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第二十九話 父からの手紙

この物語は、倉庫娘のサモナー道中記 本編 第百二十七話のサイドストーリーになります。


先に本編 第百二十七話をお読み頂けると、よりお楽しみ頂けるかと思います。

また、マルトンの名は第百二十四話より登場します。よろしければ、そちらも併せてお読み頂けたらと思います。

 偉大な魔術師になりたい。

 それも、歴史に名を残す様な大魔術師に。


 そう思う様になったのは、物心がついて間もなくの頃だったと思う。


 最初は、寝物語に聴かされた世界の四方を護る4人の魔術師に憧れた。


 やがて、成長するにつれ、現実的に宮廷魔術師長である父、セルジュ・マルトンや優秀な2人の姉たちに憧れた。


 ……いえ、あれは憧れではなく恐怖かも知れない。

 魔導の家に生まれながら、私には魔法の才能があまり無かった。魔力量も乏しく、繊細な魔力制御や微量な魔力感知は、天才的な2人の姉たちに遠く及ばず。

 そのせいか、知識や理論などの座学にのめり込み、お屋敷に教師を迎える5歳になる頃には、図書室の蔵書を読み尽くすほどの立派な本の虫になっていた。


 7歳になる頃には、魔法史や術式理論、植物学から魔法薬学まで、知識では教師が舌を巻くほどとなった。

 そのお陰か、父の採取や調査に同行する事が出来た。これは、優秀な2人の姉たちにも許されておらず誇らしかった。


 そして、16歳になった私はハイリム王国国立魔法学院へと入学する事になった。


 ここで、不可解な事が起こった。


 本来、入学式の挨拶はその年の入学試験で最も成績の優秀な者がするハズだった。

 しかし、今年は2年生のシュティーナ・リンドホルム様が挨拶をした。なぜ? 伯爵令嬢だから?? それならば、私だって伯爵令嬢等なのに。


 後になって、不穏な噂を耳にした。

 今年の最も成績が優秀だった者は2人で、それも平民と亜人だったとか。

 それで、貴族からの反発を抑えるためにえて、新入生では無く2年生の生徒会長であるリンドホルム様になったとの事だった。……父に何と言えば良いのだろう。


 不可解な出来事はまだ続いた。


 試練の塔で、何やら事故が起こったと聞いた。そもそも、私の班以外に塔に挑戦など出来る班がいた事に驚いた。

 しかも、設備を破壊したとか。あるいは不正に侵入したとか。

 いずれにせよ、結果はかんばしくなかったのでしょう。当たり前の事である。


 しかし、すぐに不穏な噂が流れて来た。

 挑戦したのが、あの成績優秀者だった平民と亜人のいる班だったとか。その中に、王族の者がいたとか。

 しかも、施設を破壊したのではなく突破した結果、破壊に繋がったとか。


 噂の真意などどうでも良かった。

 私の班を差し置いて、塔攻略が認められてしまった事が問題だった。その上、施設整備や調査のために塔はしばらくの間閉鎖になるのだと言う。


 冗談ではないわ!!


 これ以上、私に失敗は許されはしないのよ!? こんな理不尽、あってはならない事だ!!


 それから私は、担任のフランベル先生や学院長のラジウス・ダルコ先生の所に何度も何度も足を運んで試練の塔への挑戦を願い出た。


 それなのに、私の人生の大切な出来事なのに。2人とも困ったふりなどしていた。

 班の者からも、少し待とうと言われる始末。


 待つ? 何を悠長な事を言っているの!?

 何故、そんなにお気楽でいられるの??


 せめて、私だけでも先を目指す事を止めてはいけない。偉大な魔術師になり、父や姉たちに私を認めてもらうために。


 季節が夏になり、間もなく夏期休暇になると言うのに塔への挑戦は叶わなかった。そんなある日……。


「お嬢様、カリーナお嬢様!」


 侍女のユーリが、慌ただしくやって来た。

 私より3つも年上だと言うのに、淡い緑色の髪には寝癖があって憂鬱ゆううつになる。


「どうしたのです、ユーリ。朝から騒がしいわ。それに、身だしなみはキチンと……」


 そう言いかけた私の言葉は、ユーリの腕を見てかき消えた。

 ユーリの腕には、我がマルトン家の紋章の入った白いフクロウが止まっていたからである。爪が魔力によって保護され、腕に食い込む事が無い。使い魔にそんな事が出来るのは……。


「お嬢様、ご主人様から、セルジュ様からお手紙です!」


 私は、恐る恐る手紙を受け取った。

 父のフクロウが父の視線の様で、震える手でマルトン家の紋章で封蝋ふうろうされた手紙をそっと開く。



 親愛なる娘よ


 先日、魔法学院学長であるラジウス・ダルコ殿より苦情があった。閉鎖中である試練の塔、その挑戦願いについてだ。


 お前も知っての通り、試練の塔の閉鎖は一般に言われている設備事故による物ではない。意図的な悪意をもって行われたものであり、王族を危険に晒した事は、ともすればハイラム王国への脅威となり得た事件である。


 我がマルトン家も王命によりその後の調査を行っている中、在学中のお前が騒ぐ事の重大さを少しは考えてみたのだろうか?


 マルトン家は代々、ハイラム王家の魔導の家柄としてつかえてきた。お前の2人の姉たちは、その名に恥じぬ成果を得て学院生活を終えたと言うのに。


 マルトン家の名に泥を塗るのを止めよ。


 今年の塔攻略者は、王族と平民、そして亜人だったとか。しかも、王族の命を守り脱出して見せた。何故、お前ではないのか?


 間もなく夏になる。

 毎年、夏期休暇には魔石作成の課題が出るだろう。

 よもや、上の姉たちに出来た事がお前に出来ぬ事は無いだろうが。


 これ以上、マルトン家の名を落とす様な事が無い様に願う。



 セルジュ・マルトン



「お、お嬢様!?」


 ユーリの手が、私の両肩をつかんだ。ユーリが支えなかったら、私は床に倒れ込んでいたかも知れない。


 父からの手紙は、私の視界を暗くにごし絶望に追い込むのには十分な内容だったのだから。

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― 新着の感想 ―
新鮮なサイドストーリーだー!ありがとうございます だいぶ追い詰められてるのでどうなってしまうのか…
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