王様と三人の料理人
読んで頂けると嬉しいです!
むかしむかし、とある王国に、とても悪い王様がいました。王様は貧しい民からも容赦なく税を取り立て、自分に反抗する貴族はすぐに処刑します。
王様の両親は既に亡くなっているので、誰も王様を止める人はいません。
そんなある日、お城で料理コンテストが催されました。貴族に推薦された料理人が、お城で料理を作り、それを王様に食べてもらうのです。
会場となるお城の広間には、料理人が三人。王様に認められれば、赤いリボンのかかったトロフィーが贈呈され、店の評判も上がります。
コンテストが始まり、最初に王様に料理を献上したのは、でっぷりと太った男の料理人でした。
その料理人は、胸を張ると王様に言います。
「王様、私が提供するのは、極上のステーキです。どうぞお召し上がり下さい」
王様のいる玉座に運ばれてきたのは、ジュウジュウと音を立てる焼きたてのステーキでした。
王様は、何も言わずにそのステーキを口にします。溢れ出る肉汁。口の中に広がる肉本来のうまみ。確かに、そのステーキはとても美味しいものでした。
でも、王様の心はどこか満たされません。王様は、フウと息を吐くと、一言だけ言いました。
「……優勝候補として考えておこう」
次に料理を提供したのは、花柄のオシャレなワンピースを身に着けた女性の料理人でした。
彼女は、ニコニコと笑って言います。
「今回私が提供するのは、華やかでボリュームたっぷりのサラダです。栄養のバランスも取れていますよ」
王様の所に運ばれてきたのは、鶏肉、レタス、トマトなどの入ったサラダ。花の形に切られた人参も入っています。王様は、また無言でサラダを口にしました。
レタスはシャキシャキで、鶏肉も柔らかい。美味しいサラダでした。
でも、やはり王様の心は満たされません。王様は、静かに言いました。
「……まあ、悪くなかった」
最後に料理を提供するのは、十代後半になったばかりというような年齢の女の子。茶色い髪を三つ編みにしたその少女は、おずおずと前に出てきて言いました。
「……あの、本日は、コンテストに参加させて頂きありがとうございます。私が提供させて頂くのは、優しい味のお粥です……。お口に合うか分かりませんが……」
すると、宰相が少女の側に近付き言います。
「大丈夫。そんなに緊張しないで。君は農家の娘だが、君の料理の腕はこの私が保証する」
少女は、その貴族の方を見ると、安心したような笑顔で答えました。
「はい、ありがとうございます」
見学していた他の貴族達が、ヒソヒソと話しました。
「見て、あの子。ボロボロのワンピースを着て。本当に田舎の農家の娘って感じね」
「本当にあの子が美味しい料理を提供できるのか?」
「でも、あの宰相が推薦したみたいだぞ」
そうこうしている内に、玉座に少女の料理が運ばれてきました。そのお粥を見て、王様は目を見開きます。
「これは……」
王様はしばらく呆然としていましたが、気を取り直したように「いただきます」と言ってお粥を口にしました。
卵と少量の野菜の入ったアツアツのお粥。王様は、そのお粥を無言でバクバクと食べ続けます。そんな王様の顔を見て、貴族達は驚きました。
王様の目からは、ボロボロと涙が零れ落ちていたのです。
お粥を食べ終えた王様は、スプーンを器の中に置くと、静かな声で言いました。
「ごちそうさまでした。熱かったが……とても、おいしかった」
そして、王様は少女の方を見ると、穏やかな声で尋ねました。
「お前、どうしてこのお粥を私に献上しようと思った?」
少女は、おずおずと答えます。
「宰相様から、伺いました。国王陛下は、昔から体が弱くて、よく寝込んでいたと。そして、そのような時には母親である妃殿下自ら作ったお粥を好んで食べていたと」
そう。王様の母親は、当時お妃様であったにも関わらず、自身でお粥を作るような人だったのです。
王様は、そんなお妃様が大好きでした。お妃様の作ったお粥はもう食べられないと思っていたのに、少女はお粥の味を完璧に再現してみせたのです。
宰相は、少女の肩にポンと手を置いて言いました。
「陛下。この少女は、話を聞いただけでその料理を再現できる能力があります。贔屓をしろとは申しませんが、身分や服装でこの子を判断しないで頂けるとありがたいです」
◆ ◆ ◆
後日、コンテストの結果が発表されました。優勝したのは、お粥を献上した少女。お城で開かれた授賞式で、少女は笑顔でリボンのついたトロフィーを受け取ります。
貴族達は、温かい笑顔で少女に拍手を送りました。
三題噺、難しいです!




