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2話。ゲーム開始前に死ぬ筈だったモブ皇子は、史上最高の魔法の天才だった

「魔力暴走が収まってきたわね。本当に良かったわ!」


 母さんが俺に頬擦りをした。

 何があっても、この人は俺を愛し守ってくれるんだという得も言われぬ安心感に満たされる。


 ああっ、気持ちがいい……


 この母の温もり。前世では6歳の頃に失って、ずっと追い求めながらも、完全に忘れていた感情だった。


る、るーな(ル、ルーナ)……まぁま(ママ)……?」


 母さんに喜んでもらうべく、俺は懸命に言葉を発して笑いかけた。

 俺が助かったのは、紛れもなくこの人のおかげだったし、お礼がしたかったのだ。


 なによりこの反応で、俺の境遇がハッキリする。

 魔王ディアナの母親の名前はルーナだ。


「きゃああああああッ! ルーナママって!? もう言葉を!? すごいわ! ディアナ、あなたのお兄様はスゴイわよ!」

 

 母さんは大はしゃぎして、もう一つのベビーベッドに寝かされている赤ん坊を見下ろした。

 まだ自力で起き上がれもしないような赤ん坊だった。


 これで、母さんの名前はルーナであることが、確定した。

 なら、ここにいるのは赤ん坊の頃の魔王ディアナだと思って間違いないだろう。


 そう考えた根拠のひとつは、この部屋が庶民にはとても手が届かないような豪華な調度品によって埋めつくされていたからだ。


 ここは、宮廷か貴族の屋敷だと思う。


 魔王ディアナはセレスティア帝国の皇女だった。その身分にふさわしい部屋じゃないか?


 右手に発生した【闇刃】(ダークエッジ)は、消えろと念じると、次の瞬間、雲散霧消した。


 俺は考え込む。

 おそらく、ここはゲーム本編開始より16年前の世界だ。


 だけど、一つ引っかかるのは、俺の名前──ルークに聞き覚えが無いことだ。


 皇帝アルヴァイスには5人の妃がいた。その1人が、今、目の前にいるダークエルフの王女ルーナだ。


 他の4人の妃は、みんな帝国の大貴族家の出身だった。彼女らには、それぞれ1人ずつ息子がおり、次期皇帝の座を巡って、異母兄弟間で権力闘争を繰り広げていた。


 そう、ディアナの兄は、全員、腹違いであり、ルークという名の皇子は存在していなかったのだ。


 じゃあ、俺は何者だ……?

 なぜ、ゲームに未登場なんだ?

  

「きゃきゃ!」


 赤ん坊のディアナが俺を見上げて、弾けるような笑顔を見せた。俺の無事を喜んでくれているようだった。


「ほら、ルーク。ディアナも、お兄様はすごいわねって」


 母さんは俺をあやしつつ、ベビーベッドに横たえた。


「ルーク、もしも今みたいに熱くて痛いのが来たらが、さっきお母様が教えたお歌を歌うのよ。そしたら、痛いのバイバイできるからね」

「う、うん」


 俺はコクコクと頷いた。


「えっ!? そう、そうよ! とってもお利口さんね!」


 母さんは目を大きく見開いて喜んだ。

 

 返事をしただけで、こんなに喜んでくれるなんて、うれしいな。

 他人から褒められるなんて、何年ぶりだろう。


「でも、まだ1人で【闇刃】(ダークエッジ)を使うのは危ないわ。何かあったら、必ずお母様を呼んでちょうだいね。お母様は隣の部屋で、お仕事してるから」

「あい」

「良かったぁ! これであなたは、きっと無事に生き延びることができるわ!」


 なに……?

 母さんの不穏な発言に、俺は考え込む。


 おそらく本来のゲームシナリオでは、この俺──ルークは魔力暴走によって命を落としたんじゃないか?


