第二十五話 イルーシャンズスラム怪事件 前編
この物語は、倉庫娘のサモナー道中記 本編 第八十五話から第八十九話のサイドストーリーになります。
先に本編 第八十五話から第八十九話、ウロの知らない物語 第二十一話をお読み頂けると、よりお楽しみ頂けるかと思います。
ハイリム王国の都、ハイリア。
王城を頂くこの街は、貴族を中心に商人や平民。近隣の村々の農夫から果ては冒険者まで、幅広く門戸を開いている。
そんな大都市は、中央を横切るイルーシャン川によって大きく南北に分けられている。
イルーシャン川の流れを遡れば、街の西門と南門のちょうど中間で地下から這い出してくる川の始まりを見る事が出来るだろう。
この辺りまで来ると、街全体をぐるりと囲む壁の内側だと言うのにどこも不穏な空気に包まれている。
無秩序でいい加減な建築物に、複雑で入り組んだ路地群。華やかな王都とは、とても思えない程のうらぶれた雰囲気。『イルーシャンズスラム』だ。
住人のほとんどは、街へ入るための正規の手続きを踏んでいないか踏む事の出来ない者たちであり、それらを取り仕切っているのは、ハイリア最大のギルド『モーガン盗賊ギルド』である。
かつては、イルーシャン川を挟んで北側を兄であるブリム・モーガンが。
南側を、弟のジュール・モーガンがそれぞれ取り仕切っていたのだったが、ブリム・モーガンが何者かに暗殺されてからは、北側もジュール・モーガンが取り仕切る様になった。
無法者の闊歩するスラム街において、犯罪など日常茶飯事であるのだが、とある事件だけは、“いつもの事”では片付けられない程に異様で奇妙な出来事であり、スラムの浄化、結果、盗賊ギルド縮小のきっかけともなった。
これは、その事件の全貌である。
夏を目前に控えたハイリアは、この時期には珍しい雨に見舞われていた。
雨は数日降り続け、時には雷鳴も轟く様なひどい嵐となった。
夜更け過ぎ、南門外の街道に1人の男が現れた。激しい風雨の中ではかがり火は役に立たず、一瞬の稲妻だけがその姿を闇夜に浮かび上がらせた。
雨避けの外套につば広の帽子を目深にかぶり、口髭から雨粒を滴らせた男は、小さめの背負い袋1つと旅人にしてはやけに軽装だった。
男は南門には向かわず、巡回の衛兵を逃れる様に壁沿いを西門へと進むと、注意深く見なければ判らない程に壁と同化して立つ、小柄な男へと歩み寄った。
小柄な男は、かぶっていたフードを少しだけ持ち上げて男を見上げる。暗闇に、醜悪な眼が1つだけ光った。
「お早いお着きで、ケビンの旦那」
「……嫌味な奴め、いいから行くぞ!」
小柄な男の言葉に、ケビンと呼ばれた男が顔をしかめる。
他に言葉は無く、短いやり取りを終えた2人は、壁の影の中へ溶ける様に消えて行った。
1週間後。
ようやく雨の上がった街の片隅で、男性の変死体が見つかった。
死体は干からびてミイラ化しており、昨日今日死んだ物とは思えないありさまだった。
外傷らしき物は無かったが、顔全体を包む様な黒い痣があった。
特徴的な口髭と、この辺りでは見かけない派手な服装から、変死体の男性がギルド所属の盗賊ケビンだと判ると、怯えていた周辺の住人たちはすぐに静かになった。
死体の処理は、当然の様にギルドの手によって行われた。
衛兵の1人たりともスラムに立ち入る事は無かったし、意を唱えた者も数枚の銀貨で口をつぐんだ。死体の発見場所がスラムの真ん中だった事から、一般の住民の関心は低く話題にすらならなかった。
同じ頃、盗賊ギルドでは下働きのオリバーが失踪していた。
オリバーはジュールが見習いの頃に活躍していた盗賊で、彼に破れぬ罠も錠前も無いと言われる程の腕前だった。
