赤いリボンの結び目
片想いの相手に、彼女がいた。気づいてしまった。わたしのことをあんなに期待させて、結局裏切られた。でも、彼への気持ちは治る気配がなかった。
元カノとして、彼のことをわかった気になっていた。一部だけを見て、全てを悟った気になっていた。だからだろう、彼は私を手放した。彼の浮気相手の女の顔が目の奥に浮かぶ。醜いあのブスに奪われるだなんて想定外だったのに。
極論を言えば、あの女も彼のことをまだまだ知らない。逆もそう。ならば彼も私のことを知らない。ずっと、同じ景色を見てきた。でも頭の中だけは見えなかった。あの女も、見えているはずがない。
きっとそうだよ。
だろうに、あの女といるときの彼は、私といるときよりも何倍も楽しそう。
あの女がインスタに投稿した写真を見る。痩せこけて病院のベッドに、多くのチューブに繋がれているおばあちゃんのような見た目の女の人。ホクロの位置、エクボのつき方、たぶんあの女だ。
わかった。あの女はもうすぐ死ぬのだ。そうすれば私にも光がある。早く死んでくれと、願った。
いつの日か。持病の経過観察のためにその病院に行った。すると、たまたま彼とあの女の姿が見えた。余命宣告をされ、付き添いの彼が泣いていた。
いつの日か。持病の経過観察のためにその病院に行った。すると、たまたま彼とあの女の姿が見えた。余命宣告をされ、付き添いの彼が泣いていた。
決めた。
彼を幸せにすると。
醜いあの子に、命をあげよう。
赤いリボンで、永遠に結ばれますように。