22話 忘れていた感情と植え付けられた習性
「水拭き終わったー」「乾拭きもねぇ〜」「...はぁ〜い」
洗面所から戻ると、すみ姉がさお姉に的確な指示を出しており感心していると...
ソレに気付いたさお姉がこちらを見てボヤいてきた。
「みっくんは何してるのかなぁ?」
「今顔洗ってきたとこだよ」
俺がそう言うと、さお姉はプッと吹き出しながら
「さっき岩盤浴から帰ってきてサッパリしたとこじゃないの?」
笑いながら言ってきた。だが俺はその言葉を聞いてそれどころではなくなった。
「ちょっと待て!どうやって着替えた?耕助さんはいつ目覚めたんだ?セシルが寝たのは当然その後だよな?!」
少しパニック気味になっている自覚はあるが、確認しない事にはどうにも落ち着けない。帰りの着替えはタイミング的に耕助さんだろうが、行く時はどうだったのだろうか?
「心配しなくてもお兄ちゃんが着替えてたよ」「あの女は早々に寝たから大丈夫!」
すみ姉の言葉に安堵しつつ俺はさお姉がセシルの事を【あの女】呼ばわりしている事が気になった。
「昨夜から気になってたんだけど、さお姉...セシルとなんかあったの?」
俺の疑問にさお姉は目を見開き、すみ姉が苦笑いした。
「お兄ちゃんにも言われてたよねぇ〜」「放っといて!」「いや、無理だよ!」
すみ姉の突っ込みにさお姉はヘソを曲げたようだが、この短期間でそんな仲悪くなれるもんなのかと疑問に思いつつ何故そうなったのか聞いてみる。
「さお姉?セシルと何があったの?」
「耕にぃと話してたら突然割り込まれて、口論になったのよ!」
「とても編集社に務めてるとは思えない語彙力ねぇ」
要領を得ない答えにすみ姉が真っ当な突っ込みを入れる。
だが俺は同意するよりも今後の事を考え、さお姉に続きを促す。
さお姉の回答は相変わらず要領を得なかったが、何となく理解は出来た。が...
「セシルさんも災難よねぇ」「ちょっと待って!私が「悪いよ!」...悪くないモン」
すみ姉の容赦ない物言いに、さお姉がたじろぎながらも反論するが当然旗色は悪い。
まぁ大体の事情は分かったので俺はさお姉に、セシルの事をあの女と呼ぶのは止めて欲しいと伝えると
「みっくんまで耕にぃと同じ事言ったぁ〜...どうして私よりあの女の味方するのよぉ〜」
天を仰ぎながら泣き言を言ったさお姉が、そのまま床に三角座りしながら自分のひざに顔を埋めた。
「お姉ちゃん?それは仕方ないよ?分かるでしょ?」「ヤダぁ〜」
妹に宥められる姉の姿に違和感を覚えないシュールな光景に俺は頭を抱えたが
「まぁ...いつもの事か!」
と割り切り、手を叩いてから作業を始めるべく昨日買った物を取り出した。そうすると、すみ姉が横から何が出てくるのか興味津々で覗いてきた。
「ねぇ!なんで放置なの?!」「えっ!?」「いつもの事じゃない♪」
とりあえず面倒だから後回しにしたのだが、さお姉がむくれながら抗議してきた。俺は驚く事しか出来なかったが、すみ姉はいつもの事だと即答し笑った。
尚もブツブツ言いながら掃除が終わった後も片付けてくれたさお姉に「ありがとう」と言うと「どういたしまして」と、さお姉がやや不貞腐れたまま答える。
「じゃあ私はそろそろ帰るねぇ」
「すみ姉、今日はありがとう。助かったよ」
さお姉に感謝していたら、すみ姉がいつの間にか帰り支度を済ませ玄関に居た。
そんなすみ姉と別れの挨拶をして、玄関から見送りドアを閉めると開口一番さお姉が
「やっとくつろげるぅ〜」
とか言い出した。いい加減くつろぎたいのは俺だよと心の中で思いながら
「いや、帰らないの?」「みっくん?!愛しのお姉ちゃんを追い出したいの?!」
