オープニング 11 情報共有と二人の関係 その3
小さくなる俺の感情を読み取りセシルが優しさ4割、憤り4割、呆れ2割位の感情になった。
『先に言っておくわ。音と衝撃が凄いのよ。小声でも大気が震えるの。歩く振動は多分水上ならマシにはなるわ。この魂の共鳴による回線なら私が戦艇に戻れば分かり易いと思うから詳しくはそれまで待ってね。あと念話の癖をつけて。早急に』
『分かった...それよりも食料をどうするかが先決じゃないか?』
そう俺が聞くと
『何となくどうしようも無い気がするのよね...』
呟いたセシルに多少の焦燥感は感じられるが焦ってはいないようだ。
『なんで落ち着いてるんだ?俺が逆の立場なら多分震えて泣いてるぞ』
念話で沈黙出来るってスゲーなって思ってると
『呆れて物が言えない状態の時って心まで詰まるのね。初めて知ったわ』
とセシルが本気で呆れていた。
突っ込もうと思ったが(情けない)とか(男らしくない)とか言われる気配を感じ別の質問をする事にした。
『感情は理解出来てもリアみたいに思考は読めないんだ。取りあえず説明してくれ』
(情けない)とか(男らしくない)の後(平和に慣れた日本人なら仕方無いか)みたいな感情を振り払いながらセシルは説明し始めた。
『さっき私が食べてた軍用食が戦艇に1か月分程あるのよ』
そう言ったセシルの感情は(マズイ)一色だったので思わず『知ってる』と思い浮かべてしまい『なんで知ってるの?!』と聞かれ『リアに異界の事聞いてる時ひたすら(マズイ)って感情が...』と伝えると『そっちか...軍用食が分かるのかと勘違いしたわ』と言われた。
『それだとあんたの思考が読めてるみたいじゃないか。読めてたら聞かないって』
そう俺が言うと
『それもそうね...それより「あんた」呼びは止めてもらえる?セシルでいいわ』
ほんの少しだが拒絶の気配を感じたので思わず『分かった』と答えた。
『それともう1つ、念話する時もっとハッキリ伝える意思を強く持って、そうじゃない時は意識を内側へ向けて欲しいの。中途半端は分かりにくいのよ』
感情だけは伝わるのでそれが苛つきよりもどかしさからだと分かるが、慣れるまでは無理だろうと思い
『努力する』と答えると彼女から『努力して』と圧を込められた。
『それよりお風呂場に行って貰える?私達の転移痕場所を見たいの』
そう言われ俺は『了解』と答えながら風呂場に向かった。




