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第十八話 解呪についてニードルスの考察

この物語は、倉庫娘のサモナー道中記 本編 第七十九話から第八十二話のサイドストーリーになります。

先に本編 第七十九話から第八十二話をお読みになりますと、よりお楽しみ頂けるかと思います。

 〝呪いを解く〟


 魔術学院に入学して、まだ間もない私が、この様な難題に挑む事になろうとは。


 つい先日まで、呪いなんて物は信仰心の強い僧侶の扱う案件だと思っていました。


 私は魔術師であり、ウェイトリー先生の仰る様に魔法は学問であると考えていたからです。


 しかし、そうではありませんでした。


 以前にも話したと思うのですが、呪いには、大きく分けて2種類があります。


 1つは、〝負の念〟による物。


 もう1つは、〝魔法〟による物です。


 負の念による呪いは、死に行く者の怒りや悲しみ、恐怖や絶望などが起因となり、それこそ、神への祈りによる浄化が必要となるでしょう。


 しかし、魔法の場合はそうではありません。


 魔法による呪いは、負の念による呪いを疑似的に再現したり、対象の行動を制限するタイプの物が多い様です。

 これらは、当然ですが〝念〟ではなく〝魔力〟が起因となっています。


 となれば、私にも解呪が可能でしょう!


 付与魔術の中には、かかっている魔法を無効化する『解除』と言う物があります。……今の私には、到底扱えはしませんが。


 ですが、魔法陣を描き、少しずつですが術式を破壊していけば、理論的には魔法による呪いは解けるはずです。


 その為には、かかっている呪いの術式を見極める必要があります。


 魔力を目に集める事で、術式を読み取とる事が可能なのですが、問題も存在します。


 まず、呪われている対象に接近する必要があります。


 魔力を目に集める作業は、考えている以上に繊細で困難です。

 その為、遠くからでは細かい術式を判別する事が出来ません。


 また、何とか対象に接近し、術式を見る事が出来たとしても、その内容が複雑過ぎた場合には、私の手に負えるかどうか解りません。

 そうは言いましても、やるしかありませんが。


 対象への接近に関しては、アルバートくんが協力してくれました。


 アレクシア・ブルーム嬢をお茶に誘い、その隙に私が術式を見る事になったのです。


 発案はウロさんで、私には、そんな恐ろしい事は不可能だと思いました。


 だって、女性をお茶に誘うんですよ!?


 相変わらずの彼女の言動に、呆れと言うか、ある意味微笑ましさすら感じていたのですが。


「良し、やってみよう!」


 アルバートくんの口から、信じられない言葉が飛び出したのです。


 そして、アルバートくんは事も無げにブルーム嬢をお茶に誘い、ブルーム嬢もそれを了承したのです。


 エルフである私の目から見ても、人間であるブルーム嬢は美しく、聡明な女性です。

 そんな相手を、何事も無くお茶に誘うなんて。


 〝何故、そんな事が出来るのでしょうか??〟


 ……すみません。少し、取り乱しました。

 やはり、私には緊張せずに話せる女性が良いですね。


 アルバートくんの協力のお陰で、対象に接近する事に成功。

 術式を見る事が出来ました。

 幸い、術式は単純な物でしたので、これなら解呪が可能でしょう。


 数日後。


 残念ながら、私たちは試練の塔への挑戦に失敗しました。


 敗因は、考えればキリがありませんから今は止めておきましょう。


 それより、いよいよ解呪を行う時が来たのです!


 学院の施設を借りるには、使用理由と担任の許可が必要でした。


 理由は簡単ですが、担任の許可は……。


 正直に申しますと、私、あの人が苦手です。


 年若い人間ですが、その実力は、恐らく相当な物でしょう。

 魔法学を読み解く研究者としては、大いに尊敬する所です。ですが……。


 あの〝自分が知ってる事(出来る事)は、人も知っていて(出来て)当然!〟と言う考え方が理解出来ません。


 相手の立場に立って考え、行動する。

 それが、あの人からは欠如しているとしか思えません。

 人に教える立場なのですから、少しは考えて行動を……。


 おっと、愚痴が出てしまいました。


 とにかく、学院の施設を借りるのが難しい。

 であるならば、我が研究所を使う以外には無いでしょう。


 研究所の床に、ブルーム嬢から読み取った術式を解除する為の魔法陣を描き、その中央に解呪対象者に入ってもらいます。


 その状態で、魔法陣に魔力を流して解呪開始です。


 目に魔力を集めつつ、魔法陣にも魔力を流すのは、中々に難しい物でした。


 ですが、解った事もあります。


 この呪いは、同時に呪われた者同士が見えない鎖の様な物で繋がっているのです。

 これが、同じ班以外の者とは試練の話が出来なくなる原因だと思われます。


 しかし、そうなると疑問も出てきます。

 何故、ブルーム嬢を観察した時にはこの鎖が見えなかったのでしょうか?


 近すぎた?

 或いは、目に集めた魔力が足りなかった??


 色々と検証してはみたい所ですが、今はそうも言ってはいられません。


 まずは、この鎖を断ち切ります。

 すると、今まで大人しかった呪いの術式が、輪になって対象の周りをフワフワと周り始めてしまいました。


 お陰で、私の解呪術式が呪いの術式に上手く重なりません。


 フワフワと逃げて、反発して、魔力を余分に消費してしまいます。


 試しに、鎖を切らずに解呪を行ってみた所。

 強烈な反発が、魔力の逆流となって私の中に流れ込で来る事になりました。


 結果、私は強い魔力酔いに。

 まさか、自分の魔力で魔力酔いなるなんて。


 それでも、なんとかアルバートくんとジーナさんの呪いは解除する事が出来ました。


 問題は私の呪いです。


 解呪するのは、もちろんウロさんです。


 彼女には、才能と天才的な閃き。そして、溢れんばかりの魅力があります。


 ですが、その行動は猪突猛進。

 その、最たる問題点は「人の話を聞かない」と言う所です。


「良いですか、ウロさん。

 まず、魔法陣に魔力を……うぷっ!」


「大丈夫だよ、ニードルスくん。

 見てたから、大体解ったし。

 昔、ゲーセンでこんなヤツやった事あるし!」


 ……これですよ。

 途中、訳の解らない事を言ってましたし。

 何ですか、“げえせん”って?


 しかし、彼女才能は本物でした。


 目に魔力を集めつつ、魔法陣に魔力を流すのですが。

 目の魔力が、まるで固定したかの様に一定になっているのです。

 また、魔法陣に流す魔力も安定しており、本当にどこかで経験済みな様に術式を展開していきます。


 が!?


「に、ニードルスくん。

 術式が良く解んないんだけど、どしたら良いの?」


 いや、出来てますから。

 と言うか、良く解らないのにそれなんですね。


「……だ、大丈夫です。

 そのまま、重ねて下さい」


 こうして、私たち全員の解呪が終了したのです。


 私が元気だったなら、彼女が泣くまで質問攻めにしてやりたい所でしたが。


 それは、後のお楽しみにしておきましょう。


 何故なら、彼女はこの後、あの人の元で助手をしなければならないのですから。


 私には、無事に帰る事を何かに祈る事しか出来ませんけど。

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