ところが、とある遺跡の探索中に罠の解除に失敗したオリバーは、発動した罠によって瀕死の重症を負った。
遺跡の奥底であり、不運にも癒しの魔法を使える者のいなかったオリバーの一行は、脱出に二日間を費やした。
結果、死こそ免れたオリバーだったが右目と利き手である左手の自由を失う事になった。
歪んだ顔は見る者をゾッとさせ、ぎこちない動きは歩く屍を連想させた。
盗賊として一線を退いたオリバーは、ギルドの下働きとなった。身体の自由こそ利かなかったが、その働きぶりは実直だった。
そのため、見た目に反して彼を慕う者は多かった。若い盗賊などは、オリバーから罠の知識や錠の解除術を習う者もいたほどだった。
そんなオリバーに不正の疑いがかかったのは、1ヶ月ほど前の事だった。
およそ半年前から、ハイリアでは出所不明の魔導器や装飾品が闇で流される様になった。
ハイリアの闇市は当然だが盗賊ギルドが取り仕切っており、ギルドの目を盗んでの取引は事実上、不可能である。
それにも関わらず、流されていた物のほとんどがどこかからの盗品であり、いくつかはギルドに保護されているはずの貴族所有の品だった。
盗品を闇市に流していたのがケビンと言う名の盗賊だと判るのに、そんなに時間はかからなかった。
ケビンはギルド所属の盗賊で、腕利きだったが素行が悪い事で有名だった。
“寄付金”を払っている貴族から盗みを働いたり、遺跡探索の同行者を裏切って宝を総取りするなど仲間内からの評判も悪かった。
それでもケビンが放免されていたのは、美術品や大物狙いの彼が裕福な好事家や大貴族らの後楯があったからに他ならなかった。
そんな時、オリバーがケビンと頻繁に会っているとの報告があがったのである。
オリバーは下働きだが、ただの下っ端ではない事は誰もが知る所である。彼の伝を頼れば、ギルドの目を盗む事も難しい事ではなかった。
オリバーとケビンの接触が報告された直後、オリバーは失踪し、その数日後にはケビンが死体で発見された。
ケビンを恨む者は多かったし、遅かれ早かれこうなっただろうと皆が思っていたせいか彼が死んだ事に疑問を持つ者はいなかった。
問題はその死に方で、変わり果てた彼の死体は、ギルドに属する医師や薬師にもはっきりとした死因は判らなかった。ただ、一部の魔術師からは魔力の残滓が見られるとの報告があったが、確信は持てないと言う注意も添えられていた。
また、オリバー捜索に向かったギルド員によると、町屋にあったオリバーの家はまるで強盗にでもあったかの様に荒らされていたらしい。しかし、現金こそ無かったものの高価な装備や食料などは残されたままになっていて、よほど目端の利かない者の仕業に思えたのだと言う。
ケビンの死体が発見された3日後、盗賊ギルドの奥の部屋には2人の冒険者の姿があった。
ヘンニーとダムドと言うこの2人の冒険者は、まだ夜も明けきらない早朝だと言うのにしっかりとした装備で身を固めており、表情は2人そろって仏頂面だった。それは、壁際に待機するギルド員に睨まれているからではなかった。
理由は、その手に握られた『黒い羽根』である。
この『黒い羽根』は、盗賊ギルドが強制的な呼び出しをかける際に使用する物で、送られるのは大体においてギルドに借りがあって逆らう事が出来ない者たちだった。逆らって断ろうものなら、恐ろしい結末をもってその借りを返さなければならなくなるからである。
ヘンニーとダムドは入国の際にギルドの世話になっており、全部で3枚の羽根を送られていたのだが。これが最後の1枚である事から、うんざりしつつも内心ではほっとしていた。
とは言え、前2回の仕事がひどい内容だっただけに期待などは微塵もしていなかった。