 だから、ゲームに未登場だったのだとすれば、辻褄が合う。


 1歳かそこらの赤ん坊が、母親の言葉を理解して魔法を使える訳もないからな。

 前世の記憶を引き継いだ転生者の俺だから、なんとかなったのか……


 だとすると、とにかく魔力暴走で死なないように、普段から魔法を使いまくって予防しなくちゃな。

 生まれ変わってすぐに死ぬなんて、ごめんだぞ。


 ……それにルーナ母さんはこれから約7年後に、皇帝の命令で暗殺されることが決まっている。


 俺は前世で、親父の暴力のせいで蒸発してしまった母さんを思い出した。


 あんなふうに親父が原因で、母さんを失うなんて、二度とごめんだ。


 ルーナ母さんは、俺を心の底から愛してくれている。そんな母さんが殺されるなんて、絶対に阻止しなければならない。


 そのためには、赤ん坊の頃から魔法を使いまくって、魔法を極めなければ……


 強くなって、俺の手で母さんとディアナを守るんだ。

 俺はそう誓ったのだった。


※※※


 その日から、俺は起きている間は、ずっと【闇刃】(ダークエッジ)を使い続けることにした。


 隣で寝ている妹ディアナにも魔力暴走が起きるかと心配になったが、その兆候は無かった。


 母さんによると、ディアナの魔力量はおそらく常人並みということだ。


 へぇ〜、ちょっと意外だな。


 だけど、あの苦痛を経験せずに済むとしたら、うらやましいことだ。


 それにしても、俺たちは仮にもセレスティア帝国の皇子と皇女だと思うのだが……母さん以外の人が世話に訪れることが無いのは、どういうことだ?


 数日間、母さんの言動を観察してわかったのは、ここは母さんが逃げ出さないように閉じ込めておく牢獄塔であるということだ。


 母さんは首輪のようなモノを付けられていたが、これは魔法の使用を封じる拘束具であるらしい。

 帝国に敵対したダークエルフの王女ということで、まさに罪人扱いだな。

 

 その邪悪な魔族の血を引いている俺たち兄妹は、召し使いたちに恐れられ忌避されているみたいだった。

 

 ゲームでは皇帝アルヴァイスは、ダークエルフを支配するために、その王女であるルーナ母さんを妃にして、無理矢理、子供を産ませたんだったよな……


 母さんはときどき、長時間姿を見せなくなることがあるが、どうも皇帝の妃の1人として、行事などに参加しているみたいだった。


 皇帝はダークエルフを征服した証として、王女である母さんを侍らして、自慢しているらしい。


 母さんはそんな皇帝に唯唯諾諾と従って、心象を良くすることで、俺たち兄妹を守ろうとしてくれていた。

 

 家族を皇帝に全滅させられた母さんは、俺たちを憎い仇の子供として見ても不思議ではなかったが、そんな素振りは一切なかった。

 

 母さんは俺たちに、掛け値なしの温かい愛情を注いでくれた。

 今だって、俺に母乳を飲ませてくれている。


「さあ、ネンネしましょうね」

「うん……」

 

 満腹になると、すぐに眠くなる。母さんが子守唄を歌いながら、寝かしつけてくれた。


 鈴を振るような母さんの美声は、まさに天上の音楽だ。いくら聞いても飽きることはなく、俺は至福と共に、眠りにつく。


 だけど、起きたらすぐに【闇刃】(ダークエッジ)だ。


 すべては母さんと、妹ディアナを守るために。


 寝ることと排泄することと、母乳を飲むこと以外の時間は、すべて【闇刃】(ダークエッジ)に費やした。


 この【クリスナイツ】の世界では、同じ系統の魔法を使えば使うほど、【熟練度】が上昇して同系統の魔法の威力が増していくのだ。


 適性がある系統魔法ではないと、【熟練度】の獲得効率が悪くなるのだが、おそらく俺は闇属性系統に適性があると思う。

 なぜなら、俺の【闇刃】(ダークエッジ)は、通常とは異なっていたからだ。

 

「えっ、そんなに大きな【闇刃】(ダークエッジ)が作れるようになったの!?」

「あぃい!」


 俺のおしめを替えようとやって来たルーナ母さんが、目を見開いた。

 俺は誇らしげに大剣ほどの大きさの【闇刃】(ダークエッジ)を掲げて見せた。


 美しくて優しい母さんに褒められるのは、気分が良かった。


「本来は、短剣くらいの大きさの刃しか作れない魔法なのに……!」

「うにゅ……まあま、でぃあな、まもぅう(うん。俺は、これで母さんとディアを守るんだ)」

「きゃあああッ、ルーク! あなたは、なんてかわいいのかしら!」


 母さんは、愛おしくてたまらないといった様子で俺を抱き締める。


「私とディアナを守ってくれるということなのね!?」

「あい」


 まだ言葉がうまく喋れなくてもどかしいが、俺の意思はちゃんと伝わったようだ。


「あなたはきっと稀代の魔法使いになれるわ! その力でディアナを守ってあげてね。あなたたちは、この世でふたりきりの兄妹なのだから……!」

「うにゅ!」


 俺はルーナ母さんと約束した。

 

 妹のディアナに、前世の俺と同じような悲しみを味合わせたりしない。破滅の未来から、救ってみせる。


 天国で再会するんじゃなくて、家族みんなでこの世界で幸せになる。

 それこそが、俺のただ一つの願いなのだから。

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