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第十五話 レティの報告書

この物語は、倉庫娘のサモナー道中記 本編 第七十五話から第七十七話のサイドストーリーになります。

先に本編 第七十五話から第七十七話をお読みになりますと、よりお楽しみ頂けるかと思います。

 ダングルド山 調査報告書


 報告者 レティ・フランベル


 先日、私の担当するクラスの生徒4名(同行者複数名有り)が『妖鳥の風切り羽根』採取のため、ダングルド山を訪れた。


 余談だが、生徒たちが私の雑務を手伝うのであったなら、風切り羽根などいくらでも都合した所なのだが。

 あえてフィールド・ワークを選んだのは、今回の件においては最善であったと思われる。

 また、そうなったのも私の教育の結果である所が大きいと言えよう。


 後日、彼らの提出したレポートを読むに、非常に興味深い記述があった。

 ダングルド山にて、アウルベアとの遭遇、戦闘。

 また、それらを秘密裏に研究していたと思われる魔術師の存在を示す物である。


 経験の浅い子供のレポートではあるが、事実なら重大な危険を招く恐れがあり、調査に赴くものである。


 今回の調査には、私の他に護衛の為、フランベル家より私兵2名。

 また、学院より魔法生物学のウディム・シトグリン。

 以上、4名が参加。


 現場は、緑山の中腹。


 数年前に採集目的で訪れた際には、この様な場所は存在していなかったと記憶しているが。

 森が切れ、30メートル程の平原が現れた。


 その中央には、倒壊した家屋。周囲には、死亡、解体されたアウルベアと思われる残骸が散見される。

 首や腕、魔石の類いが無くなっており、生徒たちか、彼らの雇った護衛の冒険者たちが持ち去ったと考えるのが妥当だろう。


 シトグリン先生の見解によると、爪や足裏の状態からこれらのアウルベアは、洞窟、或いは石造りの迷宮などからこの地に連れてこられた個体との事。


 家屋の瓦礫の中に、地下へと続く穴を発見。

 恐らく、ここを利用していた魔術師が魔力によって部屋を作り出していた跡と思われる。ただし、穴は下から上へ掘られており、何者かが這い出して来たと考えられる。


 瓦礫の中から、術式の残骸を発見。再生に成功(魔力消費、持続性に致命的な欠陥があったため、一部改編)。

 地下への螺旋階段と、研究室を発見する。


 無駄に長い階段を降りた先は、惨劇の現場の様なありさまだった。

 血溜まりの中に、通常サイズより明らかに大きなアウルベアの死体を発見。

 腕が4本あり、レポートにあったミュータント・アウルベアと思われる。


 シトグリン先生の見解によると、これは数体のアウルベアを人間ベースに合成した物と思われる。

 人間を素材に使用する事は、重大な魔法倫理違反になるが特に問題無し。


 レポートにあった通り、後頭部から赤い水晶を発見。

 魔力は全て無くなっており、十数個の破片になっていた。

 これは、戦闘によるものではなく、魔力を失った事によると思われる。


 ミュータント・アウルベアの全ては、学院に持ち帰りシトグリン先生の研究室にて解析が成される予定。


 地下研究室の一角に、微弱な魔力を発見。ベッドの下に、1メートル四方の『転移魔法装置』を発見する。


 極簡単な転移魔法ではあるが、安全性の面から私兵での使用を決行。安全確認。


 転移先は魔力によって作り出された小さな空間で、5メートル四方程の広さがあった。

 探査魔法が妨害されており、位置が特定出来ない。

 高すぎる精度から推測するに、古代遺跡の一部と思われる。

 更に、魔力の壁に術式を直接書き込むと言う信じられない方式が施されており、その術式が、自然魔力を少しずつ集め、この空間を維持していると思われる。

 術式は、未知の文字が複数存在し、再現や現段階での解析は到底不可能と思われる。


 空間の中央には石棺が1つだけあって、これが、レポートにあった『時を止める石棺』だろう。


 石棺の中には、1人の老人の死体が入っていた。

 老人の額には、アウルベアにあった物と同じ、赤い水晶が置かれていたが、既に魔力は無く割れていた。


 また、指には魔法の指輪が1つあった。

 これは、若返りの魔法が込められた指輪であるが、魔力は既に無く、効果は切れている様である。


 老人と一緒に、数点の研究書を発見。

 それにより、この老人は『ドミニク・ガルシオ(ただし、ドミニクは若返りの指輪を使用する際に付加される魔法名。真名であるガルシオを捧げる事で魔法効果が成立する)』で、不老不死の研究を行う魔術師であったと知る。


 ガルシオは、自分の美しい容姿を永遠の物とするため、不老不死の研究を始めた、低俗な魔術師であった様である。

 日記や研究書にかなりの抜けがあるため、詳しい過程は不明だが、この空間と石棺の発見や指輪の作成成功により、この山へとやって来た様である。


 何故、不老不死の研究者がアウルベアのミュータント化などしているのか?


 疑問であったが、シトグリン先生によると、アウルベアは強い生命力を持つ魔物で、長く生きた個体は大量の魔力を有し、不老化すると言われているのだとか。だとすると、その魔力を使った指輪を作成する事で、指輪の力を安定させようとしていたのではないか? と言う仮説にたどり着く。


 しかし、ガルシオにそれが出来たとは到底思えない。


 レポートを提出した生徒の1人、ニードルス・スレイルは、レポートの中で「あの程度の術式しか構築出来ない人物に、いくつもの高度な研究が出来るとは思えません」とあったが、私やシトグリン先生も同意見である。

 不老不死、魔獣のミュータント化、記憶や意識の転移。

 理想は高いが、実力は伴っていないと言わざるを得ないだろう。

 その結末は、意識転移の失敗による死であり、醜く年老いた身体の保存と言う皮肉な物になってしまった様である。


 アウルベアに生き残りはいない様であるが、ミュータント化した魔物の売買をしていた可能性があり、継続調査の必要性を進言するものである。


 以上が、今回の調査に関する報告である。

 また、この報告書をもって、今回の調査出立の許可願いとさせて頂きますのでご了承ください。


 了。

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