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動き出した教会

 リブロ様の案内で通された部屋は先日案内された王様に負けず劣らずに広く豪奢な部屋だった。


 奥の間に続く扉の奥には立派な天蓋付きの大きな寝台があり、一人の青年が横たわっていた。


 歳は二十歳前後だろうか? 体調が悪いせいか緑色の髪は艶を失っており、室内に籠っているため日焼けをしないからなのか、はたまた自前の色素が薄いのか色白い肌をしている。


 顔色が悪すぎて生気がまるで感じられない程に青ざめてはいるものの、スッと通った高い鼻梁や薄い唇など、パーツが整い先日会った王子殿下が正統派ならこちらは薄幸の美青年だった。


 長い緑色の睫毛に縁取られる瞳の色は閉じられた目蓋によって見ることは敵わないが、さぞ庇護欲を掻き立てられそうだ。


 こりゃぁ、蛍には見せられないな。 ただでさえあの王子殿下だけでも厄介なのにこれ以上可愛い蛍に悪い虫がついたら堪らない。


「猊下のご容態は……?」


「思わしく御座いません……、原因もまだ……」


 痛ましげに美青年を見下ろしながらリブロ様が看病をしているらしい修道士に聞けば気落ちしたように返事を返している。


「あまり状態は良くありませんね、これは急いだほうが良さそうです」


 左腕の手首に嵌まった腕輪を撫でると、腕輪に嵌め込まれている魔石のひとつが輝きだした。


 腕輪に嵌める魔石の種類によって使える機能が変わるらしく、俺の腕輪には現在四つの魔石が嵌め込まれている。


 緊急時に日本へのエレベーターがある屋敷へ移動出来る緊急避難機能がある空間移動の使い捨ての魔石、メチャメチャ高価。


 言語翻訳の魔石、これはこの大陸に居る限りは共通語で統一されているのであまり必要がないらしく、他の大陸と交易をする商人などが使っているため需要がなく安価。


 同じ魔石を砕いた物同士が共鳴する性質を利用して遠くに居る人と連絡をとれる携帯電話機能がある魔石も加工が難しいらしく高価らしい。


 今はタマ様としか繋がらないが後で美枝子や蛍と繋がるようにしてもらおう。


 そして日本とこちらの世界を繋ぐエレベーターを起動するための鍵となる魔石は使用者を指定することで初めて使えるようになる魔石でできていた。


『はぁい。ムグムグ、なにかムグムグようかのう? ムグムグ今ムグムグ手が放せんのじゃがのぅ』 

 

 ひたすらムグムグ言いながら電話(電気じゃないから、石話? 魔話?輪話?)にでたタマ様。


「 一体何を食べておいでで?」


『うむ。 カマボコと言うミエコ殿からいただいた土産品をいただいておったのじゃ。 旨いのぅ! 一体何で出来とるんじゃ?』


 あぁ、カマボコですか。 人気の名産品ですね。 炙れば酒飲みには堪らない……おっと脱線するところだった。


「白身の魚ですよ。 それより美枝子は近くに居ますか?」

 

『あぁ、居るぞ? どうかしたかの?』


「すみませんがタマ様、大至急美枝子を連れて教皇様がお泊まりになっている教会へ来てもらえませんか? あと美枝子にアレルギーの薬を持ってきていないか聞いてください。 あとエタノール消毒液も」


 美枝子は昔シーフードに当たったことがあり常にアレルギーの薬を持ち歩いている。


 幸いアナフィラキシーショックと呼ばれるひどい症状が出るほどでは無いけれど念には念を入れている。


 悲しいかなそれ以来我が家で海鮮がでることは無いが、美枝子の元気には代えられないので納得している。


 エタノール消毒液の脱脂綿を個包装されている物と絆創膏も常に持ち歩いていることも、お世話になった身をもって把握している。


『ふむふむ。 持っておるそうじゃよ』


「ならそれも持って来てください。 大至急」


『わかった。 どらちゃんと行くから驚かんように言っておいてくれ。 通信を切るぞ』


 ブツリと音がして通信が切れたので、タマさまの要望を伝えて修道士を走らせた。


「リブロ様、今から妻が来ます。 そこで両教皇様が体調を崩された日に食した物ってなにか記録に残ってませんか?」


「あぁ、毒殺の恐れが有ったので調書があるはずじゃ。 これ!直ぐにもってこい! あとは何が必要かな?」


「そうですね……この教会で日常的に使われる食材を少量で構いませんので集めていただきたいのですか。 あと火で炙った縫い針を一本」


 欲しいものを聞くなりリブロ様は修道士や修道女達に指示を出すなり動き出した。




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