「チッ、また胸クソの悪い仕事じゃねえだろうな!?」
「これで最後だ、何でも良いさ。ヤバくなったら、海でも渡るか?」
悪態をつくダムドに、ヘンニーは軽く肩をすくめる。
2人は、数年前にハイリアへとやって来た流れ者である。
入国に盗賊ギルドの世話になるなど、ろくでもない経歴が予想されたがギルドがそれを塗り潰した。おかげで2人は、ハイリアにおいて何事も無く冒険者として活動する事が出来た。
2人は腕は確かだったが、1年以上も仕事に恵まれなかったらしい。
しかし、ここ最近は仕事にも恵まれていたし、つい先日も貴族絡みの護衛を成功させたお陰で、馬小屋ではなく中級宿の、しかも個室に寝泊まり出来る羽振りの良さだった。
ヘンニーたちのため息をかき消す様に、荒々しく扉が開かれて部下を数名引き連れたジュールが部屋に入って来た。
細身で神経質そうなジュールは、部下を自分とヘンニー達の後ろに立たせると、2人の対面にドカッと腰を下ろして鋭い目でヘンニーとダムドの顔を交互に見据えた。
「お前たち2人には、オリバーの捜索に加わって貰う。生きたまま捕らえろ。話が聞ける程度にな!」
思ったよりもシンプルな依頼内容にヘンニーとダムドは顔を見合わせて驚いていたが、ジュールの目に宿った殺気に軽口を飲み込んだ。
人探しなど、この街の事情に詳しいギルド員の方がよほど向いていると思われたが、ケビンの後始末などで人手が足りずやむを得ないとの事であった。
「以上だ」
やおら立ち上がったジュールを、ダムドが慌てて「おい、それだけかよ!?」と呼び止めたのだったが。
「話は終わりだ、行け。詳しい事は、1階でロブの奴にでも聞け」
それだけ言うと、ジュールは入って来た時と同じ様に乱暴に扉を開けて部下たちと共に出て行ってしまった。残された2人はそれを見送ってから、大きなため息と同時に立ち上がった。
盗賊ギルドの1階は酒場になっており、酒を飲んだり食事をする事が出来たが積極的にそれを行う者はいなかった。
常に何人かの客がジョッキを傾けたり擦りきれそうなカードを眺めているのだが、そのほとんどがギルド員や用心棒である。
もちろん、ヘンニーとダムドはそんな事は承知であり、気にも留めていなかった。
1階に降りるとカウンターには食事が2つ用意されており、2人を見つけたロブが座る様に促した。
「ボスから聞いてるよ。まあ座りな」
このロブと言う男は酒場を任されている他、盗賊ギルドの窓口を担っており大体の情報は彼の元に集まって来る。普段なら情報に応じて料金が発生するのだが、今回はギルドの依頼であるために当然だがそれはなかった。
「あんたらには、ネッドじいさんの件を調べて来て貰う様に言われてる」
「ネッドって、“乞食”のネッドか?」
ダムドの質問に、ロブは「そうだ」と短く答えた。
古くからイルーシャンスラムに住んでいる浮浪者のネッドは、彼ならではの情報網で盗賊ギルドから信頼を得ている人物である。
ケビンの死体が発見された翌日、珍しく昼間にギルドへとやって来たネッドはひどく怯えていたらしい。
1杯のエールで少しだけ落ち着きを取り戻したネッドは、ガタガタと震えながらロブに泣きついた。
「儂の犬どもがみんな干からびちまった。
昨夜、儂は犬どもがやけに吠えやがるから様子を見に行ったんだ。儂らの住み処はこの辺りでもかなり古い場所だから、軒が重なりすぎて昼日中でも薄暗いのだが。それでも昨夜は月明かりがあった方だ。
暗闇の奥に向かって吠えてた犬どもが、急に怯え出したんだ。その直後だ、あいつが現れたのは。
あいつは、暗闇より黒かった。
儂は咄嗟に物陰に隠れて助かったんだが。犬どもは、そりゃあ見るも無惨な姿になっちまった。ケビンそっくりにな。
