表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/29

第二話 ゴブリン兄弟

この物語は、倉庫娘のサモナー道中記 本編 第二十一話のサイドストーリーになります。

先に本編 第二十一話をお読みになりますと、よりお楽しみ頂けるかと思います。


※これは、バッドエンドを多分に含んでいます。

お気に召さない方は、お読みになるのをお控えくださいます様お願い申し上げます。

「明日獲れる獲物の数が分かれば、今夜のメシの量を決められるのにな」


 村のシャーマンが言っていた言葉だ。


 もう、動かなくなった弟を見ながら、そんな事をボクは思い出していた。


 始まりは突然だった。


 ボクたちの棲みかは、いきなりやって来たオーク供の襲撃を受けたのだ。


 族長を始め、多くの戦士たちが勇敢に戦ったけど、オークの群れには為す術が無かった。


 逃げ切れたのは、ほんの一握りだけだったろうか?


 ボクたち子供のほとんどは、オーク供に捕まって奴隷となった。


 幼馴染みのガガもドドも、弟のゼゼもいる。


 まだ、産まれたばかりのヨヨがいなかった事に、ボクはホッとしていた。


 でも、安心なんてなかった。


 徐々に、仲間の数は減って行った。


 やつら、獲物の獲れなかった時には、ボクらの仲間を喰ってやがったんだ!


 このままでは、いつか、みんな喰われしまうだろう。


 ボクたちは、何とか逃げ出す計画を立てた。


 この洞窟は、昔、人間が塩の石を掘っていた所。


 だけど、とても脆くて崩れて、だから捨てられた所だって聞いた事がある。


 オーク供は、奥の広間でいつも寝ているから、あそこが崩れれば、やつらをやっつける事が出来るかもしれない!


 ボクたちは、雑用をする合間に広間の柱を少しずつ削っていった。


 そして、その時が来た。


 オーク供は、人間の馬車って言う乗り物を襲って、蜂蜜酒をたくさん奪って来たんだ。


 争う様に飲んで、みんな寝込んでしまった。


 今しか無い!


 みんな、そう思った。


 ボクたちは、一斉に柱を崩した。


 地響きがして、洞窟の広間は崩れ始めた。


 ボクたちは走った。


 身体中が傷だらけで、腹ペコで。元気なんかなかったけど。


 逃げ遅れた仲間を、見捨てる事しか出来なかった。


 出口までたどり着いたのは、ボクと弟と、幼馴染みのガガだけだった。


 砂ぼこりが立ち込める中、ボクたちは月の光を見た。


 外だ。


 そう思った瞬間、砂ぼこりの中から、オークの腕が飛び出して来た。


 足を掴まれたガガは、助けようとするボクに向かって叫んだ。


「はやく逃げろ! 族長の血は、お前たちだけだ!!」


 族長の血を絶やしてはいけない。


 これは、ボクたちの村に言い伝えられている掟だ。


 村1番の戦士、ゴゴルの息子ガガ。


 あいつは、その掟に従ったんだ。


 ボクと弟は走った。


 力の限り、息の続く限り。


 どのくらい走ったろう?


 もう走れないと、ボクも弟も、その場にしゃがみこんでしまった。


 振り返ってみたけど、オークは追って来てはいなかった。


「ジジ兄ちゃん!」


 弟か、ウサギの毛皮を手渡してくる。


「お前、持って来てたのか!?」


「だって、約束だから……」


 ……約束。


 そうだ、約束だ。


 ボクたち兄弟が獲ったウサギの皮で、妹の産着を作るって。


 どこかで無くしたと思ってたのに、弟は大事に隠してたんだ。


「帰ろう、みんな、森の反対側にいるハズだ!」


「うん!」


 ボクは、弟の手を取って歩き出した。


 その時、森の中に光が見えた。


 火? 松明?


 とにかく、灯りだ。


「もしかしたら、村の誰かかも知れない!」


「行こう、ジジ兄ちゃん!」


 震える足を、無理矢理動かしてボクたちは急いだ。


 !?


 急に、灯りが消えてしまった。


 どうして?

 待って!!


 灯りのあっただろう、そこには何もない。誰もいない。


 弟は、今にも泣き出しそうだ。


「泣くな! ボクたちはもう、戦士になったんだから!」


「……う゛ん」


 さあ、帰ろう。


 歩き出したボクは、後ろに重さを覚えた。


 弟が立ち止まってる。


「おい、歩け……」


 弟の首が無かった。


 えっ!?


 次の瞬間、何かの衝撃を背中に受けて倒れた。


 立ち上がろうとしたけど、上から背中を思い切り踏まれた。


 そして、お腹が熱くなった。


 もう、手に力が入らない。


 かすむ目に、弟の顔が見えた。


 そうだ、妹の産着に飾りを着けてやろう。


 赤い木の実は、もう採れないかな?


 黄色い花は、春まで咲かないかな?


 ボクの左手に、弟の手の感触が。


 目がかすむ様に、手の感触もかすんで。


 みんな、真っ暗になったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