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努力者転生す  作者: 時崎
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転生


「…ッ」


やけに綺麗な天井が私を迎えた。

中央には巨大な円形のステンドグラスがあり、幾何学的な模様が、色とりどりの光で内部を照らしていた。

…だが今はそんなもの見る暇はない。

私は近くあった長椅子を使って立ち上がっり、周囲を見渡した。

そこは広大な石造りのホールで、天井が高く、壁には古びた絵画や彫刻が施されていた。

左側の絵画や彫刻には神の愛の象徴である天使が施され、光もほんのりと差していた。

右側には悪の擬人化と宗教でいわれている悪魔のような怪物が施され、光も一切当たらず、暗い闇を作り出していた。

そして奥にはキリストの死を象徴する十字架……どうやらここは協会らしい。


「…何故私はこんなところにいる」


私が協会にいるのか分からない。そもそも、私が住んでいる町の周辺に協会なんてあった覚えはない。

ポケットからスマートフォンを取り出すと、電源が落ちていた。充電し忘れたのだろうか……だが、昨日は…昨日は


―――――私は昨日、何をしていた?


記憶が途切れている。そんなこと、今まで一度もなかったはずだ。

ただ寝ぼけているだけか?私が寝ぼける事なんてあるはずないだろ。

酔っぱらったか?私が酒を飲むわけがない、飲んだとしても私は遺伝子的には強いはずだ。

クッソ訳が分からない!


「やっと起きた?」


そんな私の疑問を吹き飛ばすように、突然、背後から12歳ほどの少女の声が私の耳に入った。

いつから私の後ろにいたのか分からないが都合がいい。この場所を聞き出しておこう。

こいつはガキだ。仮面を作らなくてもし簡単に聞き出せるだろう。

そう思い私は振り向いた…


「―――――なっ!」


私は雷に打たれたような衝撃を受けた。それも今までにないほどの衝撃を。


―――――こいつ髪が青い!


生まれつき青い髪を持つ人間など聞いたことがない!

まさかこいつは…義務教育すら終わっていない年齢で髪を染めているのか!

そして服装!

なんだその服は!喪服か?黒ならわかるが…青だぞ!青!

コイツは青がないと死ぬのか?

一体このガキの親は何を考えているんだ!

まさかこのガキも青髪が当然だと思っているのか!

…どこの高校も受け入れないぞ青髪など!


「あんた、言い過ぎじゃない? 義務教育は…終わってないけど、私女神だから。関係なんですよ。後これ地毛だから気にしないでよね」


「な、何ィ!」


まさか、声に出していたのか!そんなはずはない、この私に限ってそんなミスなどありえない。

ではなぜこいつは分かった。私の考えることを!

そして何と言ったこいつは!女神?こいつ中二病じゃないか!

私が苦手とするタイプの一つだ!


「私本当に女神なんだけど」


「そんなはずある訳ないだろ!」


やはりだ。やはり中二病と会話すると素を露にすることになってしまう。

だが落ち着くんだ、木場頼蔭。こいつはそういう時期なのだ。

自分が何でもできるというイカれた思考を持ってしまう時期なんだ。

こんな奴でも私は優しく接しなければ。

仮面を作るんだ。紳士の仮面を。


「あと私心読めるんだよね」


「…そうなんだ」


「・・・だから今あなたが仮面とやらを作っているのはまるわかりってわけ」


なんだコイツ!今まで誰にも見破られることなどなかったというのにこんなガキに見破られるのか!

私としたことが…こんなまともに義務教育も受けてなそうなガキに!


「さっきも言ったけど私は心が読めるのよ。だからさあんたが言ってる事耳に入ってきちゃうのよ」


こんなクソ中二病野郎に敗北したのか!しかも髪を青で染めてる奴に!この私が!


「…あんた、本当に口が悪いわね。まぁどうでもいいわ、あんたここに起きる前の事覚えてる?」


クソ!ふざけるな!この私がこんな奴に!…今までにないほどの敗北感だ!


「おーい」


ダメだ木場頼蔭。これもまた努力をし、こんなガキに見抜かれないほどの仮面を作らなければならない。


「無視って・・・強制的だけど時間もかけたくないし…仕方ないか」


『back memory』


「ガッ!」


なんだ……この感覚は。

まるで頭にDVDを無理やりねじ込まれるような――いや、それどころじゃない。

鉄の棒を脳の奥に突っ込まれて、ぐりぐりと掻き回されているような…感覚は!


『20130あったぞ!』


『私はこれで、将来の…』


『あの老害が!』


『ごめん…乾君』


『私は死ぬべき人間じゃ…』


「ウワァアアアア!」


そうだ私は刺されたんだんだ!あのクソみたいな老害に刺されて!

そのまま大量出血により私は死んだはずなのに。

だが…おかしい。今私は五感がはっきり機能しているし、呼吸もしている、刺された跡もない。

クソッ!何が起きている。こんな非科学的な事が起きるはずがない。

…そうか、このガキが何か知っているのか。


「やっとたどり着いた? あんた頭いいとか聞いたけど思ったよりも理解が乏しい奴なのね」


そんな挑発的で皮肉な言葉を私に投げかけ、ガキは椅子に勢いよく座った。


「…貴様何を知っている?」


「まぁ詳しい事は知らないわ。あたしが知ってることといえば……あんたが死んだことくらいね」


「もっと詳しく言うなら、あなたは失血死という形で死んだわ」


「じゃあこの状況はどう説明する! 呼吸、五感、私が生きていることを証明しているじゃないか!」


「そんなこといわれてもさ、私原理とか知らないんだよね。まぁ死んだって事は変わらないからさ、そんな疑問さっさと捨ててよ」


何なんだ、コイツは!

