カレーを食べ終えた日に、家に泥棒が入った
「ふぁー!!食った!食った!!」
最後の一口のカレーを食べ終え、俺は満足気に腹をさする。
空になった皿を流しへ片付けると、コンロの上に置かれたままのカレーの鍋に目をやる。
そっと蓋を取り、鍋にこびりついたカレーを見てニヤリと笑った。
しかしすぐパン粉を切らしていた事を思い出した。
「あー…パン粉がなかったんだ。なんでパン粉を忘れるかなぁっ!俺のバカ!」
そう言って携帯をポケットに入れ、ヘルメットと原チャリの鍵を取り買いそびれたパン粉を買うため家を出た。
「暑っ」
玄関の鍵をかけながら、外の暑さにウンザリした。
スーパーでパン粉の袋をカゴに入れると、油があるかどうかも不安になった。料理中に油を切らすわけにいかない。「まあ、油なら多くあってもどうせ使うし無駄にはならない」そう思って俺はパン粉と油を手にレジへ向かう。
「あれ?小林じゃね?」
振り向くと同じ大学の石井がいた。
「おー、石井も買い物?」
「そう。何でもかんでも高くて食いもん買う金ほんとねぇよ」
会計を待つ間に少し話して「じゃあまたな」と別れた。
ほんと最近食べ物が高いんだよな。節約のため、なるべく自炊するようにしている。
たくさん作ったカレーもやっと食べ終えたところだ。
「育ち盛りの俺、自炊を極める!」なーんて。
アパートの階段を上り、部屋の鍵を開け………あれ?
鍵が開いてる?
俺…鍵かけて出たよな?
恐る恐る部屋を覗いてみると、部屋が荒らされていた。
クローゼットは開けられ、中の物が散乱していた。机の引き出しはひっくり返され、ペンや消しゴム…細々した物もばら撒かれている。
「え?え?何?え???」
泥棒?
心臓がバクバク音を立てている。
「あっっ!!鍋っ!」
俺は急いで鍋を見た。
そこにはさっき見たままの鍋があった。
「はぁあ…良かった〜」
泥棒は、キッチンは何もないと思ったのか手付かずのままだった。
俺はホッと胸を撫で下ろし、手を洗い、冷蔵庫からじゃがいもを取りだす。そして皮を剥いて小さめのくし切りにし、レンジで蒸す。
「チンっ」
ホクホクになったじゃがいもを、カレーがこびりついた鍋に投入。
鍋にこびりついたカレーが満遍なくじゃがいもに混ざるよう、丁寧に潰していく。
カレー味にマッシュされたじゃがいもを手に取って丸く形成。そこに小麦粉を塗し、卵液をくぐらせて、さっき買ってきたパン粉を塗す。
油が入ったフライパンで揚げれば…
「じゃーん!!カレーコロッケの出来上がりっ!」
出来立ての熱々をパクリ!
「うまーーっ!!いやーほんと、鍋盗まれてたらどうしようかと思ったわー」
今度はひき肉入れてもいいな…などと考えながら警察に電話した。