ありゃあ、悪魔に違いない。ケビンの奴も、きっとあの悪魔に殺られたんだ!」
この話を聞いたジュールは何人かの若いギルド員を調査に向かわせたのだったが、道に転がる干からびた犬の死体を目撃したギルド員たちは、恐怖し、現場入口付近を少し見て回っただけで逃げ帰ってしまったらしい。
這う這うの体で戻って来た若いギルド員を見た他の連中は、恐怖が伝染したらしく何かと理由をつけて調査に行こうとはしなかった。
「……で、俺たちの出番って訳か」
呟いたのはヘンニーで、ダムドは呆れて声も出ない様だった。
「まあ、そんな所だ。
オリバーがいれば良し。いなくても、別の何かがいるかも知れない以上、スラムを仕切ってるギルドが見過ごす訳にもいかねえ。冒険者を雇っても良いんだが、腕の立つのとなると時間も金もかかるからな」
話と食事を終えた2人が盗賊ギルドを後にしたのは、既に陽が高く昇った昼間際だった。
宿に戻ってもよかったのだが、それを面倒だと感じた2人はこのままスラムの奥へと向かった。
ネッド老人の言っていた場所は、イルーシャンスラムの中でも最も古い地区だった。
建物の軒が重なる様に改築と増築が繰り返され、原形が分からない程に凝り固まった建物群は下手な迷宮より質が悪く不気味だった。
おまけにひどい悪臭いが鼻を突き、とても人の住める様な場所には思えなかった。
昼間だと言うのに、中は陽の光がまばらにしか届いていないらしくランタンを用意しなければならない位に暗かった。
「頼む、悪魔を退治してくれ!」
懇願するネッド老人の話を、ヘンニーとダムドはあまり信じてはいなかった。酒に酔った老人が、大方見間違えたのだろうとしか思えなかったからだった。
ランタンを掲げ、先頭をダムドが。そのすぐ後ろをネッドが続き最後尾をヘンニーが警戒しながら進んで行く。先程とは打って変わって、2人の表情に油断は見られない。話を信じていないからと言って、油断しない理由にはならなかったからである。
ネッドの案内で、3人は迷路の様な道を進んで行く。ネッドは抵抗したが、ヘンニーが力で解決した。時折、ダムドが壁に目印を付けているのは“もしも”の時の備えだったが、進むにつれて増えていく干からびた犬の死体がその代わりになっていた。
「こ、この奥だ。儂はこれ以上はごめんだ!!」
震える声で絞り出す様に呻いたネッドを、ヘンニーは問題なく解放した。戦闘になった場合、得体の知れない相手から老人を守りながら闘うのは難しいと思ったからである。もとより、ヘンニーもダムドもネッドを守るつもりなど毛頭なかった。
暗闇に目を凝らすダムドは、数メートル先に闇とは違った暗がりを見つけて立ち止まった。それを凝視する内に、ダムドは沸き上がる恐怖に戦慄した。
暗がりではない。
フードを目深にかぶった人影の様な姿が、通路の上1メートル程の高さに浮遊しているのだ。足は無く、人影と地面の間には明らかに空間が存在していた。
人影はゆっくりとした動作で振り返る。人影が完全にこちらに向くと同時に、ネッドが悲鳴を上げた。
それは、人ではなかった。
身の丈2メートル弱のボロボロのローブの様な何か。輪郭はぼやけてはっきりせず、風に揺れる煙の様に見えた。顔のあるべき所には何もなく、目と思われる場所には更に真っ黒な虚があるだけだった。
「あ、悪魔だ! た、助けてくれえ!!」
叫び声を上げながら、ネッドが出口に向かって走り出した。しかし、それは叶わなかった。
ネッドが逃げ出した途端、ローブの様な何かの姿が霧状になって追って行った。
尻餅をついたダムドの頭上を黒い霧の塊が高速で通過すると、苦しそうなネッドの呻き声が聞こえて来た。
