第三話 現代魔術と古代魔術
この物語は「現代魔術活劇」である。
オレは特質魔体らしい。
特質魔体って言うのは、極端に魔力の偏りがある部位のことで…って前説はいいか。
テーブルを挟んで、オレの目の前にいるブロンズの髪色の美少女に「あなたは異常ね」と今さっき言われた。
無限貯蔵…その能力を彼女はオレに淡々と説明してくれた。
「無限貯蔵っていうのは、満タンを知らない魔力タンクみたいなもんよ」
「魔力タンク?」
「ええ、魔術師じゃない人にはそんなもんは備わって無いんだけど、魔術師たちには魔力を溜めることが出来る入れ物みたいなものが備わっているの。
だから、魔術師は自由に魔力をそのタンクから放出することも出来るし、溜めることも出来るの。ちょっと前に話したけど、古代魔術って覚えてる?」
「うん、まあ」
古代魔術…何か知らんけど魔力の消費量が現代魔術ってのより大きい魔術のことらしい。
「なぜ、古代魔術が使えないかって言うとその魔術タンクに溜めてる分の魔力量では、支払えない程魔力を必要とするからなの。それに比べて現代魔術はとても使用勝手が良い訳ね。
どうして、態々魔術を二つの種類に分断してるかっていうと、現代魔術と古代魔術では大きな違いがあるの。ちょっと長くなるかもしれないけど、いいわね?
わたしや魔界が使っている現代魔術は魔力消費量が少ないっていうのもあるんだけど、何ってたって利便性が半端なく良いの。まあまず、魔力耐性のある武装をしなくちゃいけないんだけど…」
「武装って何?」
「…分かった、バッグに入ってるから見せるわ」
ヤイコは横に置いてあったバッグからごそごそと〝武装〟というものを取り出しているようだ。
「あった、あったコレ」
ん? これが武装?
オレはもっと重そうなガチガチした感じのを想像してたんだが、ヤイコが見せたのはとても軽そうで柔らかそうな布生地でできた肘ぐらいまである手袋の様なものだった。
「これにちょっと集中して魔力を加えれば……」
ヤイコは実際に手袋をつけて、ぬ~と力を入れているような顔そしていた(ヤイコのこんな表情もいいね)。
すると手袋は段々変形していき、オレが最初想像したようなガチガチしたものに変形していた。
「これが魔術…」
正直かなり驚いた。
「もう武装はしまっていいわね?」
オレはコクリと頷いた。
ヤイコは武装をバッグにしまい、こっちに振り返った。
「現代魔術のことについては大体理解したわね。
今度は古代魔術についてだけど…うん、そうね。古代魔術っていうのは基本的に魔方陣を扱うの」
「魔方陣…って態々その度その度、描いていくのか?」
「まあ、そのやり方もできるけど、そんなやり方じゃ効率が悪いわ。
抑々、古代魔術を扱うことができる魔術師なんて、長年修行を積んできた老魔術師とか、代々家系で秘伝みたいな古代魔術を受け継いでいる人ぐらいしか使わないわ。そんな人たちでも滅多に使わないし、使ったとしても精々一回が限度よ。
だから、古代魔術を誰かが使っているところなんて見たことないんだけど実際に使う時には、魔方陣を空間に描くらしいの」
「???」
空間? 急に分からなくなってきたぞ…
「まず知っている魔術の魔方陣を思い浮かべて、その想像を魔力と一緒に出すの。その時点で普通の魔術師なら魔術タンクはカラカラね。
さらに、その空間に描かれた魔方陣に魔術を唱えるの。普通の魔術師ならここでもう魔力タンクは壊れちゃってるわね。
そしたらその魔方陣を貫いて、魔術が発動されるって訳よ、分かった?」
「………」
「うーん、分からんか」
ヤイコも若干最初っから諦めていたのか、こんなに喋らしてしまったのにあまり怒った様子はない。
ふー良かった…
「無限貯蔵の話に戻るけど、無限貯蔵は所謂神話的な特質魔体だから、実際にあなたに本当に無限貯蔵が備わっているかは分からない。
けど、あなたが古代魔術を発動させたことは紛いようもない事実だわ」
そう言うと、ヤイコはオレの方をじっと見つめる。
「わたしも少しあなたに質問していい?」
「? 何ですか?」
ヤイコはスッと息を吸う。
「あなたがした魔術は召喚って言ったわよね?」
「………」
ヒヤリとオレの額に一筋の汗が流れた。
「あなたは一体、何を召喚したの?」
それは、オレが一番答えにくい質問だった。
オレは後ろにいる、その何をちらりと見た。
少女は只、無表情を崩さずオレをじっと見ていた。
ふ~…書いた書いた。
てか、誰かコメントくれ~