35話 伝わらぬなら、伝えてしまおうこの想い
『アスペルガー症候群と言うらしいの』
リアの言い方から察するに病名のように聞こえるが、どうも違うらしい。
『病気...とは少し違うかのぅ?』「症って病名を指す言葉じゃないの?」
字の持つ意味合いはそうだとしつつも、リアが言うには耕助のASDは脳の障害らしいとの事だ。
『今度三歳にPCとやらを一緒に眺めながら検索してみるかのぅ♪』
「妄想は後にして」『そうじゃの』『...』
思わず突っ込みを入れてしまった。どうやら私だけでなく、耕助も早く知りたいらしい。もっとも少しソワソワする感じで、私のようにイラッとした訳ではないが...
『お主は短気じゃからの』「そんな事はいいから!」
さっきのお返しとばかりにリアに突っ込まれた。私が短気を起こすと、やれやれといった感じでリアが話しだす。
まず最初に例え話としてリアが
太郎花子問題とアイスクリーム課題
と言うのを出してきた。それを耕助に聞いてみたら
『カナー自閉症の事かな?僕は違うと思っていたけど』
そんな事を言い出した。耕助が言うには
太郎花子問題(サリーとアン課題)は分かるが、考えないで話すと勘違いする。
アイスクリーム課題は紙に書けば分かるが、頭の中だけで理解しようとすると分からない。
それを聞いたリアが、やはり耕助はその特性がありそうだと解説する。
『それがアスペルガー症候群の特徴らしいぞぇ。聞く分に、耕助はまだ比較的軽症のようじゃの?』
そんなリアの説明を聞いて、耕助は何か思う所があったらしい。
『普通の人が一目で理解出来る事を僕は毎回考えてからじゃないと出来なくてね。おっとりしてるって言われる分には良いけど、鈍臭いって言われるのは辛かったなぁ』
そんな事を言い出した。逆にリアは
『カナー自閉症と言うのは三歳も知らんかったようじゃのぅ...ADHDとは聞く限り違うようじゃし...』
『僕が知る範囲ならカナー自閉症は言葉に詰まる、出てこない症状らしいよ』
耕助の言った症状に疑問を抱いたようだが、そんな事より
「話を先に進めましょう。結局その脳の障害で、耕助は私たちの環境に無関心でいられるって事なの?」
『どうなのじゃ耕助?』『自分ではわからないよ』「えぇ〜?!」
私が聞いた事に、耕助は答えられなかった。だがリアは
『やはり自分では分からぬか。なら...』
2つの状況と、その時耕助が取った言動を解説し始めた。
1つ目...沙織とラーメンを食べに行った時、過去で純玲と沙織に配慮出来ていた事
2つ目...セシルが耕助に紳士的配慮を求めた時、我を通し続けた事
これらをイメージしやすいようにリアが対比構造で話してくれた。
『どうじゃ?耕助よ?お主、沙織や純玲を気遣えたのは自分が守るべき存在であると認知していたからじゃと言うのは分かったよの?』
『まぁ...そうだね』『次にセシルに対してじゃが...自分事と言いながら実際には生活そのものには不干渉、セシルともこれだけ口喧嘩のような態度を取りながらセシルの人格を無視しても問題無いと...本気で言う気かぇ?』
私は改めてリアの言葉を聞いて思う。立場が違えば違う行動をする。だが、それが正しいかどうかを対比構造で問われた時...普通は間違っていれば、反省するか反論するかだろう。そして反論する時は、相手の何かを否定してから自身の言い分を通そうとする。だが耕助は...
『やっぱり分からないよ。沙織と純玲は目の前で違う人間として接して来た。喜怒哀楽は目の前で視る事が出来た。明らかに他人事だよ。でも!セシルの事は一度も視てきた事は無いよ?鏡越しに観る時だってセシルが自分を観た時に感じる事と同じなんだよ?』
やっぱり私を気遣えなかった。今、耕助が話した事で一つ分かったのは
経験則なのだ。耕助は基本的に人を責めない。その人柄は身内とのやり取りで良く分かっている。だからこそ...その気遣いが、何故私たちに出来ないのかとヤキモキしたのだが...