聞いてみたが、さお姉からは予想以上の珍回答が返ってきた。
・・・(はぁ〜)・・・
よく考えたら何故さお姉を泊めたんだろう。そんな益体もない事を考えていると
『暇じゃ...石上よ♪ちと遊びに来んかぇ?』
なんの脈略もなく今度は『お嬢ちゃんと呼ぶでないと言ったであろうが!?』リアが遊びたいと言ってきた。
『お主!今子守をしとるつもりになっとるじゃろう?!』
「・・・・・・はぁ〜〜〜〜〜・・・・・・」
思わずかなり長めのため息をついてしまった。すると
「お姉ちゃん......そんなに邪魔かなぁ......」
声がした方にギョッとして顔を上げると、さお姉がマジ泣きしており
「あぁゴメンゴメン!違うから!今戦艇から連絡あって、それで思わずため息出ちゃっただけだから!?」
慌てて言い訳した俺の言葉に、大粒の涙を溢していたさお姉が
「そうなの?」「そうそう!だから凹まないで大丈夫だから!」
「なぁんだ♪そっかぁ〜♪」
一瞬キョトンとし、コチラを見返してきた。それを見て相槌を打った俺に、さお姉は満面の笑みを浮かべ安堵の声を上げた。
「ふぅ〜」
さお姉に続き思わず安堵した俺はひと息入れた後、先に【あっち】と話すと断りをいれリアに呼びかける。
『悪いが『セシルが寝ている今、話しておきたい事もあるんじゃが?』...そうなのか?』
ん〜〜〜〜〜〜・・・・・・
ここにさお姉がいる以上、一人にする訳にもいかないと考えていると
『片付けを手伝って...お主の義姉は難儀じゃのう』
思考を読める相手だと話が早くて助かる。
「さすがリア。分かってるじゃないか(笑)やっぱそういう所...」
(しまった!)
と思った時にはもう遅い。
(便利だよな)と言いかけて止めたが、思考を読めてしまうリアには意味がない!
『気にするな、セシルで慣れておる。寧ろたった一言でそこに気を置けるお主には、感謝しておるぞ』
「だが言われた瞬間嫌な気には『その瞬間にやや遅れてだが自念と後悔、反省に至るまで思考が加速するではないか...しかも我の感情の起伏にまで留意して...正直お主の気遣いは我のような存在からすれば、かなり心地の良いものと言える。じゃが』...」
自身の失態に思わずやってしまったと、リアに謝罪しようとしたら...
まさか感謝されるとは思わなかった。だが、その続きの言葉に俺はハッとする事になる。
『お主は他者の感情に機敏過ぎる。それでは魄だけでなく、魂まで疲弊してしまうぞぇ。まぁ特定条件を満たした相手への防衛スキルは持っているようじゃが、アレは決して褒められたモノではない』
その言葉に俺は社畜時代受けた様々な出来事を思い出し、自身を守る行為といえど決して気持ちの良い出来事では無かった事まで思い出す。
だが、心を閉ざさずマトモに相手をしたら...コチラの思いも寄らない反論と査定が待っているのだ。反論しなくてもマトモな評価はされないが、少なくとも嫌味を伴う口撃目標にはされなくなる。俺はもう、あんな思いはもう二度と味わいたくない。
『それは分かるが、今はもう大丈夫なのであろ?なら、これからお主は幸せになれば良い。我も、セシルも、ソコにおる義姉とやらも、それを願っておるじゃろう』
リアの優しい言葉に、いつしか俺は泣いていた。それを見ていたさお姉が見当違いの事を言いながら慰めてきたが、俺は自分がまだ過去に囚われたままだと気付かされた。
だが...不思議と嫌な気分ではなく、心が満たされていく事に嬉しくなる自分がそこに居た。
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