第三話 謎の秘文字
この物語は、倉庫娘のサモナー道中記 本編 第二十六話のサイドストーリーになります。
先に本編 第二十六話をお読みになりますと、よりお楽しみ頂けるかと思います。
私、ニードルス・スレイルは困惑しております。
その日、錬金術ギルドでの務を終えた私は、いつも通りに研究所に向いました。
近頃の私は、少々イライラしている様です。
その理由は、共同研究者であるウロ氏の行動にあります。
あの、行き当たり場当たりで何も考えていないかの様な素行。
私には、到底、理解出来ません。
まるで発作の様に襲ってくる苛立ちの度に、その理由を考え、文書にし、ゴーレムに添えておく事にしております。
共同研究対象であるゴーレムなら、彼女がどこにいても喚び出した先に届くからです。
そうすれば、私の苛立ちを読んで、反省或いは改心するかも知れないと思ったからです。
ああ見えて、彼女は賢く才気に溢れています。
少なくとも、私には無い何かを持っていると確信しております。
そんな折り、この秘文字が届いたのです。
ゴーレムから、私の文書は無くなっており、何より、ゴーレムが泥まみれでした。
そして、手には1枚の紙が。
彼女からの反省文か。
或いは、レポートが記されていると期待した私の考えは、雷に撃たれたかの様に崩れ去ったのです。
そこには、見た事も無い秘文字がつづられていたのです。
古代文字でも、魔界文字でも無い。
簡素にして、複雑怪奇な文字。
調べ様にも、その取っ掛かりとなる物の見当すらつかない有り様です。
ここ数日、苛立ちのあまり良く眠れない夜が続いていました。
しかし、今夜からは別の理由で眠れないでしょう。
ああ、彼女は今、どこにいるのでしょうか?
早く会いたい。
会って、この摩訶不思議な秘文字の意味を訊ねたい。
いや、それまでに少しでも調べておくとしましょう。
真理にはたどり着けなかったとしても、1歩でも近づいてみせましょう!
あんなに苛立っていたにも関わらず、今は胸の高鳴りが止まらない。
悔しいが、彼女は聡明で、計り知れない知識を秘めている事でしょう。
いつか、その全てを知りたい。
ですが今は、この小さな難問に心を埋める事にしましょうか。
「\(^o^)/」
なんと魅惑的な秘文字だろうか。
今夜もまた、眠れなそうもありません。