを注ぎ足された。


「それで、本当のところ何があったんですか?」


 店内には他に誰も居ないにも関わらず声を潜めて聞いてくるサントスさんに苦笑しながらも、俺は教会での出来事を簡潔に話して聞かせた。


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