1章 4 人の在り方
センシティブな内容が続きますが最後までお付き合い頂けましたら幸いです。
車に乗った俺はスマホを取り出しユー◯ューブでたまに見るさなえ先生の配信を見つけクリックする。
丁度猫山タヌキとのコラボでお誂え向きなアホな手紙?を読み上げていた。
『何これ?アニメ?』そう聞かれ
『違う...説明がムズいな...アニメの着ぐるみ着てリスナーから来た手紙を読んで回答する番組?みたいな?』
と言うとセシルが『何故これを突然見せてきたの?』
と聞いてきたので俺は『見てれば分かるさ』と言ってハンドルを握る。
『ソレ聞きながら運転するから見ててもらえるか?』
三歳にそう言われ私は『うん』と答えた。
正直意味が分からなかったけど今は何かに気を取られている方が良かった。
あんなに見たいと思った街の景色を私は今、見たくないと思っているのを三歳は分かってくれたのかな?そんな事を思ってスマホ?を聞いていると
その内容は外の風景や先程の店での客なんかより酷い気の触れたもので、思わず三歳に何でこんなの見せるのと言おうとした瞬間!!!
「まぁ〜たバケモノからゴミが投げられてきたよ!!」
とスマホの中の狸獣人が言い出した。言ってる事の中身は至極真当で
『うんうんその通り♪』『この獣人凄くまともじゃない♪』
と思わず拍手してしまったが、驚いたのはその後のさなえ先生の言葉だった。
文章から相手の知能だけでなく思考力まで読み解き、行動パターンのみならずその者の過去のあり様まで紐解き、最後には今の生き様から将来まで予見したのだ。聞いていて思わず
『この者は放っておけばそうなるだろうな...』
とこぼしてしまった。
『着いたぞ』
そう言って俺はスマホを手に取り車のエンジンを切る。
『今のは何だったの?読まれてる手紙以外にも凄い速さで文字が流れてたけど...あと言ってる事は理解出来たけど、あの番組で何がどうなるかまでは分からないわ』
まぁ当然だろう。セシルは俺が生まれてくる前に亡くなっている。魂が同じであるからソレは確定しているので、俺はその事をセシルに伝える。
『それはそうでしょうね...で、あの番組を見せたのは何故なの?』
そう言うセシルに俺は一度に説明は出来ない為、まず時代の流れについて説明した。
『そんな事になってるの?!ソレって生きづらく無いの?』
『当然生きづらいさ...言ってはいけない事、やってはいけない事、その分別が当たり前だと全ての人に言えなくなった。にも拘わらず建前上は常識は常識としてそこにある。だから皆疲弊して無関心になり、関わらないからさっきみたいなのが増え続ける...』
セシルの疑問に答えると再びセシルが問い掛けてくる。
『...スマホで見た番組...あんなの放送して良いの?あなたの言った事が真実なら批判が止まらなくなるんじゃない?』
その疑問はセシルがユー◯ューブを昔乍らのテレビと思っているから当然なので、まずはその誤解を解く。
『...要するにそのユー◯ューブと言うのは検索して興味のある物を見てる内に自動的に観たいと思いそうな番組をお勧めしてくるので、全ての人にさっきの狸獣人の番組が出てくる訳じゃないから怒られないのね?』
セシルの解釈に
『大体合ってるが見つかりにくいだけで、有名になればそれだけ人の目に入りやすくなるから見方の違う人に触れれば怒りを買う事もある。因みに多数の怒りを買いネット上で怒られる事を今は炎上って言うんだ』
俺の説明に『炎上?』とセシルが聞いてくるので
『まるで炎が燃え上がるように批判が収まらなくてどうにもならなくなる...みたいな?』
回答に困っているとセシルが
『さっきの狸獣人の番組中、目で追えない位の速さで文字が流れてたけどもしかしてアレが炎上?!どうして...』『待て待て!!違うから落ち着け!』
セシルの勘違いを解消する為言葉を続ける。
『まずおまえさんが炎上と勘違いしたのはコメントといって、あの時話していた二人に同意したり感心したりしてただけだ。更に言うならあのコメントをあの二人も見ていてその返事をしたりもするんだぜ』
そう言うと『そうだったのね。良かったわ』と相槌を打つセシルに
『炎上もあんな感じで違う場所で広がるんだけどな』と捕捉する。
落ち着いたようなので車を降り家に戻ると
『カレーとやらはそんなに美味かったのか?』
とリアが尋ねてきた。
『ただいまリア』そうセシルが言うと『お、おかえりなのじゃ...』とリアがたじろぐ...が
『セシル、何があった?』
どうやらセシルの変化に気付いたようだが、何故かキレが悪いような感じがしたので俺はリアに
『初めて話した時より俺達の感情?の読み取り具合、悪くなってないか?』
そう言うとリアは
『指輪で直接繋がっている時と違い今は魔力を使って話しておるからの。伝達率が下がっておる』
リアに続きセシルが
『おかげで気が楽でしょ。私達のはどうしようもないだろうケド...』
『初めて繋がった時にも言ったが...ん?そう言えばあの時程...アレ?...上手く言えないな...』
俺が困惑しているとリアが
『二人の境界線が曖昧な物から少しずつしっかりした物に変わってきておるのじゃろ?』
と言ってきた。続けて
『魄の方が元の魂に惹かれ安定しようとしておるのじゃろう。じゃが感覚共有を連続で繰り返し続けたら...分かるの?』
リアが怖い事を言ってきた。
『一日一回位にしときましょうか?』
そう言うセシルに俺は
『毎日食うつもりか?!』『そんな事しない...とは言えない』
そう答えるセシルにリアは
『食ったのはセシルでも身体は石上じゃろ?お主、戻ってきて食わんのかぇ?』
自分のお腹を擦りながら胃が満たされて無いのを感じたのだろう。
『...食べる...』
力無く答えたセシルの為帽子を脱ぐと、髪の毛が少し揺れた感じがした。
作品内で炎上取り上げましたが...コレが炎上しない事を祈りつつ...
作品タイトルの【異世界人Vチューバーになる】を実行する為に導入イベントとしてこの話を書きました。
コレがないとセシルが...この先は続きを読んで頂けたら分かるよう書いていくつもりなのでこのままお付き合い下さると嬉しいです。




