オープニング 17 妹との再会
「垂直飛行翼起動!」
ヨーマンの指示に従い1〜4番機の扉が開き折り畳まれたプロペラが伸び切ると同時に回転を始める。
「推進装置起動!飛翔確認後点火せよ」
と再びヨーマンが指示を出す。
「目標地点に到達後、各自作業に入れるよう準備して下さい。戦甲翔員は到着次第全機発艇願います」
クレアの指示も順次行われ問題ないようだ。
『石上よ、間もなくそちらに向かうが準備はどうじゃ?』
そう我が聞くと、石上はなんとも言えない歯切れの悪い思考を巡らせ返事を返すでも無く沈黙していた。
俺は何となくセシルが見ていた何も無い場所が気になり指で触ってみようとしたら、なんの感触もなくタイルに入り込んだ...
ビックリして手を引くと指はなんとも無く、再度触れてみるとやはりなんの感触もなく吸い込まれた。
好奇心に勝てず今度は手を丸ごと入れると肘手前まで吸い込まれた!
幸い穴の大きさより右前腕の方が太かった為そこで止まったが、今度は向こう側の俺の手がざわざわする!!
『石上よ。間もなくそちらに向かうが準備はどうじゃ?』
それどころじゃ無いと思いつつも何と答えて良いか分からずまごまごしていると
『三歳?何か不安な事でもあるの?まさか恐がってる?』
そうセシルに言われ何故か強がってしまった俺は
「風呂のタイルに手を突っ込んだら何か異世界側にある俺の手がざわざわする」
バカ正直に良く分からない返事をすると二人から
『アホじゃな』『バカね』と言われてしまった。だが俺は自信満々こう答えた!
「俺が握って手を突っ込めば帰れるのに?」
『...石上よ...手は無事か?ざわざわするのじゃろ?変質したりしとらんか?』
『異界渡りって命懸けなのよ?無知って罪だわ』
慌てて腕を引き抜き握ったり開いたり擦ったりしたが...
「良かった。なんとも無い」
心から安堵していると
『目的地視認!着陸態勢に入るのじゃ!』
『三歳!戦艇が着陸次第戦甲翔で出るから私を握って手をタイルに入れて!』
語らなくても分かる...実験台にされたのだ...
『それは違うぞぇ。お主の勇み足じゃろ』『結果オーライでいいんじゃない?』
二人にそう言われぐうの音もでなかった。
『軽く握って手を入れたら十秒程待って私の返事が無かったらこちらに戻して』
そうセシルに言われ「分かった」と頷き、手のひらにいる戦甲翔を潰さないよう空間を意識してタイルに手を入れるとまたざわざわする感触に襲われた。
三歳の掌に包まれながら時空の歪みを突破すると軍用回線から声がする。
「全機!再度攻撃!!押し返せ!!!」
良かった...三歳の言うざわざわはやはり友軍の攻撃だった。しかも相手が妹なのは僥倖ですらある。
『三歳!そのまま私が良いと言うまでジッとしってて!!』
『...えっ!?』
三歳が何か戸惑っていたみたいだけど今はそれどころじゃないと考え秘匿回線を開く!!
「ランシェ!私よ!!今すぐ攻撃を止めて!!」
そう言うとランシェは「よくご無事で...」と言いかけ…
「お姉様!!その巨大な手はお姉様なのですか?!」
とんでもない事を言いだした。
「そんな訳無いでしょ!掌の中に居るのよ」
そう伝えると「そうですよね。取り乱して申し訳有りません」と言った後
「撃ち方止めよ!!その巨手は敵では無い!!」
ランシェの号令と共に攻撃が止む。
「お姉様、色々伺いたいのですが実は余り時間がありません。マルプロイヒ帝国にお姉様の素性が漏れました」
それは私にとって途轍も無い衝撃だった......




