オープニング 10 情報共有と二人の関係 その2
ここから元の一人称に戻ります。
何が臭いんだ?そう思っていると
『人の耳の中が良い匂いである訳が無かろう』
そうリアに言われ「さっきの右耳の違和感はあんたらかよ!?」と思わず毒ついてしまった。
『そんな事よりお主も食事中であったろ?意識を元いた場所に戻してみい』
リアに促され目を閉じてから自分の部屋を想像して開くと...
「戻った!!つぅか痛ぇ…」
そう声に出すとセシルから
『声を出さないで!凄く響くの!!』
と心に直接語り掛けられ
『セシル!石上と直接繋がっておるのか?!』
と今度はリアの声が頭の中で語り掛けてきた。
瞬時にこの違いが二人に共有されたのを感じると同時に今更ながら
『俺の平穏...無いなった...』
テーブルに顔を打ち付けたのだろう。痛む鼻と左頬を擦りながら声にならない程の小声で呟いた。
リアが俺とセシルに自分との魔力回路とは違う魂の共鳴によってそれぞれの魄が互いの魂を護ろうとした結果、魔力回路に似た回線が出来たのだろうと言ってきた。
因みに魂の共鳴による回線には時間の誤差が無いそうで、俺とリアとの魔力回路には刹那ではあるが時間差がありリアにはそれが少し気に入らないそうだ。
...二人は失われた俺の平穏には興味が無いのかセシルは黙々と(マズイという感情は伝わって来る)軍用食を食べている。
リアは第3階位界と呼ばれる日本が存在するこの宇宙に住む者達には認識する事が出来ない多次元について気の遠くなる程話し、最後にセシル含め魔導強襲戦艇の搭乗員の飲食についてどうするかが一番緊急性が高いと説明された。
『俺の平穏どころじゃないな』
そう心で呟くと
心に『...ごめんなさい』
頭に『ハナから気にしとらん』
心に『...リア』(怒気)
頭に『...すまん』
『納得いかんのじゃ!!我が二人の表層意識を読み取るより、お主らの心が通じ合う方が早いのじゃ!!長年連れ添った夫婦か?!』
『…不思議と違和感無い(わ)』
リアの癇癪に冷静に答えるとセシルが
『...少しスッキリしたわ』と言い
『分かる』と俺が思うとリアが
『長年連れ添った夫婦より厄介なのじゃあぁぁ〜…』
と言いその意味をセシルの感情から読み取り納得する。
『納得いかんが不毛なのでやめるのじゃ...我は(石上とこの時空の)情報処理をしとる故お主は石上と食料問題について話し合うが良い』
そう言い放ち魔力回路が切れたのを感じた。
セシルとも切ったようで彼女から驚きの感情が伝わってきたが
『本気で解析する気ね』
彼女の台詞と感情で真剣さは伝わってきたが意味は分からない...が今は、
「食料...大きさが問題...あっ!?...」
セシルからの無言の圧が…
鬼嫁ってこんな感じ?とよぎった瞬間...増した圧を誤魔化すように俺は飛び散って量の減った焼き飯を頬張った。




