オープニング 9 情報共有と二人の関係 その1
この話はリア視点でお送りします。
セシルは日本の記憶があるようなので足並みを揃える為、石上にクランディアの事は伝えずに境界階位や魔力、精霊の在り方等語り聞かせた。セシル同様石上の意識も手に取るように分かる故確認の必要もない。
『ではここからはセシルもしっかり聞くと良い。今から我なりに二人の状況を憶測も交えて語ろう』
我がそう言うと二人は頷いた。
『本来同じ時空に同じ魂は存在し得ないがこれは階渡りによるものじゃから魄の情報が違う為、二人が思うようなドッペルゲンガー現象もタイムパラドックスとやらも起きん』
二人共(魂と魄)の違いが解らぬようなので更に言葉を続ける。
『魂は二人が考えている通り輪廻転生するもの、その認識で構わん。魄は魂と肉体を繋ぎ合わせ精神や魔力の源にもなる。因みに肉体が滅びるか抜け出て魂魄だけの状態を幽体と言い、魄は魂を護る存在でもあるため魂だけでは現世に存在出来ぬ。また輪廻転生する時、天界に着くまで燃料として使われ入る際にも魄は使われる。伝承では天界に着いた時の魄の在り方で次の転生先が決まると言われ、魄はこの時天界で回収され新たな魄を纏い下界にて生を受ける。普通は魄と共に精神が失われる故転生後は記憶を失うのじゃ』
ここまで聞いた二人の疑問はそれぞれ違ったが順を追って話せばよかろう。
『生霊の場合は肉体に戻れれば良し。肉体との繋がりが切れれば普通は成仏、何らかの理由で現世に囚われ幽体や悪霊などに成ってしまうと...成仏出来なければ最後は消滅するしか無いの』
話を聞いて石上は納得したようじゃ...次はセシルの方を見ながら
『転生後たまに前世の記憶を宿す者が居るがアレは魂にこびり付いた前の魄があるのか色濃い経験や思いが魂に焼き付いたのかもしれん。後者の場合、数度の転生に耐えるかもしれんのう』
この時点で自分が属している世界に居る石上は落ち着くどころか集中力が切れだした。
我は良いがセシルは...
『石上!リアの話は今後の私達が生きてく上で必要な話よ。もっと真剣に向き合って!』
『えっ?!大体の疑問は無くなったけど?』
なお食い下がろうとするセシルに
『止めよ。石上に我等程の危機感は無いし日本をお主は知っておるのじゃろう』
我に言われ憤りながらもセシルは沈黙した。
『取りあえず軍用食でも食っとれ。その間に石上には我から伝えておくわい』
セシルはため息をつきながら意識を肉体に戻し軍用食を食べる為防毒マスクを外し…「臭いわ!!」と言うなり戦甲翔に逃げ込んだ。
『やれやれじゃのう』
戦甲翔の中で咽ぶセシルに呆れながら石上に意識を向けた。