さっきから意味が分からないぞ。

今までにないほどの混乱の中で、どうしても理解できない何かがそこにあった。

あの刺されたような感覚、あれは一体何だったのか。夢でも幻でもない、確かな現実だった。

あの鋭い痛みとともに、何かが私の中に入り込んできたような気がした。

否定しようとしても、心の奥底ではそれを認めざるを得ない自分がいる。


認めるしかない…私が死んだことを!


「…はぁ~最初からそうしてよね。こんな時間過ぎなかったんだけど」


ため息をつきながら、ガキは少し苛立ちを隠せない様子で言った。


「…おい、私は日本に戻れることはできるのか」


「まぁ、戻れるわよ」


なんだと?戻れるだと?なら戻るしかないじゃないか! さっさと戻らせてもらおう。


「…ならさっさと戻してくれ。女神とやらも暇ではないんだろ?」


「…あんたそんな簡単に戻れると思ってんの? あんたは一度死んだのよ? あんたが日本に戻るにはね、異世界に行って魔王とやらを殺さないといけないの」


「…異世界だと」


まぁそんな簡単に戻れるとは思わなかったが、異世界とは…本当に馬鹿馬鹿しいが話はできるだけ遮らない方がいい。


「殺した後は自由よ。第二の人生を楽しんじゃいなさい!」


「…いつに戻れるんだ」


「もちろん自由よ。もう一度0からやりたいなら生まれたてでもいいし、青春を楽しみたいなら高校生でもいい、記憶はもちろんそのまま。…まぁあんたが魔王を倒すなんて無理な話なんだけどね」


「……それはどういうことだ」


「普通なら死んで異世界に行く人は特典をもらうのよ。なんでもじゃないけど、手から火や水が出るとか、雷を操れるとか、はたまたモテモテになれる目とか、異世界でもやっていける能力もらえるんのよ。でもあんたは日本に戻る事が特典になっちゃって、あんたは何の能力も無しに魔王を倒さなくちゃいけないのよ」


つまり私以外の転生者は何かしらの能力をもらっているということか。


「フ…フハ」


「え?」


「…フ……フハハ……フハハハハハハハハ! それだけか…たったそれだけの事で、この私を再び元の世界に戻してくれるのか!」


……これは私の人生において最大のチャンスだ!もう一度記憶を持ったまま人生をやり直せるチャンスを魔王とやらを殺すことで得ることができる。

―――――実についている。運はやはり私の味方なのだ!


「…あんたさ、さっきから過信しすぎじゃない?」


呆れた目で私を見ている女神という名のガキ。

同じ事を親にもクラスにも教師にも赤の他人にも言われてきた。

その数は計り知れないほどに。

だが、そんな事を言ったやつはみな努力もまともにしたことがない奴らだ。

そんな奴らにはいつも同じことを言っていた。


「…過信。 私は過信などしたことはない。常に私は最悪の事態を想定しているのだよ。私にとって魔王とやらを、この状態のまま倒すことなど私が想定していた最悪の事態よりもはるかに楽だっただけさ。もっとも私の想定を上回った出来事は今まで一度もないがね」


ここでの最悪の事態…喋れなくなるや四肢がなくなる、病気を持つ位と思っていたが、私を何の異常もないまま転生など、実質能力を持ったまま転生するようなものだ。


「…まぁいいわ。そこにたってなさい」


「待て。まだ一つ目の質問しかしていないぞ」


「…私も一つしかしてないから、トントンよ」


このままでもいいが少しでも私が有利になるように、コマを進めよう。


「では、最後の質問だ」


「…ったく、何よ」


「私以外に()()()()()転生者は何人いる?」


このガキの性格上死んだ転生者も含みそうだからな、保険のためだ。


「…んまぁ正確な数は分からないけど、30人くらいだった気がするわ」


…30人。さすがに少なすぎる。

やはり転生者には何かしらの条件が必要なのか。

それとも私が向かう異世界以外にも異世界があり一人一人がバラバラに転生しているのか。

ただ単純に、モンスターとやらに殺されたのか。

それともコイツが適当に答えただけなのか。

最後のは嘘だ信じたが、コイツの性格上適当に答えるというのはあってしまうからな。

仮に30人程度ならば私の頭脳に敵う奴はいないと見ていい。

…数人いや、十数人程度は利用させてもらおう。

私の安泰な生活のためにね。


「じゃあ、ちゃっちゃと始めるわよ」


そして、ガキはゆっくりと体を伸ばし、立ち上がった。

そしてガキは一定の距離、約三メートルほどを取り、私を見据えながら指を突き出した。


『door to a different world』


そのままじゃないか。もっと他になかったのか?


『open』


「ッ!」


凄まじい光に包まれ、思わず目を閉じてしまった。まぶたの裏に焼き付くような閃光が収まるのを待った。やがて、ゆっくりと目を開けると、私の立つ場所を中心に、ほんの一メートルほどの範囲に薄い金色の花模様が浮かび上がっていた。


これは…ルドベキアじゃないか。花言葉は確か……努力だったはずだ。


ふと、あの日のことを思い出す。受験の前日、母との最後の会話がこの花のことだった。

あのとき、なぜあの話をしたのか、今でもわからない。というよりこの先も分からないと思うが。


「よし、準備完了! さすがに能力なしでいくのは可哀そうだし一ついいこと教えてあげるわ」



「異世界は均衡に保たれている…これを覚えとけば、あんたでもなんとか生き残ることができるわ」




「それはど―――――『check』


その瞬間、私は黄色い光に包まれた。








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