第四話 非情なるヤイコ様
この物語は「現代魔術活劇」である。
「あなた一体、何を召喚したの?」
ヤイコの質問にオレは答えられない。
まさか、少女を召喚してしまったなんて。
オレの戸惑いを察したのかさらに詰め寄ってくる。
「あの夜わたし飛び起きちゃったんだから。あなたの凄い魔力で。
あなたまさかドラゴンでも召喚したんじゃないの?」
いやいや、ある意味ドラゴンよりアカンヤツですよ、ヤイコさん。
もし、ヤイコにノラを召喚したことが知られたら、ノラに対して魔界が何をするか分からない。
ノラにベタベタ触りまくっり…汚いおっさんの手がノラの純潔無垢な身体を穢す……想像しただけでも腹が立つ。
絶対ヤイコにばれてはいけない! 絶対ノラを守り抜いてやる!
オレはポーカーフェイスを表情に繕い、ヤイコに言った。
「オレは女の子なんて召喚してないからな!」
「………」
「………」
やってしまったああああああっっ!
「まさかあなたの後ろにいるその女の子を…?」
「えっいうあちっがって、ええ?」
「――――――この」
ふっ…もう死んだ。ヤイコの鉄拳制裁という名の地獄がオレを待ち受ける。
「変態破廉恥あほアホやろおおおおおぉぉぉおお!」
拳×拳のスーパー連打がオレの体や顔に炸裂した。
☝☛
「何で女の子なんて召喚しようと思ったの?」
「おぼヴょってまぜんよ…」
「どうせいやらしいことでもしようと思ったんじゃないの?」
「ぞんだばごとべなじでずよ!」
「ふん、どうだか」
ヤイコから顔やら体やら殴られたオレは、少し羅列が変になっていた。
暫く氷で口を冷やした後、オレはヤイコに訊いてみた。
「ノラはどうなるんだ?」
「どうなるって、どうもならないわよ」
「いや、汚らしいおっさんとかに体中をこうべたべたと触られたりとか」
オレはおっさんがべたべたやっているジェスチャーをした。
「うん。されるわよ」
「どっちだよ!」
「こんなこと言う訳ないじゃない。上層部の方は今ちょっと怪しいしね。
それにね、この子はわたしが調べるし。中年の男性に触られるよりかはマシでしょ」
「…まあ」
オレは渋々ヤイコに納得した。けど、ヤイコとノラがベタベタする……
うん、想像するのは止めておこう。
「あっ! そうそう。召喚時の詠唱はどうしたの?」
「えっ?」
「召喚をする前に呪文を唱えたでしょ。
呪文って魔術師によって違うから、呪文でその魔術師の実力が分かっちゃう魔術師とかいるらしいわよ。
まあそれは、呪文は基本的にシークレットだから流出しないって話だけど。
それであなたのもオリジナルなんでしょ?」
「……うん」
「唱えてみて」
「………」
どうしよう。あの呪文を言うのはかなり恥ずかしい。けど、実際に召喚は成功した訳だからいけるんじゃないかって気持ちも無い訳ではない。
「分かった。笑わないで聴いてくださいよ」
・・・・・
「――――――――っぷ
あははははははーあはあー。あなた面白過ぎ」
「えっ?」
戸惑うオレ。
「いや、わたしは基本的な呪文の詠唱ぐらいは知ってるのかなって思ってたから、つい。
特に不屈の魂とか足となり友となりのとことか、ふざけ過ぎてて逆に凄いくらいね」
今も爆笑するヤイコと泣きたくなるオレ。
そして、やっと笑い止んだヤイコはオレをじっと見た。
ヤイコがこう人をじっと見たときは大体、質問を…
「それで一体その子は何者なの?」
急に核心をつく質問。流石魔術師、遠慮がない。
「分からない。まさか女の子が出てくるなんて…」
それは本当に分からなかった。この二日間はある意味苦悩の日々だったしね。
「そう…
まあ、まだまだあなたに訊きたいことはあるんだけど…一つ言っとかなきゃいけないことがあるの」
…こういう時のヤイコは非常に冷酷だ。
けど、オレにもそれなりの覚悟はある。例えその魔術界で拷問されようが、オレは責任を持ってノラを守ると決めたんだ。
オレはキュッと体を引き締める。
ヤイコの口が開く。
「これから、あなたの家で住むから。以上」
………はい?
今何とヤイコは言ったんだ? オレの家で住む?
オレは停止気味な脳をフル回転させる。
「……住むの?」
「うん」
「あっ…そう」
何も言えなかった。だって普通にもうオレん家に住む支度初めてんだもーん。
ふっ、モテ期到来か…
そう思わざるおえないですよ。
久々の投稿。
最後まで見てくれてありがとね!
(注・最終回ではないよ)