24話 石上三歳という男
クレアにセシルが起きたら我も起こすよう頼み、寝床にて精霊魔導核との接触を行う。
そして生体保全維持筒の扉が閉まるのを見ながら、我は眼を閉じる。
(ふっ...石上ときたら...)
我は先程までのやり取りを必要以上に反芻する。
セシルの手によって我は一応の復活を遂げた。じゃが精霊としての概念及び在り方は理解していても、これまでの記憶を有していない事に一抹の不安が無いと言えば嘘になる。
これまでセシル等と共に過ごし、楽しくはあったが嬉しいと思った事は無かったやも知れぬ。
感謝され、悪くないと思った事は幾度とある。人の気遣いを微笑ましく思う事はあれど、感謝した事は無かった。何故ならそこには信仰があったからじゃろう。それは精霊からすれば、四季が巡り生命が宿り没する事が当たり前の事象でしかないのと同義である為じゃ...
じゃからこそ...
石上が我を精霊として見ずに、人として接してくるのが...
『我は嬉しくて...たまらんのじゃな』
気付けば涙を溢している事に驚き
『泣いたのも...初めてではないか...』
肉体とは魂の器であると日本の書物にあるそうだが、ホムンクルスでも...
そこにあるものが魂ではなく精霊の自我であっても、生命が持つ情動が生まれるのだと...
我は創造されてから、初めて知った。
リアを含め異世界組が全員寝たので、しばらくは念話されない事に気付いた。
「さお姉、手伝いながら聞いてくれ」「?...分かった」
俺の要望に義姉は頷きながら作業を手伝ってくれた。
「耕助さんとは、どこまで話せたの?」「はい?!」「いや、そんなに驚かなくても」
俺の質問に何を考えたのか、義姉は驚きながらも答えてくれた。
「じゃあ知りたい事は知れたんだね」「ん〜...そうかも?」
聞いた感じ疑念は払拭できたと思ったが、義姉は小首を傾げながら会話を続ける。
「私らが知りたかった事は多分大体分かったけど、耕にぃが知りたい事は沢山あるんじゃないかな?」
主語が無かったせいで義姉は聞いてない義兄の思いを代弁しだした。
「まぁソレは耕助さんが知りたがった時にでも「ちょっと私が話したいんですけど!!」「えぇ...」
俺がまた機会があればと言おうとしたら、食い気味に耕助さんとの会話の場を要求され思わず引いてしまった。
「さお姉!水槽の端持って!落とさないでね!」「うえぇ!?」
俺は勢いで誤魔化す事にして義姉に指示を出す。
「重いから気を付けてね」
「分かったけど...なんか誤魔化された気がするぅ〜」
(気付かれたか)
俺はそう思いつつも更に指示を出すことで、時間を稼ぎ義姉が忘れてくれるのを祈る。
「ゆっくりでいいから!衝撃でヒビが入ったら、半分だけでも弁償してもらうからね!」
「ちょ、ちょっとそれは無いんじゃない?!お手伝い賃でチャラにしてよ!」
おっと!プレッシャーで忘れさせるつもりで言った言葉に、まさかの賃金要求が!?
「御駄賃強請るなら...「しないよ?!可愛い義弟に!お姉ちゃんそんな事しないからね!」...そう?」
俺の言葉に動物的勘で危機を回避しようとする義姉...
「よいしょ...こんな感じで良い?」
「...そうだね...まぁ良いかな」
誤魔化すように笑顔になった義姉に、俺は今置いた水槽の四隅を見ながら返事をした。
それを聞いた義姉が肢体をだらしなく伸ばしてへたり込む。
「疲れたぁ〜」「ご苦労さま」「!?ありがと〜♪」
予め用意しておいたペットボトルのお茶を手渡すと、義姉は満面の笑みで応えた。
(こうして見ると、歳の割に可愛く見えるんだけどなぁ)
「みっく〜ん?お姉ちゃん最近目を見るだけで、何考えてるか分かるようになったんだけどぉ〜」
義姉の声音を聞き、自分の頭を跳ね上げるとそこには...
「き、奇遇だなぁ〜...俺も何故か今だけは、さお姉が考えていること...分かる気が?!すっるぅ〜〜!?」
さっき見た笑顔と同じハズなのに、眼の色が変わっただけで...似ても似つかぬ顔に!