何かがネッドの顔を掴み持ち上げていた。顔を掴まれたネッドは絶叫しながら手足をばたつかせていたのだったが、何かの身体を通過するだけで抵抗にはなっていなかった。
やがて絶叫は呻き声に変わり、ゴボゴボとした不快な音へと変化していった。それと並行して、しわがれたネッドの身体がより一層細く枯れ枝の様になると、力無くだらりと垂れ下がった。
何かがネッドから手を放すと、ネッドはミイラの様に干からびて死んでいた。死体が乾いた音を立ててその場に崩れ落ちると、顔は苦痛に歪み真っ黒に変色していた。
「な、何だあれは?」
「止めろ、ヘンニー。こいつは死霊だ。奴には剣なんか効きゃしねえ!」
ダムドは、ヘンニーの肩を掴みながら叫んだ。
昔、何かの本で読んだ。人の命を喰らう不死の魔物。ゾンビやスケルトンとは違い、実体を持たないのが死霊だった。
名前までは判らなかったが、決して自分たちの勝てる相手では無い事は確かだった。
脱兎の如く出口を目指して走り出したヘンニーとダムドだったのだが、霧になって追って来る死霊を振り切る事は出来そうになかった。
「しかたねえ、やるぞダムド!」
「くそっ! 虎の子だってのに、こんな街中で使う事になるなんてよ」
吐き捨てる様に言ったダムドは、懐から1本のスクロールを取り出して素早く開いくと、早口でそれを読み上げた。
“魔力よ 触れざる者を討つ力となりて刃に宿れ!”
ダムドの声に反応したスクロールが淡い光を放ちながら燃え上がると、その光はヘンニー握る長剣を輝かせた。
雄叫びを上げて、ヘンニーが死霊へと斬りかかった。ネッドの拳を素通りした死霊の身体が、ヘンニーの長剣に斬り刻まれて行く。
「オォオオオオ」
聞く者を不快にさせる風鳴りの様な声が辺りに響くと、死霊はヘンニーの喉を狙って掴みかかった。しかし、死霊の両腕はヘンニーに届く前に斬り落とされて砕け散った。
暗闇に、魔力を宿した長剣が軌跡を残しながら乱舞する。その光が消える頃には、死霊は跡形もなく斬り刻まれて消滅していた。
息を弾ませながらヘンニーが座り込む一方で、ダムドの耳は通路の奥で何かが割れる様な音を捉えていた。
「これが卵か?」
ダムドが拾い上げたのは、亀裂の入った小さな水晶だった。少し青みがかった水晶を、ダムドは腰の袋の中にそっとしまうとヘンニーと共に盗賊ギルドへと戻って行った。
ギルドではロブが、ケガこそしていないが明らかに消耗している2人に驚いていたが、報告だと分かると早速ジュールへと取り次いだ。
報告を受けたジュールは目を丸くしていたが、すぐに平静を装うと引き続きオリバー捜索を打診したのだったが、危険な任務の遂行を理由にヘンニーとダムドはそれをキッパリと断った。
「……良いだろう。お前たちとの羽根の契約は、これで終わりだ。だが、オリバーの件で分かった事があったら知らせてくれ。礼は弾もう」
挨拶もそこそこに、ヘンニーとダムドは盗賊ギルドを後にした。さっさと帰って休みたいと言うのが本音だったが、見つけた水晶に禍禍しい物を何となくだが感じ取った2人は、ジュールに渡すよりもハイリム王国国立魔法学院に持って行く事を選んだためだった。
その日の夕方、魔術学院では自分の研究室に戻ったアルド・ウェイトリー教授が雷に打たれた様な衝撃を受けていた。
冒険者から持ち込まれたと言う割れた水晶に、恐ろしい死霊魔術の片鱗を見たからである。それは同時に、現在、学院内で起きている重大に事件と繋がる証拠の可能性があったためだったが、使いに出ているエセルと言う名の騎士が戻るまでは一部の関係者以外には知らされる事はなかった。
それから1週間後。
イルーシャン川に犬や猫の死骸が流れる様になったのを皮切りに、事件は大きく動き始める事になる。




