第二十四話 レプスレポート3
この物語は、倉庫娘のサモナー道中記 本編 第百九話のサイドストーリーになります。
先に本編 第百九話をお読みになりますと、よりお楽しみ頂けるかと思います。
ご無沙汰しております。レプスです。
この頃、住んでいる森で人間を良く見かけます。
闘いの訓練をしているみたいで、大勢の人間が1度に森の中へとやって来るのですが、それが騒がしくて困ります。
人間の声は、特に耳につくので。森に住む私たちの迷惑も考えて欲しいものです。
声と言えば最近、少しだけど主人たちの言っている事が解る様になってきました。
主人の言っている事は、言葉は解らなくても、不思議と頭の中にイメージが広がって理解出来るのですが。主人の仲間たちの言葉は難解で、私には理解出来ませんでした。
何て言うか、音に繊細さが無いって言うか……。とにかく、雑音みたいで解りにくいのです。
だけど、やっと、少しだけですが解って来たのです。
私の分析によると、『くん』は男性に。『ちゃん』は女性に対して使っている言葉だと理解しました。『さん』は……まだ、良く解りません。
これにより、偉そうな人間『アルバート』と弱そうなエルフ『ニードルス』は男性。
主人より小さい『ジーナ』と、アルバートと似た匂いだけど『カーソン』は女性だと解ります。
ですが、ここで解らない事が出て来ます。
私の後輩、ハーピィの『フリッカ』は何となく女性で解るのですが、あの、どうやっても石にしか見えない『ゴーレム』も女性と言う事になるのです。
そして、この私、レプスは『くん』であるため、男性と言う事になってしまうのです!!
これは一体、どうした事なのでしょう??
私だってそろそろ、素敵な殿方と恋の1つもして良い年頃なのに。
……何だか、自分に自信が無くなりそうです。
でも、落ち込んでいる時程、お仕事が捗ったりする物です。
今、私は主人に喚ばれて不思議な森に来ております。
何が不思議かって、森全体が力にみなぎっているみたいな。
生えている草や実は、どれも色鮮やかでとても美味しそうです。
更に、その森に暮らす動物たちは、私の知っている大きさを遥かに超えているのです。
その理由は、すぐに解りました。
驚く事に、この森にはユニコーンが暮らしていたのです!!
おばあちゃんたちの子守唄や寝物語に、ほんの少しだけ出て来た事があったけど。
本物は、すごく綺麗で。とても言葉では言い現せない程でした。
しかも私、ユニコーンの背中に乗せてもらったのです!!
背の高い草の間を、私が跳ねているのを見たユニコーンは、私に優しくこう言ってくれました。
「さあ、乙女よ。私の背に乗りなさい」
私の頭に響いた声は、主人の品の無い声とは比べ物にならない程に優美でした。
だけど、私の胸は別の事にときめいていました。
〝乙女よ〟
ユニコーンは、私を『女性』として見てくれたのです!
ユニコーンの背中での一時は、とても幸せでした。
マディと名乗ったユニ……ううん、彼は、私の丸い瞳や毛並みをとても綺麗だと言ってくれました。
美しい角で、私の頭を優しく撫でてくれました。
夢の様な時間は、長くはなかったけど。
背中から降りた時、彼の匂いが残っていました。
お父さん、お母さん。そして、弟たち。
もしかしたらお姉ちゃんは、この森で暮らす事になるかも知れません。
でも、今の私では、幻獣の彼に遠く及ばなくて……。
だから私、立派なボーパル・バニーになって見せます!!
その暁には、1度、故郷に彼を連れて帰りたいと思います。
その日が来るまで、私、どんなに辛くても、主人の元で頑張ろうと思いました。
こんな親不孝な娘を、どうか許してください。
耳の後ろの毛を撫でる風に、この想いを秘かに託して。