「みっくんは!いつも!!余計な事!!!考え過ぎなの〜〜〜〜〜!!!!」
「や゙、や゙め゙でぇ゙〜〜〜〜〜〜」
義姉に首を締められながら頭を揺さぶられ...俺は気を失ってしまうのだった。
...雨?
顔に水滴のようなモノが当たった事で目を覚ました俺は、自分の状況がよく分からず...
「なんで膝枕?」
少し身体を起こし頭の下にあるものを確認した。そして再度頭上にあるモノを確認すると
さお姉がヨダレを垂らしながら寝ており!
「うわぁぁぁ!!!」「!?ナニ!何?なにっ?!じゅるっ!」「汚っえぇ!!!!」
糸を引きながら垂れていたヨダレを啜った義姉を見て、俺は思わず悲鳴じみた声で非難した!
「き、汚いなんて「...ないなんて、思う?!」...思いません」
雨だと思ったモノが義姉のヨダレと知り顔をゴシゴシと袖で拭く俺を見て、流石にバツが悪くなった義姉は俺のヒナンに同意する。
「全く...なんで膝枕なんかしてたんだよ」「だって、気付いたら寝てるんだもん」「それは気絶!寝たんじゃなくて、さお姉に絞め落とされたの!!」「うえぇぇん!?怒らないでよぉ〜」
その後もさお姉とズレたやり取りをしていたら
『呼びかけても意識が無いからまだ寝てると思ったら、いちゃついてたのね』
セシルが割り込んできた。リアの魔力回路と違い魂の共鳴は、予兆は疎かタイムラグすら無い。
「断じて違う!」「違うって何がよぅ」「さお姉じゃない!」「?...あぁ...」
咄嗟に出たセシルへの反応に、さお姉が怪訝な顔をして突っ込んできた。
だが俺がすぐに否定すると、さお姉は多分俺の態度で気付いたのだろう。頷きながらお茶を手に取り、ゴクゴクと音を出して飲み始めた。
さっきまでと違いさお姉がなんか不機嫌になったなと思いつつも、先に俺はセシルに何用か問う事にした。
「で、何用だ?」『リアがアナタと話したいんだって』「???」
(いつも通り話しかけてくれば良いじゃないか?)
なんか変だなと思い疑問を口にしないでいると、セシルの方から答えが返って来た。
『直接話したいみたいよ』「そうなの?!」
いつの間にかスマホを持ってきたさお姉が手渡して来るので、俺は受け取りながらセシルとの会話を続ける。
『三歳...リアに何したの?』「いや、そんな事言われても...」
なんだか要領を得ない話に俺が戸惑っていると
『まぁ良いわ。会えば分かるわよ』「そう言えば(リアは)近くに居ないのかい?」
セシルが質疑応答を諦めたので、俺は当人に聞こうとすると
『今、戦艇員と何かやってるわ。それより、まだ三人とも居るの?』
どうやら別の事に従事しているようだ。俺はその後のセシルの問いに答える。
「いや、すみ姉と編集長は帰ったよ」『編集長って?』
「恵子さんの事だよ」『あぁそう言えば言ってたわね』
「誰かさんがお漏らし『うっさいわね!誰の所為よ!?』...嗚呼スマン」
二人が帰った事を伝えるとセシルが恵子さんの肩書を忘れていたので、からかってみたら藪蛇だった。だがそこに
「あの女、いい歳して漏らしたの?!」
さお姉が俺とセシルのやり取りから状況を察して、コチラを指指しながら大声で笑った。その声の大きさに思わず耳を塞いで顔をしかめた俺の魂魄に、不気味に木霊するセシルの声
『パンツ履けない女に笑われたくないわよ』
「パンツ履けない女?」
思わず気圧され零した俺の言葉に、さお姉のコメカミがピクリとする。
心に高まるセシルの感情と
目の前で震える義姉の感情が
『「あの女ぁ〜!!!!!」』
ぶつかり合う。その衝撃に
「うるせぇーよ!!!」
俺は心身共にダメージを受けながら、二人はトコトン水と油なのかと改めて思い知らされた。
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