「耕助?私の人格と、耕助の人格は別物だってのは...分かるわよね?」
『...あぁ、ソレは分かる。でも「ちょっと待って!落ち着いて聞いて欲しいの」...分かった』
私はまず、自身をどう認知しているかの説明から始める事にした。
身体ではなく、人格が魂魄にある事を意識すれば...
「だからね...前世では経験してなかったでしょうけど、これからは私を一人の女性として扱って欲しいのよ」
『...努力「や〜だ〜」いや、でも「何でよ〜私は女で耕助は男でしょ〜」そうだけど「アナタはピーマン苦手でしょ〜?セシルは美味しく食べれるモン♪」それは!?訓練がそうさせたんであって?!「男らしくなぁ〜い」...』
改めて言おう。人格が魂魄にある事を(以下同文)
『ゔわっはははっ!?ただのゴリ押しではないかぇ?!』
『そうだよな?!』「違うわよ?」『まぁ同じ手が正解やもしれんの♪』
耕助が納得していない事は感情で分かるが、それと同時に女性独特の感情とのやり取りを彷彿させる事で教育する。
『その方法は、我では思いつかんのぅ♪』「そうかしら?」『やめてくれぇ〜』
言葉とは裏腹に、耕助が情にほだされるのを私は感じていた。
実際に耕助が我を通そうとしていた時、(耕助に)自覚は無かっただろうが...正直女々しいと感じていた。コレは私が元男性だから持つ感情だと思うと同時に、何故前世が自覚出来ないのだと憤り...
前世に引っ張られている事を自覚し、自分が女性である事を自認した。
そうする事で耕助に、私とアナタは違うのだと認識させるのだ。
「これで何とかなりそうね」『マジかぁ〜』『観念せい』
私はこれで、これからの着替えやトイレ事情の心配も無くなると思った瞬間...
「ちょっと!?あの日を想像しないでよ?!」『君が想像「してない!過っただけ!」...どう違うんだよ...』『そう言えば我には来ないのう...』「来るわけないでしょ!?」
耕助...もっかい封印してくれないかな...
『邪魔者扱いかよ』「ゴメン...でも...『いや、これは勘違いしないで欲しいんだが...セシルの気持ちも分かるよ。人間だからね。今のが本心じゃない事は分かってる。自分事だからね』
まだ耕助が目覚めてなかった頃を思い出してしまい、不覚にもその時の状況が自分にとって都合が良いと...
一瞬だが頭を過ってしまった。だが耕助はソレが心の揺らぎだと、本気でそう思ってるのが伝わってきた。
『その思いやりの精神があるのに、セシルの恥じらいが分からんとはのぅ』
『いや、もう分かったから』「本当に?!」
リアが横から要らぬ突っ込みをしたと思ったら、耕助が急に理解を示してきた。
『あぁ...セシルが僕を自分じゃないと、さっき確認しただろ?あの時にね...何故か僕もセシルをいち個人だと、認識出来たんだ』
その理由が漠然としているな、と思ったら
『なるほどのぅ...相互理解が互いに逆転した為に、求める結果となったわけじゃな』
リアが注釈してくれたが、正直分かりにくい。そんな風に思っていたら
『そうかい?君が僕を突き放したから、僕は君を他人だと思えたって事なんだけど...』
「突き放したぁ?!」『モノは言いようじゃの』『ふふっ♪セシルも僕の仲間なんじゃない?』
耕助に同類扱いされた。言われてみればそうなのか?と自問しだしたら
『安心せい。人は己を俯瞰出来ぬ生き物じゃ。よって、さっきのような事は普通におこる』
リアにそうではないと解説された。確かに、私を同一視してた時の耕助とは違うと感じた。
アスペルガー症候群
コレの所為で、生き辛かったろうな...
他にも薬害肝炎?だったか...沙織たちと話していた事を思い出していると
『やっぱり、僕とセシルは他人なんだね』
先程とは違った...今度は拒絶にも似た耕助の疎外感が、私の魂に伝わってきた。
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