オープニング 18 補給からの新生活
『三歳、手を開いてそのまま待機。』
そう言われたが流石に中腰でこのままは保たない。
『ちょっと待て!この態勢は辛い。一度手を抜いて良いか?』
そう伝えたがセシルは
『時間が無いの!数分だから我慢して!もし時間の流れが違ったら時空間の接続が切れると困るのよ』
セシルにそう言われ
(無慈悲だ)と思いながら『マジかよ...』と心の中で嘆いた。
私の戦甲翔を妹の戦甲翔の隣に降下させ機体から降りる。
先に外に出ていたランシェに「久しぶり」と声をかけると勢いよく抱きついてきた。
「無事で良かった...」
そう呟くランシェに
「時間...無いんでしょ...」
と優しく囁きメモを渡す。
「...これは?」
と聞くランシェに
「さっきの巨大な手を見たでしょ?全ての大きさが違いすぎて飲食はおろか呼吸すらままならないのよ」
そう伝えると目を見開きランシェはメモに視線を落とす。
(原子レベルで違うって事は...)
小声でブツブツ言いながらもランシェは我に返り
「此処にある物資は有るだけあの巨大な手のひらに乗せますね。幸い私の戦艇に空気濃縮発生器があるのでそれも積み込みましょう」
と言ってきたので
「ありがとうランシェ、それと帝国の事だけど...」
私は感謝しつつ帝国が何処まで知ったのか尋ねようとするとランシェに遮られた。
「補給物資と一緒にそれもお渡しします。名残惜しいですが...」
そう言ってランシェが積み込み状況を確認する。その視線の意味を理解した。流石直属部隊だ。
「ここに居たのがアナタの部隊で助かったわ。もし他の部隊だったら...」
「一応その可能性も考えて殿を申し出たんですよ。お姉様が自力帰還した場合即確保する予定でしたが...巨大な手は良い意味で想定外でした」
ランシェは三歳の腕を見上げながら言った。
「ランシェ...本当にありがとう」
秘匿回線で改めてお礼をするとランシェが
「お姉様の為ですから...それとこの近くに通信中継器を埋めておくので必要な物資があれば連絡して下さい。一週間程度で用意しますので」
そう言いながら遠くで交戦中の味方を見る。
「分かったわ。じゃあ行くわね」
私もランシェと同じ方向を見ながら三歳にゆっくり動くよう状況を伝えてから合図する。
三歳は想定以上にゆっくりと手のひらを閉じながら腕を引き始めた。
『もう少し速くても良いわよ』と伝えたら『無理!!』って感情が返って来た。
巨大な手を見上げながらランシェは
(お姉様...巨大な手...どうやって使役してるのかしら?)
そう思いながらも気を取り直し意識を戦闘中域に戻す。
「総員再編成後敵中央に突撃を仕掛ける!!完膚なきまで叩き潰すぞ!!!」
(((…!…!…!…)))
声は聞こえないが大気は震えた気がした。
皆第一公女の無事を知り歓喜しているようですね。




